宝塚歌劇団月組の大劇場公演「グレート・ギャッツビー」は宝塚では三回目の再演という事ですが、Amazonプライムで2013年レオナルド・ディカプリオ主演の「華麗なるギャッツビー」であらすじを予習しました。(2022/7/25時点ではAmazonプライムでは視聴できません)
乱暴にまとめてしまうと、社会的に成功を納め大金持ちになった男が初恋の相手を想い続け、彼女の自宅の対岸に大豪邸を建て、彼女と再会しようとする壮大なるストーカーなお話でした。
しかも最後は孤独に死んでいくという人間の儚さや哀しさが1920年代のゴージャスな豪邸、パーティと共に描かれています。
また上流階級、成り上がり、貧乏から抜け出せない自動車工の違いがこれでもかとあからさまに描かれていてちょっと後味の悪い作品なんですが、宝塚ではどういう風に描かれるのでしょうか?
映画とは全く別の物語
あらすじはほぼ同じなのに登場人物の描写、表現で全く違う作品になっている事に驚きです。
小池修一郎先生恐るべし。見る人それぞれに解釈はあると思いますが、映画版より救いがあるように思いました。
芝居の月組ってこういう事か!と納得。
主人公のジェイ・ギャッツビーとデイジー以外は、人物像は映画版と変わらずでした。
鳳月杏さん演じるデイジーの夫のトム・ブキャナンはアメリカ貴族のお金の力、高慢さ、クズ夫っぷりを堪能させていただきました。
お金も地位もある男の怖いものがない、堂々とした佇まいは、作品に太い柱をもたらしています。
映画版では、ストーリーテラーの役割のニック・キャラウェイ役の風間柚乃さんは今作ではストーリーテラーではなかったけど、ギャッツビーへの友情が温かく表現されています。
月城かなとさんだったらなんでも許せる!
映画版ギャッツビーでは、ちょっとデイジーへの想いが濃すぎて、ストーカー?な部分もあるのですが、月城ギャッツビーはとにかくイケメンでかっこいい!あの端正な佇まいで愛を語られたら、もうこれは純情よね!と解釈してしまう説得力があります。
スーツとコートで月城かなとさんが踊るシーンは、既視感が。
禁酒法下のアメリカ、酒場といえば望海風斗さんのスーツとコート姿が印象的ですが、月城かなとさんのスーツとコートも決まり過ぎています。
組が違えども、スーツとコートは引き継がれているのかと思ったら、月城かなとさんは雪組におられて、2015年5 – 6月、『アル・カポネ-スカーフェイスに秘められた真実-』(ドラマシティ・赤坂ACTシアター) – エリオット・ネス役として出演されていたのですね。
納得のスーツとコートのダンスです。まだまだ知らない事が多すぎます。
海乃美月さんのデイジーには共感しかない
映画版ギャッツビーのデイジーは、夫の浮気に気づきながらどうする事もできず、ギャッツビーとの再開によって現実逃避をしているようにも思えて、ヒロインとしては少し共感しづらい部分があります。
一方、海乃美月さんのデイジーは自由で伸び伸びとした少女時代から、ジェイ・ギャッツビーとの恋、別れ、結婚、出産を経るうちに経験する諦めや今の置かれた立場で生き抜く強かさが表現されています。
専科の輝月ゆうまさんが麗麗しい
ジェイ・ギャッツビーの親分的な存在のマイヤー・ウルフシェイム役で出演されていますが。裏社会のボスで、毒毒しい悪役なんですが、ギラギラしていて、麗麗しいです。
本当にお一人お一人の演技力が素晴らしく、なおかつ一つの物語としてまとまって流れていき、なるほど「芝居の月組」を実感した観劇でした。
ポスターの白い薔薇は物語でも重要な意味が…
制作発表会の映像で月城かなとさんと海乃美月さんのお二人が「ポスターのバックにある白い薔薇は全て本物の白い薔薇が使われていてとてもいい香りだった」とおっしゃっていて、力の入った作品なのねという記憶でした。
作品中とても印象的な場面で使われていて、ちょっと謎解き気分です。
色々な所に仕掛けがあることにびっくりです。
観劇の3時間を楽しみ尽くすために、用意されている様々なコンテンツ
まだまだ観劇初心者ですが、CS専門チャンネル タカラヅカスカイステージ、月刊雑誌「歌劇」各公演のセリフまで書かれている「LeCINQル・サンク」と様々な媒体で作品を観劇前も後も楽しめる事に感動しています。
「グレート・ギャッツビー」の「LeCINQル・サンク」発売が待ち遠しいです。
観劇後、スマホをチェックすると、雪組 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ公演『心中・恋の大和路』の公演中止のお知らせが…皆様お若いので大事ではないと思いますが、大事になりませんように祈るばかりです。
月組 宝塚大劇場の「グレート・ギャッツビー」も約一週間遅れの開演とコロナの影響は避けられません。
可能ならば日を開けて2回分チケットを取るべきか?とか、万が一公演が流れてしまってもめげないメンタルで応援したいなと思いました。
ライター・さんなん