宙組公演「群盗」が千秋楽を迎えてはや二週間を過ぎました。
上級生が軒並み博多座に振り分けられた中、こんなに下級生ばかりで大丈夫?とメンバー発表直後は少し心配の声も聞かれたものの、いざ始まってみると下級生だらけとは思えないお芝居の完成度に圧倒されてしまいました。
迫真の演技に心を打たれ、帰宅後「この人誰だろう?」とプログラムとおとめを照らし合わせ、100期〜の若い生徒さんが並んでいることに衝撃を受けました。
芹香斗亜(キキちゃん)が格好よかったのはもちろん、瑠風輝(もえこ)の屈折した心情を秘めた悪役演技や、凛城きら(りんきら)の一見厳格に振る舞いながら息子を想う人間くさい父親役など、注目すべきジェンヌさん、キャラクターが多すぎて、どこにオペラグラスを向けていいやら迷ってしまいました。
もう公演は終わってしまいましたが、できることならあの熱気と疾走感に満ちた舞台をもう一度生で味わいたい!
そして下級生一人ひとりをしっかり確認し直したい!とじたばたしています。
「群盗」初日に時間を巻き戻してほしいぐらいです。
今回はその「群盗」でますます気になった宙組の新進男役、愛海ひかるさんについてご紹介します。
宙組男役 愛海ひかる
愛海ひかるは宙組所属の男役。
100期生で、同期には同じく宙組のトップ娘役、星風まどかがいます。
その他有名な100期生には、星組男役の極美慎、花組男役の聖乃あすかなどがいます。
改めて振り返ると100期は注目のスター候補揃いですね!
(→100期生一覧)
愛海ひかるの愛称は「あられ」。可愛らしいニックネームです。
妹さん(紀城ゆりや)は先日音楽学校を卒業し、近々105期生として初舞台を踏みます。
姉妹揃っての舞台が楽しみですね!
宙組公演「天は赤い河のほとり」のティト役
私が初めて愛海ひかるを認識したのは、宙組公演「天は赤い河のほとり」のティト役でした。
真風涼帆演じるヒッタイトの第3王子カイルの付き人で、カイルが策略にはまり死刑に処されそうになった時、自ら命を呈して彼をかばったシーンが印象的でした。
「天は赤い河のほとり」は全体を通して明るい作品だったのですが、愛海ひかる演じるティトが幼いながら主人のために死を選ぶことを決意したシーンでは、あまりの迫真の演技に引き込まれ思わず涙がこぼれてしまいました。
登場シーンでは星風まどか演じるヒロイン・ユーリとキャピキャピした可愛らしい会話を繰り広げ、コミカルなキャラクターを作り上げていただけに、その壮絶な最期は観ていて本当に辛いものがありました……。
愛海ひかるの本公演初セリフは「神々の土地」だったので、目立ったパートのあったティト役は大抜擢といえるでしょう。
宝塚ファンの友人もこの公演の後「天河のティトの子は気になる」と度々口にしていました。
芸名が愛ちゃん(愛月ひかる)にそっくり!と盛り上がったのもいい思い出。
(系統は違いますが、愛月ひかるも役に入り込んだ鬼気迫る演技が目を引きますね)
「異人たちのルネサンス」主人公レオナルドの少年時代
次ぐ「異人たちのルネサンス」でも主人公レオナルドの少年時代を熱演。
演技力がある、特に少年役が似合う人としてのイメージが強まりました。
幼馴染の少女、カテリーナに夢中で夢を語る純真で無邪気な少年レオナルド役の演技がしっかり決まっているからこそ、権力に支配され立場に縛られた大人の世界のままならなさが際立って感じられました。
芝居に広がりを与える愛らしい少年キャラで魅せた愛海ひかる。
しかし、はまり役を見るともっともっと別の顔も見たくなってしまうのが欲張りなファン心!
「群盗」のラツマン役
可愛い少年役もいいけれど、これだけ演技上手なんだから次はもっと「男」っぽい役を見てみたいなあ、と思っていたところに現れたのが「群盗」のラツマン役。
主人公カール(芹香斗亜)の大学の同級生で、群盗のメンバーの一人という役どころでした。
今までの健気で可愛らしい少年演技から一転、勢いある若いお兄さん役もしっかりはまっていました。
変わらず高い演技力でキャラクターをリアルに作り込んでいたのはもちろん、これまでと違う低い声でのセリフ回しも魅力的でした。
演技力だけでなく、歌やダンスの実力も十分。
安定した歌声にキレのある男役群舞、若めの学年ながらあれっ……?となる瞬間は全く無く、かっこいいなあ~と夢中になって見ることができます。
男役・愛海ひかるのこれからがますます楽しみになった公演でした。
それにしても、若手の活躍の場としての別箱公演は本当に貴重な機会ですね。
本公演では出番が限られている下級生にもたくさんの見せ場があり、こんな実力を秘めていたなんて……!と驚くことしきりでした。
愛海ひかるの今後予想
演技力、歌唱力、ダンス力ともに安定したものを感じさせる愛海ひかる。
身長は169cmと高身長揃いの宙組の中にいると少し小さく感じられますが、その存在感は長身ジェンヌ達の中にいても引けを取りません。
お顔立ちも可愛らしく、シャープ&クール系の多い宙組の中では他と被らない良い個性として活かせるかもしれません。
「群盗」を経て少年以外の役もばっちりはまるところを見届けた今、もっと色々な役を見てみたい!という思いがますます強まりました。
今までいい人役だったので、今度は悪役なんかもいいかもしれませんね
(もしかして、まだ名前のそっくりな愛月ひかるのイメージにちょっと引きずられている……?)
現在研5、まだ主演をしたことはありませんが、新人公演卒業までにはまだ時間があります。
彼女にさらなる活躍の機会が与えられることを期待しています。
ライター:ミナミ