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紅ゆずるさんのラストレビュー『エクレール・ブリアン』に込められた永遠の煌めき

宝塚歌劇を楽しもう

2019年10月13日、星組トップスターの紅ゆずるさん、トップ娘役の綺咲愛里さんが退団されました。

寂しい限りではありますが、サヨナラ公演は有終の美を飾るにふさわしい、とても素敵な2本立てでした!

紅さんの持ち味といえば、抜群のコメディセンス。

しかし、紅さんが入団前から宝塚の大ファンだったというのもまた有名な話。

正統派宝塚歌劇への造詣とリスペクトの深さも、彼女の大きな魅力のひとつ。

そしてショー『エクレール・ブリアン』には、そんな魅力が目一杯詰め込まれていまいした。

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プロローグ Éclair Brilliant~華麗なる煌めき~

幕開き、一筋の閃光とともに、宇宙の彼方からスターが舞い降りるという設定がまずファンタジック! 

トップお2人の銀色のお衣装もきらびやかで胸が踊ります。

舞台全体の明るい輝きと、愛を歌う美しい歌詞、そして様々な組子さんが紅さんに踊りかける演出には、始まったばかりだというのに目頭が……。

また、娘役さんの層の厚さも印象的です。

綺咲さんは集大成らしく存在感が絶大。

「エクレール・ブリアン ジュテーム」をひたすら繰り返すだけという驚きの銀橋ソロも、言葉のひとつひとつから愛が伝わってくるようで厚みがありました。

次期トップ娘役の舞空瞳さんは、舞台のどこにいても見つかるキラキラ具合。

組替えしたてとは思えない星娘っぷりです。

音波みのりさん、有沙瞳さんといった実力派上級生は歌っても踊っても華やか。

また、コーラスには紫りらさん、小桜ほのかさん、都優奈さんの3人がピックアップされ、学年を問わない歌ウマ充実度を印象づけていました。

そして群舞の中、「あの美しい方は誰!?」とオペラを向ければ柚美組長。

上級生から下級生に至るまで、一人ひとりが輝いています!

ひとり星の上で~一番星の煌めき~

そしてプロローグが終わると雰囲気は一転、紅さんが銀橋に腰掛けて歌い始めます。

曲調は明るく穏やか、紅さんの優しさや夢見る気持ちが表れているようでした……。

動きもなく、肩の力を抜いて気ままに歌っているように見えながら、ひとりで劇場全体を埋める存在感はまさに場面の名前の通り「一番星の煌めき」です。

パリ~恋する風の煌めき~

礼さん扮する風の精が、舞空さん扮する少女に恋をするという、なんとも美しい場面です。

お2人のコンビネーションの素晴らしさが想像を絶します。

風が吹き抜けるような自然な動きは、むしろ「ダンスをしている」ということを感じさせず、心の動きそのもののよう。

出会ったときめき、恋の喜び、そして別れの切なさが詩のように表現されていました。

とんでもなく難しいことをしているはずなのに、その技術ではなく場面のドラマをみせられることに感動です。

新生星組の魅力は計り知れないぞというわくわくを感じました!

ラテン~輝く太陽の煌めき~

クンバンチェロを始めとしたアツい名曲を、アツい星組メンバーが、アツくアツく歌い踊ります。

もう情熱の洪水です。

しかし全体的に騒々しさはなく、代わりに大人の魅力が詰まっていました。

ナンバーが次々入れ替わり様々な方にスポットがあたるのもファンとしては嬉しいところです。

紅さんが男役をオラオラ引き連れたかと思えば、綺咲さんは男も女も(全員女ですが)夢中にさせながら現れます。

有沙瞳さんが天華えまさん&極美慎さんを伴って歌う姿は、まさに余裕たっぷりの大人の女。

そして、天寿光希さんの歌で、紅さん、綺咲さん、礼さんが踊るタンゴは、4人の響き合いに魅了されました。

長年星組の仲間として築き上げた関係が、パフォーマンスだけでは表現できないドラマを与えていたのだと思います。

そしてそして瀬央ゆりあさんの銀橋ナンバー。

スカイステージの番組でご本人が「瀬央史上最高の色気」と語っていた意味がわかりました……。

歌声も厚みを増して貫禄たっぷり。触ったら火傷しそうなラテンの男でした!

スペイン~燃える情熱の煌めき~

ボレロの曲にのせた荘厳な群舞です。

繰り返しながら高まる音楽と一糸乱れぬ動きに、舞台上のみならず劇場全体の集中が研ぎ澄まされていくのを感じました。圧巻です。

紅さんにスポットライトを当てないという始め方も珍しく、ひとつのものをつくり上げるという一体感は今まで観たことのないようなものでした。

迫力とは必ずしも激しさから生まれるものではないのだと知りました。

「観た」というよりも「体験した」と表現したい、素晴らしい場面です。

ニューヨーク~星々の煌めき~

まず専科の華形ひかるさんを中心に、この作品で退団する如月蓮さん、麻央侑希さんを始めとした上級生が、フランク・シナトラメドレーを歌い上げます。

人生の楽しいことも辛いことも沢山知っているであろう大人を感じさせる、ゴージャスな場面でした。

そして曲はテンポアップし、そのままロケットが始まります。 

退団者や上級生が、下級生にバトンを渡すように場面が入れ替わる演出が見事! 

別れがあれば出会いがある宝塚の魅力が表現されているように感じました。

フィナーレ~至高の煌めき~

三味線の音が響くフィナーレ。小気味のいい音色が、全体を引き締めながらもどこか明るい雰囲気を作り出していて、まさに紅さんにぴったりでした!

娘役群舞は、桜のモチーフだというお衣装の白~赤のグラデーションが印象的です。

花咲く娘役さんたちと、それを慈しむような紅さんに心が温まりました。

そして、燕尾服姿の男役さんが大階段から現れます。

飾りのない、最もシンプルな黒燕尾は、宝塚の男役を愛する紅さんにとってまさしく最高の集大成。

そしてバチバチに格好よく踊りながら、退団者との小芝居的など遊び心を取り入れた振りもあり、演出・振付の先生方の愛を感じます……。

個人的な注目ポイントは、紅さんとピックアップで踊った後、ちょっと驚くくらいの距離を1ジャンプで移動する礼さんです(笑)

綺咲さんが登場すると、曲調はぐっとムーディーになります。

品定めをするように様々な男役さんと踊る、小悪魔的な表情が大変によく似合います。

しかし紅さんが現れると小悪魔タイム終了! 

とびきりの笑顔でデュエットダンスが始まります。

今まで過ごしてきた時間を思い出すような、でもしんみりするではなく、明るくて華やかな時間でした。

最期に抱きしめ合うお2人の笑顔に、本当に幸せを分けてもらいました。

パンフレットの、パレード説明書きを見て泣きましたが、

「紳士S(紅さん)と淑女S(綺咲さん)は旅を終え、宇宙に還り、永遠の煌めきとなる」
のだそうです。

酒井先生……。

ありがとうございます……。

華麗なる大スターと星組の煌めき

『エクレール・ブリアン』は、「華麗なる煌めき」という意味だそうです。

宇宙の彼方からやってきたスターが、地球で華麗な煌めきをふりまき、また宇宙へ還っていく。

でもきっと他の星でも煌めいているから、地球から見たら永遠の煌めきになる。

スターの退団にこれほどふさわしい設定があるでしょうか。

紅さんと綺咲さんの煌めきは、星組にたくさん降り注ぎました。

これからの星組は、その光を受けて、またさらに新しい煌めきを増すことでしょう!

そしてたまに空を見上げて、この日の「エクレール・ブリアン」を思い出すのだと思います。