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宝塚歌劇団宙組公演「FLYING SAPA」観劇

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団宙組の梅田芸術劇場公演「FLYING SAPA」。

この作品はオリジナルのしかもSF作品という宝塚歌劇団でも珍しいジャンルということで観劇前から期待大でした。

特に、「星逢一夜」や「金色の砂漠」のように緻密につくられた美しい世界を作り上げる上田久美子先生という信頼しかない先生の作品ということもあり私の中のボルテージはMAXでした。

しかし、上田先生の作品を理解するだけの知識や読解力が自分にあるのか、という不安もあり…。

また、先生の「観劇前のネタバレ厳禁」というお達しもあり、極力SNSも見ないようにしていたので一切の前情報もなしの状態だったというは、不安要素の1つでもありました。

結果から申し上げますと、私は大丈夫でした。

観劇直前にパンフレットを読み込んでいたからなことと、わかった「つもり」になっているだけの可能性は大ですが…。

先生のネタバレ厳禁というお気持ちに添う形の感想になりますので、ネタバレはしないように努めようとは思いますが、全く情報なしで楽しみたい!!という方は一応、ここまででそっと閉じてくださいね。

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「正義」という概念の違いで起きた悲劇

抽象的な表現になってしまいますが、私は幼い時分に観た小池修一郎先生が脚本・演出を手掛けられた月組公演「LUNE -月の伝言-」を思い出しました。

遺跡で見つけられた不思議なアクセサリーによって真琴つばささん演じるロック歌手ALEXの中に音を紡ぐ神である月詠という別人格が入り込み、そんな2人の存在に翻弄される檀れいさん演じる考古学者のアイリーンとのラブストーリーと急激なインターネット技術発達への警鐘というメッセージが込められた作品として私は受け取っていました。

今回のサパは更にその中でもiPhoneという小さな媒体に全ての個人情報を込められていることによる不安や1つの企業がその全てを掌握していることに対する猜疑心から成り立ったものかと思います。

私はiPhoneのことを便利なものが出来たんだろうかと感動しすぐに受け入れていましたが、小池先生や上田先生にとってはLUNAやサパのような世界観がイメージされたというのが凡人と天才の違いなのかな…と、改めて考えさせられました。

ストーリーに関することにはなりますが、汝鳥伶さん演じる総統01(ミレンコ・ブコビッチ)と星月梨旺さん演じるロパートキンの間に起こってしまった諍いは、「正義」という概念の違いによって生まれてしまった悲劇のように感じ取れました。

妻や娘達の命を奪われたミレンコ・ブコビッチは貧しい生活を送りそこでしか見られない景色を見ており、対するロパートキンは裕福とまでは言わないまでも不自由ない暮らしを送り妻と息子と共に幸せな生活を送っていた。

そもそもの生活が違えば当然抱く概念も変わってくるものです。ロパートキンにとっての幸せはこれまで通りの生活をすることにあり、ミレンコ・ブコビッチにとっての幸せは平等というところにあった。

本当にそれだけのことだったのに、そこに人々の命や国や世界が関係してきたが故に起こってしまった悲劇…。

どうすることも出来ないことだけに、本来は友人同士であった2人が決裂してしまい結果ポルンカという張りぼての「幸せ」が作られてしまった。

そのように私は受け取りました。

観る人によって受け取るものが変わってくるかとは思いますが、千秋楽後にでも色々な方の解釈を読んでみたいものです。

幕の降り方やダンスにも世界観を感じることができ、最後の最後まで上田久美子先生ワールドを満喫できました。

この世界観を4ヶ月間も背負い続けてくれていた出演者の皆さんにも大きな尊敬の念と感謝の気持ちをお伝えしたいです。

今のこの宙組だからこそ、そしてこの環境だからかこそ出来た作品なのかもしれないと思わせてくれる程の気迫を感じました。

新しい「ミュージカル」という形をこの作品から感じることができ、とても楽しかったです。

千秋楽の配信もありますので、是非見てみてください!