宝塚歌劇団雪組のトップスター望海風斗さんの東京宝塚大劇場で引退公演『fff』が始まります。
望海風斗さんといえば、熱心なファンの方でなくとも、話題作として雪組時代の主演作『ファントム』『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』、2番手時代の『星逢一夜』『ドン・ジュアン』、花組時代の『エリザベート』『オーシャンズ11』などをご覧になっている方も多いことでしょう。
そこで今日は、もう一度見ておきたい懐かしのおすすめの4作品をピックアップしてご紹介します。
望海風斗さん2番手時代からのライトファンの私見ですが、お付き合いください。
(★印は現在タカラヅカオンデマンドで配信中)
ダンディズムを磨いた花組時代
『アデュー・マルセイユ』(2007年花組)★
作・演出は『ONCE~』と同じ小池修一郎先生。花組トップ春野寿美礼さんの退団公演作です。
望海さんは春野さん演じるジェラールの少年時代を演じています。
前髪がある少年が、とにかくかわいいです。
この少年が、13年後にワンスのヌードルスになるとは…!
春野さんと望海さん、ご自身の円熟期にスーツでムショ帰りを演じておられるわけですが、あふれる魅力のベクトルが異なるのがおもしろいところです。
同じ小池先生の作品でも、2番手の真飛聖さんと彩風咲奈さんの役柄設定の違い、男役が女性を演じた愛音羽麗さんと朝美絢さんそれぞれの魅力(衣装は同じものが!)など、ワンスを観る楽しみがさらに深まりそうな1作です。
『Mr. Swing! 』(2013年花組)★
蘭寿とむさんトップ時代、望海さんと同期の明日海りおさんが花組に組替えされて初めての大劇場のショーです。
作・演出は稲葉太地先生。
3番手の望海さんは金髪を乱して終始踊りまくり、ええ声の掛け声も聞こえ、花男ってものを濃く堪能させて下さいます。
斜めキャップで野球の試合をしたり(!)、ソロで珍しく高音を響かせたりと大活躍。
蘭寿さんの両脇に、明日海さんと望海さんのシンメが随所に観られ、音高の同室コンビが立派になられて…と胸熱です。特に黒燕尾の男役ぶりには鳥肌が立ちます。ぜひ!
殻を破って大きく花開いた雪組時代
La Esmeralra(2015年雪組)★
今こそトップコンビ早霧せいなさん、咲妃みゆさんと2番手望海風斗さんの“トリデンテ”をもう一度。
ショースターでもある望海さんの存在感が際立つ1作で、作・演出はサイトー先生です。
オープニングから熱い美声の望海さん。
パリでは真面目にチャラ男を演じ、中詰め前半には銀橋センターで「彼女はエメラルド」熱唱と続きます。
「エスメラルダの太陽」では望海さんが咲妃さんと2人で「愛の追い風受けて どこまでも走れ」と歌い継ぐのですが、その力強さったら。すっかり“だいきほ”コンビに慣れた耳に新鮮です。
純白衣装で燃えたぎる早霧さんをセンターに、熱すぎる望海さんたち組子のみなさんが三角になって肩を揺らしているだけで、こちらも謎の熱いものが混み上げてきます。
さらに男役の変わり燕尾では望海さんが女役さんたちと堂々大階段を降りてきて、1曲歌い上げます。
早霧さんとの交差ジャンプ!からの、星逢を彷彿とさせる背中合わせ。なんていいコンビなんでしょう。
パレードでも魅せます。
主題歌の転調部分を望海さんが歌われる心地よさは、トップになられる前の楽しみでしたね。運動会のようなショー、ぜひこの機会に。
るろうに剣心(2016年雪組)
芝居と立ち回り、お歌など、いろんな要素が詰め込まれすぎている作品で、脚本・演出は小池修一郎先生です。
数々の個性的なキャラクターに負けず、抜群の存在感を示したオリジナルキャラ・ジェラール山下。
望海さんはなんであんなに闇とかトラウマ、アヘン関係のお役になじむのでしょう。
最初の見どころは、オープニングまもなくの加納惣三郎時代。
盆がゴーゴー回る上で刀グルグル舞い踊り、一旦奥にはけて羽織をひっそり片方はだけ、戻ってきて「悪鬼とーなりて髪を切る―」と歌いながら髷を落とし、ロン毛がバサー!のまま銀橋にしばらく立ち尽くすところです。
ナンバーが多いのもこの作品の魅力ですね。
2幕のクライマックス、奥の間で剣心をめぐって繰り広げられるジェラ山VS薫殿(咲妃みゆさん)の歌合戦の迫力は圧巻。
望海さんの場合、ガナる歌声まで耳に心地いいのです。しかもジェラ山さんのナンバーは、ねじくれた性格に合わせてなのか、ことごとく難解な音程です。軽々と歌っておられますが。
さらなる魅力は、立ち回り。
早霧さん剣心と互角に剣を交えるジェラ山さんも、高すぎる身体能力を見せつけてくれます。
フィナーレでは浄化された望海さんがせり上がってきて歌い、その笑顔ですべてが回収されたような満足感が訪れます。ダメ押しに、オラオラ男役踊りでの雄たけびが。
おなかいっぱいになりますので、気持ちに余裕があるときにどうぞ。