宝塚歌劇の若手男役ピラミッドを見渡したとき、ある特定の学年における「育成の歪み」に気づくことはないでしょうか。
ここ数年の新人公演の配役を徹底的に検証していくと、「コロナ禍がもたらした育成の空白」を劇団が強硬手段で埋めようとした結果、ある特定の世代が構造的な煽りを受けているという、切実な舞台裏が見えてきます。
今回は、新人公演を完全卒業した105期生集中抜擢がもたらした功罪と、その割を食う形となった107期生が残された「あと2〜3回の打席」で挑む、逆転のシナリオについて深く考察していきます。
1. 105期集中の功罪
【功(功績)】:黄金世代としての覚醒
劇団は限られた打席を105期生の超路線スター(稀惺かずと、大希颯、七城雅、大路りせら)へ最優先で割り振りました。これによって、105期生は新公主演複数回やバウ主演といった強力な実績カードを確実に積み上げることができました。新人公演を完全に卒業した現在、彼女たちが各組の本公演で即戦力の中堅男役として大活躍しているのは、この集中リカバリーの最大の「功」と言えます。
【罪(代償)】:下の学年の打席を完全消滅
しかし、この救済措置により、上の学年の打席を意地でも確保するために劇場枠や配役を圧縮した結果、その直下にいた下級生たちがチャンスを失ってしまったのです。
2. 構造的不遇――「2番手ステップ」を奪われた107期生のリアル
最大の犠牲者、それこそが107期生の男役スター層です。
宝塚における男役の育成には、絶対的な「王道のセオリー」が存在します。いきなり新人公演の主演(トップスターの役)をするのではなく、まずは研2〜研4の若いうちに「新公内での2番手・3番手格の大きな役(本役が組の2番手スターや主要幹部の役)」を経験するステップ(=2番手ステップ)です。ここで脇を締め、スターとしての押し出しや舞台の骨組みを学び、満を持して主演へとステップアップします。
しかし、107期生がまさにその「2番手ステップ」を踏むべき黄金期、新公の主要な2番手・3番手役のポジションは、「上の学年のリカバリー枠」として完全に占有されていました。
実力や華やかさ、本人の努力とは一切関係のない「構造的な不遇」により、107期生は前提条件となる打席すら回ってこないまま学年が上がってしまうという、過酷な状況に直面したのです。
3. 残り「2〜3回」のタイムリミット。ラストで主演を確保できるか?
しかし、107期生の物語はここで終わりではありません。
2026年現在、研6となった107期生には、新人公演の資格(研7まで)が「あと2回(雪組のみ3回)」残されています。ここからの1年半こそが、彼女たちに残された文字通りのラストチャンス、逆転のタイムリミットです。
ここで重要になってくるのが、「今、このタイミングで意地でも新公2番手役をもぎ取り、新公のラスト1〜2回で主演カードを滑り込みで確保できるスターが現れるかどうか」という点です。
■ すでに切符を持っているのがこの二人のみ
そんな暗雲立ち込める107期男役の中で、劇団の非情な世代スキップ(108・109期への早期バトンタッチ)の波に抗い、唯一「王道のセオリー」を死守しているスターがいます。
宙組の107期生・奈央麗斗さんと星組の馳琉輝さんです。
宙組の107期生・奈央麗斗さん
- 『Razzle Dazzle』新人公演:トニー・デイヴィス役(本役:桜木みなと)
- 『黒蜥蜴』新人公演:雨宮潤一役(本役:水美舞斗)
星組の107期生馳琉輝さん
- 『恋する天動説』新人公演:レスリー役(本役:瑠風輝)
■ 各組107期生の「滑り込み」はあるか?
奈央さんのようにすでに2番手を経験しているケースだけでなく、残りの2〜3回の中で2番手に抜擢され、その勢いのままラスト1回で主演を掠め取る107期生が他組から出てくるかどうかも、期待したいところです。
コロナ禍の煽りを受け、前半戦で2番手ステップを奪われながらも、残された後半戦で戦う107期生たち。
現在地がどこであろうと、ラストチャンスで2番手を奪い取り、主演カードを確保して新公を卒業できるスターが現れるか否か――。

