前夜祭、極美慎のルキーニに寄せて

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宝塚歌劇を楽しもう

昨夜、宝塚大劇場の空間に特別な熱気が満ちていました。

1996年の日本初演から30年、宝塚歌劇としては8年ぶりとなる大作『エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-』の前夜祭。劇場に足を運ばれた方はもちろん、タカラヅカ・スカイ・ステージの生中継を通じて、その瞬間を息を詰めて見守られたファンも多かったのではないでしょうか。

極美さん。発表時から多くの関心を集めていたルキーニです。

抜群のスタイルを生かした着こなしはどこまでもスタイリッシュでありながら、ただスマートなだけではない、ルキーニ特有の煤けた退廃美と不穏な影をしっかりと纏っていました。披露された代表曲「キッチュ」の歌唱では、客席を挑発するように見つめる視線や、口元に浮かぶ皮肉めいた笑みの端々に、すでに役の魂が宿っていることが伝わってまいりました。

軽妙に観客を巻き込みながら、物語の闇へ引きずり込む力強さを感じます。

ルキーニという役は、物語の狂言回しとして観客を黄泉の世界と現世の狭間へ案内する、極めて難易度の高い大役です。歴代の錚々たるスターたちがこの役を通じて殻を破り、大きく飛躍していった歴史を振り返っても、今の充実期を迎えた極美さんがこの役に挑むことの巡り合わせの妙を感じずにはいられません。

また、本作において皇帝フランツ・ヨーゼフを務めるのは、同期の聖乃あすかさん。

花組の伝統を受け継ぐノーブルで気品に満ちた聖乃さんのフランツに対し、体制を嘲笑い混沌をもたらす極美さんのルキーニ。100期生として互いに切磋琢磨してきた二人が、光と影のように鮮烈な対比を描き出す構図は、新生花組の厚みと魅力をより一層引き立ててくれるに違いありません。

前夜祭のトークで見せてくれた素直で朗らかな笑顔と、パフォーマンス時に見せた鋭利な目力。その鮮やかなギャップに触れるにつけ、本公演で彼女がどのような熱量で銀橋を駆け抜け、観客を『エリザベート』の世界へと誘ってくれるのか、期待は高まるばかりです。

大作の狂言回しを背負う重圧は計り知れないものがあるとお察しします。

昨夜の堂々たる姿からは、挑戦を楽しむような清々しい覚悟が感じられました。

初日の幕が開くその日まで、充実したお稽古の日々が重ねられますように。客席の片隅から、新たなルキーニの誕生を静かに、そして温かく見守りたいと思います。