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星組ロミジュリ AとB日程の比較感想

宝塚歌劇についての雑記

宝塚歌劇団星組公演のロミオとジュリエット、前回より8年ぶりの再演となりました。

役替わりが行われ、A日程とB日程によって主要な役がWキャストで演じられました。

どちらの日程も素晴らしい公演となりましたが宝塚大劇場で今回前半の日程で、東京宝塚劇場では後半に上演されたA日程についてB日程との比較も交えながら書きたいと思います。

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ティボルト

ティボルトが愛月ひかるさん、というのが日本初演の2010年の星組公演での番手と同じになっており、正統派の配役という印象を受けました。

愛月さんが演じたティボルトはインタビューで「初演の凰稀かなめさんをイメージした」と言っていた通り、初演時の役作りに近く感じました。

B日程の瀬央ゆりあさんの狂信的にジュリエットを愛し、家を守るためにマーキューシオ達と反目する一種大真面目な感じとは違い、もっと大人な印象。

気怠そうなところが厭世観の強さとセクシーさを出していました。

ロミオに対峙しても体の大きさも含め、立ちはだかる重みが。

B日程の死役でも好演しましたがティボルトも観客の心に強く残りました。

上手く、存在感のある2番手の存在は組の構成に必要不可欠だと思わされます。

ベンヴォーリオ

瀬央ゆりあさんのベンヴォーリオ。

歴代、モンタギュー家の3人組の中で飛びぬけて大人という感覚だったのですが、B日程の瀬央さんはロミオと親友という面が色濃かったように思います。

そして硬派です。

綺城ひか理さんのベンヴォーリオが繊細でロミオのことになると兄のようだったのとは違う解釈。

物静かな分、ロミオを思い説得する場面やジュリエットの死を伝える場面では彼を思っての切なさや悲しみがよく表現されていました。

マキューシオ

極美慎さんのマーキューシオはB日程の天華えまさんが喧嘩好きで少年らしさを出したのとは変わって、少し軽い感じの少年。

でも繊細さもあってあれは内面を隠すチャラさでは、とも思えます。

怖いから虚勢を張り尖っているような人物と受け取ることが出来ます。

天華えまさんの死は、どこか儚いような印象が。

そしてロミオの心の投影、分身というようなものとも受け取れました。

B日程の愛月さんが不気味であって積極的に導き誘う死であるならば、天華さんの死はロミオに寄り添うようなイメージ。

ロミオの心と共にある死を演じたと思います。

パリス伯爵

綺城ひか理さんが演じたパリス伯爵は舞台上で皆が彼を評する時の「気取り屋で間抜け」というのが、そっくりそのまま表現されていました。

B日程の極美慎さんが演じた空気読めないキラキラ感の溢れるパリスとは変わり、ちょっと嫌味を感じる役作り。

空気が読めず、自信満々で「この人物、嫌だな」というのをライバルのティボルトでなくとも思わされるようなキャラクターに仕上げていました。

A日程、B日程それぞれ良いところがあり、どちらも甲乙つけがたい仕上がりとなっていました。

役替わりを見ると、配役が違うと物語の解釈が変わってくることが驚きでした。

また、それぞれの関係性も違ったものに思えました。

ロミオとベンヴォーリオ、マーキューシオの関係性がA日程、B日程それぞれのキャストで変わったのが興味深かったです。

死と愛のバランス

死と愛の関係やバランスもそうです。

A日程では98期の天華さんの死、101期の碧海さりおさんの愛でしたが、死と愛の支配するバランスが半々で拮抗している世界というように思いました。

B日程は二番手で93期の愛月さんの死と、100期の希沙薫さんの愛なので学年の差が大きいこともあり、死の支配が大きいように感じました。

Wキャストは演じる側にとっては大変だと思いますが観客からはWで楽しめるメリットがあります。

そして、コロナ禍で新人公演が行えない中で重要な役を若手も担うということが大変有意義なことだと改めて思いました。

立場が人を作ると言いますが、大きな役で注目され、役替わりで別の視点から作品を作るというのは演者にとって大きなことだと思います。

大変な状況下で工夫して楽しませてくれたこの作品、充実してきた星組に大きな拍手を送ります。