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宝塚歌劇団のレジェンド轟悠さんの活躍

初心者のための宝塚

For the peopleリンカーン自由を求めた男―』―轟悠さんとリンカーン

宝塚歌劇団のレジェンド、専科の轟悠さん。

「トム」という愛称で親しまれている轟悠さんは、168㎝という高身長と華やかで美しい顔立ち、そして抜群の演技力を活かして、歴史上の偉人から物語のヒロインまで数多くの役を演じられてきました。

例えば、1900年代から現代において『風と共に去りぬ』のレット・バトラー役は何度も務められましたし、2000年代以降の作品における『オイディプス』でのオイディプス役や、『凱旋門―エリッヒ・マリア・レマルクの小説による―』のラヴィック役は記憶に新しいです。

そして、2020年12月4日には、『シラノ・ド・ベルジュラック』の幕が梅田芸術劇場であがりました。

悠さんがこの舞台で演じられている役は、タイトル名にもなっているシラノ・ド・ベルジュラックです。

『シラノ・ド・ベルジュラック』の原作において世間知らずかつ、自分勝手な部分のある美男のクリスチャンに対して、シラノは鼻が高く、撫男ではあるが、愛情に満ち溢れた、詩心のある男となっています。

悠さん演じるシラノには、その知的さが醸し出されていただけではなく、美しく、かつ麗しい姿で、新たなシラノが誕生したといえます。

この記事では、2016年2月~3月に上演された『For the people —リンカーン 自由を求めた男―』を取り上げ、轟悠さんの活躍も並行してみていきます。

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轟悠さんの活躍

悠さんが演じられるシラノは記憶に新しいですが、彼女が演じるリンカーンもまた素晴らしいものでした。

あらすじ―『For the people —リンカーン自由を求めた男—』

『For the people —リンカーン 自由を求めた男―』は、アメリカの16代大統領エイブラハム・リンカーンが取り上げられた作品です。

19世紀半ばのアメリカにおいてリンカーンは南北戦争を終結させ、奴隷制度を廃止させました。現代においてもその功績は讃えられ、多くのアメリカ人にとってヒーローとなっています。

奴隷たちが鞭で打たれている場面から『For the people』ははじまります。

鞭打たれている奴隷のなかには、奴隷廃止運動の活動家として著名なフレデッリック・ダグラス(柚香光さん)もいます。

彼の手錠が、鞭打たれた時に外れ、彼はそれをチャンスに恋人アンナ(桜咲彩花さん)を連れて逃げ出します。

ダグラスとアンナが下手客席通路へ去ると同時に、リンカーンこと、轟悠さんが登場します。

国や国民のために、奴隷制問題や国の分裂問題に頭を抱えるリンカーンの姿が『For the people』には描かれています。

国を一つにまとめるため、奴隷制を廃止するため、理想とする国家を実現させるために、リンカーンは悩み、苦しみ、そして働きます。

大勢の命が犠牲になることを懸念し、戦争をはじめることに躊躇するものの、国のため、しいては国民のために戦争を開始することを決断します。

『For the People』は悲しみをのこして幕をおろします。

戦争が収束して、リンカーンにも平穏な日々が戻ったかと思うと、この大統領は凶弾に打たれ、命を落としてしまうのです。

轟悠さんとリンカーン大統領

『For the People』における轟悠さんこと、リンカーンの登場には神々しさを感じられました。悠さんの姿を観た観客の多くは、彼女に満ち溢れる品位と貫禄に圧巻されて思わず跪きそうになったのではないでしょうか。

『For the People』には自分の利益のためではなく、国のため、そして国民のために悩み苦しみ、そして行動を起こすリンカーンの姿が描かれていました。

トップに立つ者が背負わなければなければならないもの―「責任感」と「覚悟」

この二つを持つ者こそが、多くの人たちをまとめ、リードすることができることを教えられます。

轟悠さんの姿はリンカーンに重なっているのです。

悠さんの人望の厚さは、舞台に立ちながらも、劇団理事を長らく兼任されていたことや、昨年の夏に特別顧問に就任されたことにも窺えますよね。

彼女の仲間思いの性格は、プロデューサーに月組から雪組への異動を命じられ、深くショックを受けたことにも表れています。このとき、悠さんは楽屋に戻ると、仲間と離れることが苦しくて泣いてしまいました。

轟ジンクス

宝塚には「轟ジンクス」という言葉があります。悠さんのお相手をされた娘役さんは将来的にトップになるといわれています。

こうしたところにも、悠さんのスター性を垣間見ることができます。

コロナ禍のなかで『シラノ・ド・ベルジュラック』が開幕した際のインタビューでは、「希望は捨てず、現実を受け止めたい。いつ何がどう変化するか分からない。だからこそ、目の前にあるこの作品を、このメンバーで心してやって希望につなげていきたい」と熱く語っておられました。

これらの言葉にも人に夢を与える宝塚のトップとしての考え方が満ち溢れています。

2020年夏、轟悠さんは宝塚劇団理事に就任されました。

宝塚歌劇団の規則には「未婚」であることが定められています。

宝塚には定年がありますが、理事には定年がありません。

このことから、悠さんのこの決断について「(宝塚に残るために)生涯独身を選んだのではないか」と囁かれているのです。

リンカーン大統領がアメリカに尽力したように、悠さんの宝塚に対すしての熱い思いを感じ得ることのできる決断です。

まとめ

この記事では、2016年に上演された『For the people ―リンカーン 自由を求めた男―』を振り返ってきました。

悠さん演じるリンカーンはかっこよく、美しいだけではなく、その演技も見事なものでした。

しかし、悠さんがリンカーンをこのように演じ切ることができたのは、彼女のもつ演技力だけではなく、これまでの人生のなかでの決断や覚悟、そして自信も関係しているのではないかと考えられます。

今後の悠さんの活躍も楽しみです。『For the People』におけるリンカーンが国を導いたように、理事として、トップスターとして宝塚をリードしてくださるのではないでしょうか。