スポンサーリンク

モンテ・クリスト伯は実話だった?!

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団の星組が9月1日からスタートさせる全国ツアー。

演目に選ばれたのは『モンテ・クリスト伯/Gran Cantante‼』です。

『モンテ・クリスト伯』は2013年に宙組で公演され、ドラマチックな展開と生徒さんたちの迫真の演技で大好評を博しました。

『モンテ・クリスト伯』はフランスの小説家、アレクサンドル・デュマ・ペールの小説です。

デュマ原作の宝塚作品といえば、月組が2017年に公演した『All for One』も『三銃士』がもとになっています。

『モンテ・クリスト伯』は恐ろしい復讐劇ですが、それはなんと実話を元にしているとか!

全国ツアー初日の前に、一体どんなノンフィクションがあったのか、ご紹介していきたいと思います。

スポンサーリンク

ナポレオン時代に生きたデュマだからこその背景

まず、アレクサンドル・デュマ・ペールが生まれたのは1802年。

ナポレオンが皇帝になったのはその2年後の1804年です。

新たな皇帝の誕生にフランス国内が熱狂している幼少時代を過ごしました。

しかし、デュマが小説家として活躍を始める前にナポレオンはセントヘレナ島に幽閉され、そのまま生涯を終えます。

失意のうちに寂れた島で静かに亡くなった元皇帝の存在はデュマに創作意欲を与えたことでしょう。

『モンテ・クリスト伯』はまさにナポレオンから主人公のエドモン・ダンテスが密書を預かったことから物語が始まります。

ナポレオンは1814年に皇帝の座を追われ地中海にあるエルバ島でイギリス軍の監視下に置かれます。

しかし、もう一度皇帝の座を掴み取るためにエルバ島を脱出してパリに戻り、復位を成し遂げます。

デュマはこの史実を『モンテ・クリスト伯』に反映させました。

「自分が島を脱出してパリに戻るから軍を準備しておいてほしい」ということが書かれた手紙をナポレオンがエドモン・ダンテスに預けた、というわけです。

友人の罠に嵌められ投獄された実話

『モンテ・クリスト伯』では、ナポレオンからの手紙を預かったことを友人に利用されて罠に陥れられるエドモン・ダンテス。

自分が一体何の罪を犯したのかも全く分からずに終身刑となり、投獄されてしまいます。

「ここから生きて出られることはない」と告げられて絶望の日々を送るエドモン。

しかし監獄で出会った神父に様々な知識を授けられ、自分を罠に嵌めた連中に報復することを生きる目的として脱獄し、復讐劇がスタートします。

これがなんと、実話だということなんです!

『モンテ・クリスト伯』ではエドモン・ダンテスは航海士ですが、実話のほうはピエール・ピコ―という靴職人です。

ナポレオンから密書を預かったということではなく、ピエールのことを妬んでいる友人たちから「ピエールはイギリスのスパイだ」と嘘の告発をされてしまいます。

それでまんまと投獄されてしまったピエール。

そして『モンテ・クリスト伯』と同じように、監獄で一人の神父に出会います。

ファリア神父、という人物です。

もちろんファリア神父も実在の人物で、『モンテ・クリスト伯』と同じように監獄内で出会ったピエールにいろいろな知恵を授け、自分の財産の隠し場所をピエールに伝えて獄中で亡くなります。

数年後に釈放されたピエールは、自分を罠に嵌めた友人たちを計画通りに次々に殺害していきました。

実話とまったく違うエンディング

デュマはこの実話をもとにして『モンテ・クリスト伯』を書き上げましたが、あくまで「インスピレーション」にしただけで、エンディングは実話とまったく違います。

もっと言ってしまえば、デュマが書いた『モンテ・クリスト伯』と宝塚版の『モンテ・クリスト伯』のエンディングも全く違います。

デュマの『モンテ・クリスト伯』では、復讐をすべて済ませたエドモン・ダンテスが親友を助けて「希望を持て」と言って去ってゆく、というエンディング。

実話のほうは、復讐を成し遂げたピエールではありますが、ファリア神父から受け継いだ財産を狙われて他の友人から殺されてしまいます。

宝塚版ではやはり宝塚らしく、最後はハッピーエンドです。

それでも、ダークヒーローに近いこのエドモン・ダンテスをトップスターが演じるというのはかなり挑戦だったように思います。

特に、投獄されている時のボロボロの姿は「トップさんがこんな格好していいの?!」と驚くほどです(笑)

しかし、脱獄後にあらゆる人物に化ける「七変化」も楽しみですし、様々な演じ分けが求められる部分はトップさんの腕の見せ所でもあります。

屈託のない好青年であった航海士時代、ボロボロの囚人時代、復讐に燃える憎しみの時代。

次々に変わっていく心情を礼 真琴(れい まこと)さんがどのように演じるのか非常に楽しみですよね。

また、救いようのない悪役を演じる瀬央ゆりあ(せお ゆりあ)さん、輝咲玲央(きざき れお)さんの熱演も興味深いです。

エドモンに忠実に仕え、エドモンの悲しみに寄り添い、助けようと奔走するお調子者、ベルツッチオには、星組初登場の暁 千星(あかつき ちせい)さんが。

礼 真琴さんと暁 千星さんがどのようなタッグを見せるのか、ショーの『Gran Cantante‼』も含めて大きな見どころですね。