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すべてが濃い作品に『蒼穹の昴』

宝塚歌劇を楽しもう

現在宝塚大劇場にて公演中の雪組『蒼穹の昴』。

TVドラマにもなった浅田次郎原作の大人気作品『蒼穹の昴』初の舞台化作品です。

演出は原田諒先生です。1200ページを超える長編作品ですが、想像をはるかに超える壮大さと、目を見張るばかりの衣装と舞台で素晴らしかったです。

また、歌のシーンで度々涙がこぼれてしまい、圧倒されてしまった作品です。

ストーリーも歌も衣装も舞台装置も全てが本当に濃い作品です。

物語は19世紀末中国清王朝が舞台です。従来通りの政治を行う西太后と、改革が必要と感じる光緒帝と改革派の人々によって起こる事件と、主人公リャン・ウェンシウと幼馴染のリィ・チュンルの物語です。

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彩風咲奈さんのリャン・ウェンシウの生き方がこの作品の核

 リャン・ウェンシウは中国最難関の科挙という試験に1番で合格する秀才です。

時代は清王朝末期の混乱期で、師匠の楊喜禎(夏美ようさん)は暗殺され、改革は失敗し、光緒帝(縣千さん)は幽閉され、順桂シュンコイ(和希そらさん)は自爆テロで命を失い、譚嗣同タンストン(諏訪さきさん)は処刑されます。

いよいよ自分も責任をとって命を断つべきかと考えますが、
ウェンシウは生きる道を選びます。この物語のメッセージはこの選択に込められているような気がします。

彩風咲奈さんの朗々とした歌声と途切れる事ない緊張感のある演技で、ウェンシウの生きる決意がビシビシと伝わってきました。

朝美絢さん演じる春児チュンルのキラキラ透明感

貧乏から抜け出すために宦官になりますが、京劇の代役で成功し西太后に認められ出世するの役です。

純粋で良心を持ち誰もが応援したくなる人物をキラキラした瞳で演じられています。

ぼろぼろの衣裳から立派な宮中服に衣装が変わり登場されたシーンでは、自分がパイタイタイになった気分で、立派になってよかった!と感極まってしまいました。

一曲の歌で全ての説明ができてしまう

一樹千尋さんと朝月希和さん

一般的な西太后のイメージは清王朝を滅亡を滅亡させる悪女や権力者ですが、原作では国や祖先、縣千さん演じる光緒帝への深い愛情が垣間見られます。

舞台では一樹千尋さんの歌われる一曲に西太后の深い情と想いが凝縮されていました。

京三沙さんの白太太(パイタイタイ)も暗殺や処刑など厳しい場面もある作品の中で空間全体を暖かく抱いて、観客も救われるような空気感を作られていました。

一曲で凝縮といえば、李玲怜(リィ・リンリン)を演じる朝月希和さんもそうです。

両親も兄もいなくなり、荒れた大地で、もう一度家族に会いたいと願い歌うシーンがあります。

リンリンは控えめな妹的な存在ですが、親兄弟がいなくなった孤独、健気な性格、前向きに生きようとする逞しさを一曲で表現しきる朝月希和さんの力量に圧倒され、思わず泣いてしまいました。

和希そらさんの順桂シュンコイのゾクゾクする緊張感がすごい!

シュンコイはウェンシウの同僚役ですが、西太后が国の衰退の原因だと考えます。劇中でも西太后を「あの女」と呼ぶなど敵意を隠そうともしません。

動乱の時代に生きる青年の緊張感とナイフのような鋭さが、和希そらさんのたたずまいから発せられて、舞台ならではの生の緊張感を味わうことができました。

真ノ宮るいさんの黒牡丹と京劇の立ち回りの凄さ!

真ノ宮るいさんは朝美絢さん演じるチュンルの京劇の師匠役です。

先週のタカラヅカニュースの司会をされていましたが、キリッとして凛々しいたたずまいに変わられたなぁと思っていました。

思った通り京劇のシーンでは息を呑むような、華やかで躍動感のある舞でした。

舞台装置も中国の広さと華やかさと、荒涼とた大地が表現されていて圧倒される。

この物語では清王朝の宮中と最貧層両方が舞台になります。

宮中の華やかさと、土以外何もない荒れた土地が舞台上で表現されていて、映画を観るような臨場感でした。

終盤で高い塀に挟まれた路地の舞台装置の迫力は、本当に圧倒されます。

またその後の場面の変化にはあっと驚かされます。

物語の続きのような鋭いキレのフィナーレ

宝塚歌劇での一本ものの作品では、劇中では色々あったけど、フィナーレで楽しい雰囲気で終わるという流れが多い気がします。

しかしこの作品のフィナーレは暗くはありませんが、緊張感とキレがあり物語の世界観そのものがダンスに反映されている気がしました。

また大羽根がないかわりにマントを纏っておられて、彩風咲奈さんと朝月希和さんが中華風の皇帝と皇后に見えてとても素敵でした。

ライター・さんなん