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華世京・雪組の新たなるスター誕生の瞬間 

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団雪組の朝美絢さん主演で宝塚バウホール、KAAT神奈川芸術劇場にて雪組公演「ほんものの魔法使」が上演されました。

彩風咲奈さんがトップ就任し、新たな体制の今、新たなるスターが誕生する場に立ち会いワクワクした気持ちでいっぱいです。

作品の感想と共にこれからの雪組について語りたいと思います。

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ほんものの魔法使

「ほんものの魔法使」はポール・ギャリコ作のファンタジー小説が原作で、主人公・アダム(朝美絢さん)がストレーン山脈を超え喋る犬・モプシー(縣千さん)と魔術の都マジェイアに訪れるところから始まります。

マジェイアでは手品師試験が行われ、アダムも予選に。

そこにはアレキサンダー教授(透真かずきさん)を始めとした多くの魔術師がいます。

中でもロバート(久城あすさん)とマルヴォーリオ(桜路薫さん)は対立していて、それぞれ力を持っています。

アダムが試験場に向かう途中、少女が檻に閉じ込められているところに遭遇。ロバートの娘であるジェイン(野々花ひまり)で、兄・ピーター(壮海はるまさん)にひどい仕打ちを受け、やり返したところ父からお仕置きとして閉じ込められていました。

自分も魔術師を目指していると言い、魔術を披露するジェインに、アダムも木の枝に花を咲かせる魔術を見せ、檻から解放。

試験場ではおちこぼれのニニアン(華世京さん)が緊張のあまり、魔術を失敗し、アダムは彼を助けます。

アダムはジェインを助手にして「ありのままの魔術」を見せます。

卵を割り、かき混ぜ、それを元の生卵に戻すというものでした。

この魔術に皆が驚き、その種を知りたがります。そしてマジェイアを揺るがしていきます。

魔術の都と言いますが、魔術は手品であり、アダムの使う魔術は魔法で、ここに認識の違いが。

手品としての種を知りたがる皆ですが、次第に本物の魔術を使うアダムに恐れを抱き、彼とモプシーを消そうと画策。

純粋に魔術を使うアダムと、自分たちの利益が損なわれると思い排除しようとするマルヴォーリオ達。

しかし、彼らの側に立つと自分達の生活が脅かされる事態であり、もし自分だったら?と考えてしまいます。

ラスト、皆に糾弾されたアダムは……。

ここでアダムが彼らにしたことが怖く感じました。

マジェイアの暮らしは守られ、幸せなのかもしれませんが、アダムが来る前の世界とは違ってしまったのではないかと。

この事件の後にアダムが去って3年後、立派な魔術師となったニニアンがストレーン山脈を超える冒険に立つところで、ジェインに会います。

ジェインも付いて行くと言いますが、ニニアンは試験の前に行ったピクニックでジェインにアダムが話したことを思い出させ、彼女も魔術が使えるのだということを悟ります。

考えさせられるお話でした。

アダムが訪れる前にはそれぞれ専売特許の魔術で生活していたけれど「ほんものの魔法使」が現れることで皆がおかしくなっていく様子など、現実の世の中にもあると思いました。

ラストでジェインがピーターと仲良くなったことが明かされます。

ピーターは魔術師として親から期待され、重圧から妹を虐めていたのでした。

女の子は魔術師にはなれず、親から期待されずに育ち、自信のなかったジェインが自分の気持ちをはっきりと持ち、なりたいものになれるのだということに気付くのが1つの軸です。

上手く出来ずにアダムに助けてもらったものの、彼を裏切ってしまったニニアンも、腕を磨き名の知れた魔術師となり、アダムを探す旅に出ます。

これも成長の物語です。

多くの示唆に富む物語でした。

朝美絢

そして、成長と言えば、朝美さんが東上初主演を果たしました。

2番手としての位置もはっきりと示され、新たな雪組を感じます。

野々花ひまり

ジェインを演じた野々花さんはバウホール、東上公演での初ヒロイン。

上級生を抑えてのヒロインですが、役に合っており更なる飛躍を期待したいです。

縣千

101期生ながら、この公演で2番手役とも言えるモプシー役の縣さん。

新人公演世代ですが、見事に犬を演じ上げました。

喋るのに、足や耳を掻いたり、土を掘ったり、と犬っぽい仕草がチャーミングでした。

華世京

そして今回大抜擢のニニアン役、華世さん。

106期なので研究科2年。

昨年に初舞台を踏みました。

しかも昨年はコロナ禍で初舞台が大幅に遅れた中で、この仕上がりです。

驚くほかありません。

もちろん上級生に及ばないところもありますが、見事にニニアンを演じ、おどおどした最初と3年後では見た目もですが、立ち姿に変化があり素晴らしかったです。

またフィナーレの黒燕尾でも華があり、これはスター誕生と言っても過言ではありません。

このフィナーレ、冒頭では朝美さんをセンターに縣さん、華世さんがシンメトリーとなり、トリオとして出ますが、非常に目を引きました。

若い出演者で構成されていましたが、大変面白く、また今後の雪組に期待を抱く公演となりました。