前回の①に引き続き、宝塚歌劇団の名場面を生み出してきた振付家をご紹介していきます。
①では「宝塚の振付家といえばこの3名」という重鎮をご紹介しました。
②では、新しいダンス文化も積極的に採り入れる宝塚で、現在活躍する中堅~若手の振付家をご紹介していきます。
どの作品にもその名あり!御織ゆみ乃
現在発表されているお芝居やショーで、振付にその名を見ないことはないのが御織ゆみ乃(みおりゆみの)先生。
初舞台生ロケットはもちろん、お芝居の中のちょっとした振付などでも御織先生の名前は随所に確認できます。
御織先生は元花組の娘役さんでした。
「ダンスの花組」と呼ばれる中でも更にダンサーとして注目され、男役さん達を従えてセンターで踊る場面なども与えられていた、ダンサー中のダンサーです。
退団後、ショー作家の重鎮である岡田敬二先生に依頼され、1993年に涼風真世さん主演の『グランドホテル』でブロードウェイから召喚した名振付家、トミー・チューン氏の助手についたことで振付家としての道がスタートします。
さすが元娘役ということで、今も変わらない可愛らしいお声やお姿から、喜多先生や尚先生のような「鬼の稽古」をするタイプの先生ではありませんが、対談番組で生徒さんから対談相手として指名されるなど、多くの生徒さんから愛されている先生です。
OG振付家としては珍しい、元男役の若央りさ
御織先生と共に、現在の宝塚の振付を中心的に担っている、中堅の振付家である若央りさ(わかおりさ)先生。
元タカラジェンヌで振付家となった先生はなぜか元娘役さんが多いのですが、尚先生と若央先生はその中で珍しく男役出身の先生ですので、「男役がいかに美しくかっこよく見えるか」を熟知している先生かもしれません。
退団後に羽山紀代美先生から誘われて振付家の道を歩み始めます。
振付家としてのデビューは1997年。
初舞台生ロケットを初めて振り付けたのは2004年の『タカラヅカ・グローリー!』です。
振付助手としてのスタートが1996年ですから、初舞台生ロケットの担当になるまでは8年もかかるものなんですね。
現在も公演作品には必ずそのお名前が確認できる、宝塚の振付の中心を担う先生です。
振付家としてはまだ新人、鈴懸三由岐
記憶に新しいところでは、102期生の初舞台生ロケットの振付をしたのが、鈴懸三由岐(すずかけみゆき)先生です。
102期生の初舞台といえば、北翔海莉(ほくしょうかいり)さん主演の星組公演『THE ENTERTAINER!』。
ご覧になられた方もいらっしゃるかと思います。
鈴懸先生も、元娘役。
やはり「ダンスの花組」出身です。
同期生には安蘭けい(あらんけい)さん、春野寿美礼(はるのすみれ)さん、朝海ひかる(あさみひかる)さん、花總まり(はなふさまり)さんなどがいらっしゃる「花の77期」です。
鈴懸さんはいわゆる「路線娘役」という立ち位置ではありませんでしたが、そのダンス表現力の高さゆえに、本公演で鈴懸さん用にあてがきされた役もあったほど、ダンス技術以上に表現力の高さに定評がありました。
一時期、本名の「鈴木年子」として活動されていた時期もあったようですが、現在は芸名の鈴懸三由岐さんのお名前で公演プログラムに掲載があります。
HIP-HOP系もお任せ!百花沙里
「元タカラジェンヌの振付家」としては最も若手になるのでしょうか。こちらも元娘役の振付家、百花沙里(ももかさり)先生。
現役時代は花組と星組に在籍していて、ダンサーであることはもちろんですが、サロンコンサートなどにも出演されたことがありましたので、お歌のほうも得意な生徒さんだったように記憶しています。
お母様も元タカラジェンヌだそうです。
現在もいろいろな場面で「振付:百花沙里」という字を見かけます。
106期生の初舞台で初めてロケットの振り付けを担当しました。「WELCOME TO TAKARAZUKA」
「ザ・タカラヅカ!」な振付よりも、HIP-HOPなどの最新のダンスをお得意としている先生のようです。
韓流アイドルグループやジャニーズっぽいかっこいい振付ができる振付家は大変貴重なので、若手ながらも既に充分な存在感のある先生です。
最近では、宙組の和希そら(かずきそら)さん主演のバウホール作品『夢千鳥』で多くの場面の振付を担当されていました。
外部にもたくさん!大人気の振付家たち
現在の公演の振付のほとんどを作られている元タカラジェンヌの先生方を主にご紹介してきましたが、他にも外部委託という形式で依頼している人気の振付家の先生はまだまだたくさんいらっしゃいます。
- 謝珠栄
- ANJU(安寿ミラ)
- KAZUMI-BOY
- 川崎悦子
- SHUN
- KAORI Alive
- KENTO MORI
謝珠栄(しゃ たまえ)先生とANJU先生は元タカラジェンヌですが、お二方以外は完全に外部の先生方です。
しかし、外部の先生だからこそのとても斬新な振付をしてくださり、生徒さん達もそれが新鮮でとても楽しんでお稽古をしている様子がいろんな媒体で伝えられてきます。
たまに「この振付、どの先生?!」と思うほど個性的な振りがあって、確認してみると外部の先生だった、なんてことがよくあります。
ぜひ「この振付好き!どの先生だろう?」という視点で公演を楽しんでみてくださいね。公演プログラムにあるお名前を見て、自分のお気に入りの先生がきっと見つかるはずです。