先日、宝塚歌劇団の専科に所属しトップ・オブ・トップとも呼ばれる轟悠さんが退団を発表しました。
昨年2020年には理事から特別顧問という立場になりましたが、春日野八千代さんのように生涯宝塚歌劇団で男役を続けると思っていたので、とても驚きました.
周りでも信じられないと言った声が多く聞かれ、その衝撃は大きいです。
轟悠さんの経歴
まずは、経歴ですが1985年、宝塚歌劇団に71期生として入団し初舞台を踏み、月組に所属となりました。
月組時代
月組時代は上には後に月組トップスターになる69期の久世星佳さん、下には73期の天海祐希さん達がいて切磋琢磨しました。
特に天海さんとは学年は2年違うものの、実際の年齢は同じであり誕生日もわずか3日違いという関係です。
入団時から注目され研究科2年目で新人公演主演を射止めた天海さんとの兼ね合いもあったのか、研4の時に雪組に組替えとなりました。
雪組時代
すぐに雪組の戦力となり、翌年には「ベルサイユのばら」で新人公演の初主演を果たし、以降順調にスター路線に乗り、一路真輝さんのトップ就任時には3番手ではありますが、役替わりなどの重さを見るとダブル2番手とも言える程の活躍をします。
トップ就任
そして、高嶺ふぶきさん(現在・たかね吹々己さん)の後を継いで1997年にトップ就任。
花總まりさんとコンビを組み、花總さんが宙組創立時に組替え後は月影瞳さんとのコンビで人気を博しました。
71期といえば先日もディナーショーで顔を揃えた愛華みれさん、真琴つばささん、稔幸さんと同期です。
同時期に4組でトップとして主演し、四天王と呼ばれました。
2001年に愛華さん達3人は退団し、宝塚を卒業しましたが轟さんは春日野さんの後継者となるべく、専科へと異動しました。
専科、そして劇団理事、特別顧問へ
専科入りする生徒さんはいますが、トップを経てのこの立場は他には「ベルサイユのばら」、「風と共に去りぬ」で主役を務めた榛名由梨さんなど限られた人しかいません。
そして2003年に理事に。
2020年には特別顧問となりました。
男役・轟悠の魅力
今まで5組に特別出演し、多岐にわたり男役として後輩達にその姿を見せてきました。
轟悠さんと言えば男らしい男役といった言葉が真っ先に思い浮かぶことと思います。
ここ20数年の中では「エリザベート」初演時に演じたルキーニを見たときに、宝塚に本物の男性がいるのではないかと驚きました。
ウィーンの制作の方達も同じように思ったというのを当時誌面で見ました。
それほどリアルな男性像に近い容姿と演技で、「エリザベート」のその後のルキーニ像にも受け継がれています。
2001年に上演し、2018年にも再演された「凱旋門」もリアルな男性として悲しみを漂わせました。
移民の医者として働くラヴィックの、人を助けたいという正義感やジョアンへの恋心、そして嫉妬心。
戦禍で身を隠して生き、状況に翻弄され、寂しさから他の男性に頼るジョアンに大人の男性ながらに心が乱される様子が痛い程伝わってきました。
そんな弱さも、色気として魅力に昇華していました。
また、雪組生時代に役替わりで演じた「風と共に去りぬ」のレット・バトラーも代表作です。
こちらも見た目が髭姿で包み込むような男らしい中にスカーレットへの思慕を募らせる様が丁寧に描かれ、心と言動との葛藤が窺えました。
その思いがにじみ去っていくときの哀愁がたまらなかったです。
他にも「おかしな二人」や「第二章」「パパ・アイ・ラブ・ユー」では軽妙なコメディセンスを発揮し、最近の硬質なイメージを払拭して肩の力の抜けた演技も上手かったことを思い出しました。
「神家の七人」などもこの系統ですね。
遡れば「再会」のジェラールも良かったことを懐かしく思います。
実在の人物を演じるのもお得意で、「JFK」のキング牧師、「猛き黄金の国」の岩崎弥太郎、「For the people」のリンカーン、「チェ・ゲバラ」でのゲバラも人物像をリアルに作り上げました。
退団作品は星組公演「婆娑羅の玄孫」で、ディナーショーでの卒業という予定です。
まさか、現役を退く日が来るとは、といった思いがいまだに消えません。
研37での退団。
ファンの方も思いが深く大きいものだと思いますし、一観客から見ても思いでは尽きぬものです。
しかし大階段もセレモニーもなくシンプルに、とのことですが、潔さも轟さんの魅力かも知れません。
今はただ状況が落ち着き、予定通り、思いのまま卒業を見送ることが出来る様祈るばかりです。