以前から歌劇団理事長陣が口にしていた「宝塚虹組構想」。
OG公演などで大御所の先輩たちが「我ら虹組」と命名しておられましたが、ついにその構想が実現したのが株式会社タカラヅカ・ライブ・ネクストです。
「虹組」という正式名称にはなりませんでしたが、公式ホームページを見てみるとちゃんと虹のアートワークから始まります。
そしてその第一弾公演となる、彩凪 翔(あやなぎ しょう)さんを主演にした『アプローズ』~夢十夜~が発表されました。
しかも、関西公演はバウホール!
今のところ所属メンバーに元トップスターさんはいないので、一体どんな公演になるのか大きな注目が集まりました。
バウホールは大きな劇場ではないし、公演期間もたった4日間ということで、実際に観劇できた人はごくわずか。その貴重な公演『アプローズ』~夢十夜~のレポをお送りしたいと思います!
気になる彩凪さんの役は≪男役≫だった
『アプローズ』~夢十夜~は一体ショー作品なのか、はたまたお芝居なのか、ゲスト出演の水 夏希(みず なつき)さんはどのような出演場面になるのか…
そんなワクワクと、出演者全員がきっと下級生時代に立ったことのある懐かしのバウホールの舞台に再び立つ…!というワクワクを抱えながら、ついに幕が上がりました。
まず、構成は幕間無しの約120分。
幕間休憩に慣れている私たちにとって、なんだか新鮮でした。
全体的には、ポエムやおとぎ話のような世界観でした。
スターを夢見てアプローズ劇場にやってきた青年、ショウ。
ショウがスターになるために、アドバイスをたくさん授けてくれる、アプローズ劇場に住む妖精たち。
みんなの応援もあってついにショウはツバメの役をもらい、精一杯演じる…という物語でした。
星乃あんりさんの「あんた、ハンサムだから!」という台詞があったので、彩凪さんは男役ということですね。
適材適所、得意分野を存分に活かした演出
レギュラー出演者の8人はそれぞれに歌やダンスという強みを持つ面々。
特に、劇団の振付助手としても大活躍しておられる風馬 翔(ふうま かける)さんと、元月組男役の貴千 碧(たかち あお)さんのダンスは圧巻。
身体能力はもちろん、見ていて圧倒されるほどの表現力の高さを間近でキャッチできたのは、狭いバウホールならではでした。
風馬さんは振付家でもあるため、ご自身でもたくさんの場面を振り付けされたそうですし、チャーミングでユニークなお人柄もよく伝わってきて、まさに大活躍でした。
お歌のほうでは、在団時から歌姫と絶賛されてきた、元星組の音花ゆり(おとはな ゆり)さんと、スーパーシンガーとしてテレビ出演もされたことのある透水さらさ(とうみ さらさ)さんが全く衰えない美声をたっぷり披露。
音花さんはQueenの『SHOW MUST GO ON』を大迫力で歌い、透水さんは『ジュピター』を壮大に歌い上げてくださいました。
大スターの貫禄!水夏希さんの眩しさ
そして物語が終わり、眩しいライトが客席を照らして目がくらんでいると、ライトが消えた途端、そこにはお待ちかねの水 夏希さんが!!!
元男役!という感じの真っ赤なパンツスーツに(黒バージョンもあり)、水さんの真骨頂であるソフト帽をかぶり、背中を向けて立っておられました。
もうその背中だけで大感動!!!
「男役は背中で語る」という言葉がありますが、退団して何年経とうともそのオーラは健在。
むしろ現役当時よりもずっとバージョンアップされているように感じました。
彩凪さんとシンメトリーになってジャズの曲に乗り、男役っぽいダンスを披露。
スーパーダンサーである水さんは退団後もずっとダンスを続けていらっしゃいますが、今は女性としてのダンスを極めていらっしゃるので、男役のダンスはかなり久しぶり。
女性のダンスを身に着けたからこそのしなやかさも加わり、身体の可動域も広がっていて大変にレベルの高いダンスでした。
そのあとはパンツスーツからドレスへの超早替えをして、退団後に出演された作品の中から1曲と、ミュージカル映画『グレイテスト・ショーマン』の中から1曲。
そして、水さんプレお披露目公演『Joyful!』のテーマソングを出演者と一緒に。
これには現役当時からのファンはもう涙モノだったでしょうね。
そのあとは彩凪さんと少しMCをして、最後に2人で『ドリームガールズ』から1曲。
たった20分程度のご出演時間でしたが、大満足の内容でした。
タカラヅカ・ライブ・ネクストの可能性を見せた旗揚げ公演
宝塚OGだけを集めたプロダクションって、一体どういうものなんだろう?男役の人はずっと男役をやるの?などなど、皆さんのいろいろな期待が集まった『アプローズ』~夢十夜~でした。
つい数か月前までバリバリの男役だったスターさんが急に方向転換をしてしまっても、置いてけぼり感を抱いてしまうファンは少なくありません。
しかし彩凪さんはまだ男役の色をしっかり残した雰囲気で、ここから少しずつ模索・進化が始まっていく感じでした。
水さんはMCの中でも、「私だって2年はスカート穿けなかったもん!だから少しずつでいいのよ。」と仰っていました。
外部の舞台でいきなり男性と組んだりラブシーンを見せられてしまうのも大変複雑な気持ちになりますので(笑)、このようにOGだけの中で少しずつ進化してくれるのは、ファンにとって非常に安心できるというのも、タカラヅカ・ライブ・ネクストの良さのように感じました。
次回作はどんな公演をされる予定なのでしょうか。非常に楽しみですね!