宝塚歌劇団がいつコロナで中止になるか。
そういう不安漂う中、観劇させて頂いた『今夜、ロマンス劇場で』『FULL SWING!』。
こんなにも最高のお披露目公演があっていいのか、と。この奇跡に感謝するほどの出来栄えでした。
まずは『今夜、ロマンス劇場で』です。
『今夜、ロマンス劇場で』
先に映画を観ていた者として、これを舞台でどのように表現するのか気になっていたのですが、映像と人物の重ね合わせ、色の変化、「お見事」の一言でした。
こんなにも夢と愛とファンタジーに溢れ、優しい登場人物で賑わう演目はなかなか見かけません。
そんな温かい物語がお披露目公演に選ばれたこと、まさに「見つけてくれて、ありがとう」の台詞につきます。
れいこさんとうみちゃんは、小柳先生がおっしゃっていたように「同じ作画」なんですよね。
どの場面に出ていても、一緒に出ているだけで、素敵な絵になる。
また、芝居上手で穴がない。
それはれいこさんとうみちゃんだけでなく、ちなつさん、ありちゃん、おだちん、みちるちゃん、じゅりちゃん……指折り数えても足りないほど、全員を褒めたたえたくなる舞台でした。
演目が決まった際には、「役が少ないけれど大丈夫なのか」と心配だったのですが、大蛇丸とその従者たちというオリジナルキャラクターが良い味を出していたこと。
助監督仲間や、セブンカラーズというアイドルたちひとりひとりにキャラクターがあって、舞台上でその人たちが「しっかり生きている」こと。
組長が挨拶で「目が足りないと言われるような」とおっしゃっていましたが、まさしく目が足りませんでした。
真ん中は勿論、舞台の端にいるあの子もあの子も、全員みたい! と思わせる吸引力が凄まじかったです。
れいこさんは常々、「自分はみんなの力でトップにさせてもらっている」「組子みんなで力を合わせて、良い作品にしたい」とおっしゃっています。
自分だけがずば抜けて目立つのではなく、生徒一人一人が輝くような舞台。
今回のお披露目公演は、まさしくそんな、月組生ひとりひとりが輝く舞台でした。
脚本も綺麗にまとめられていました。
最初、真っ白だったはずの緞帳が、終演後は加美乃素さんのカラフルな緞帳に変わるなど、細やかな変化にすら感動しました。
あんなに素敵な物語を観た後に、ショーまで観ていいんですか!? と、追加してお金を払いたくなる感情が芽生えるほどでした。
『FULL SWING!』
ショーの『FULL SWING!』は、最初から最期まで終始ジャズです。
多くのショー作品で言えることですが、一回目よりも二回目、二回目よりも三回目の方がより楽しめるショーでした。
なんといっても、月組生、全員歌が上手い。
月組の生徒さんたち、ダンスがうまい。
どの場面でも、かっこいい男役と凛々しい娘役がたくさん出てくる。
また目が足りない。
幸せだけれど目が足りない! と思いながら拍手していました。
プロローグの後、れいこさんとうみちゃんが銀橋に残ってふたりで歌を歌うのですが、幸せってここにあったんだ、というくらいあの場面が大好きです。
お似合いの二人が、それぞれ想いあっていることが伝わる微笑みが「宝塚を好きでいて良かった〜!!!」と改めて思わせてくれます。
そのシーンは最後、れいこさんの左目ウィンクがかっこいいのでそこにも注目です。
そのあと、砂漠の場面ではありちゃん中心に若手男役が踊り狂うのですが、みんな凄い! 踊りっぱなし凄い! その中でも大抜擢なのは、107期の一輝翔琉くんです。
軸がぶれていないダンスが素晴らしく、それに加えて顔の小ささ、スタイルの良さ、これからバリバリ月組生として活躍して欲しいと思いました。
全場面を記すと長くなるので、れいこさんとうみちゃんが出るカフェの場面について記させて頂くのですが、まずれいこさんの衣装がかっこいい。
すごく似合う。
とってもかっこいい。
歌が上手い。
とてもお洒落なシーンです。
素敵なカップルたちの踊りににこにこしていると、途中から現実を思い出させるような切ない場面に転換します。
芝居の月組、ショーでもストップモーションが上手すぎます。
うみちゃんも、ショーなのに泣きそうな顔をするので、私も泣きそうになりました。
今回のショーでひとつだけ不満を言ってもいいのなら、うみちゃんの衣装をもっと素敵なものにしてほしかったな、ということです。
「ちょっとこれはどうなの?」という衣装がちらほらあって、せっかくのうみちゃんのドレス捌きを堪能するシーンが少ないことが不満でした。
ですが、そんな中で、うみちゃんのドレスが一等素敵だったのが、中詰めマイウェイの場面です。
この場面は男役も娘役も全員衣装が素敵で、曲も素敵で、うっとりします。
歌詞に耳を傾ければ最後、ひとりひとりの宝塚人生に想いを馳せ、とても感動してしまいます。
中詰めにしては落ち着いた、しっとり美しいものを心に刻めるシーンでした。
デュエットダンスが三組だったことを「せっかくのお披露目だったのに」と嘆かれていた方を見たのですが、うみちゃんが「三組のデュエットダンスに憧れていた」と嬉しそうに言っていたこと、博多座のドリチェで最上級のデュエダンを披露していること。ありちゃんの組替えのこと。
そういうもろもろを考えると、「三組のデュエットダンス最高!」という気持ちになりました。
もちろんこの場面でも目は足りません。
パレードのエトワールは、エトワール至上最大の衝撃で、おだちん、りりちゃん、おはねちゃん。
こんな最強の布陣のエトワール、楽しすぎる、とテンション爆上りになります。
れいこさんも「今日も風間は絶好調だ」とおっしゃっていましたが、私も「今日も風間さんは絶好調だ……」と圧倒されました。
パレードの歌はめちゃくちゃ難しくて、ですから拍手もめちゃくちゃ難しいのですが、上手な人にあわせながら楽しめばオールオーケーです。
本当に、観に来て良かったな、と思う作品に出会えたこと、心の底から歓喜します。
この素晴らしい舞台がコロナで中止にならないこと、また、新人公演が無事上演されますことを願っております。
はたまた、雪組バウチームの公演が完走すること、花組の公演が再開されること、オデッセイがいつか陽の目を見ること。
たくさんのことを祈りつつも、れいこさんとうみちゃんのお披露目公演が最後まで祝福されますように。
怪我や体調不良の方が舞台に復帰できますように。
月組公演、万歳でした!