宝塚歌劇団の星組トップスターの礼真琴さんが満を持して宝塚大劇場でのお披露目を果たしたのは、去る2020年3月。
新型コロナウイルスの影響で無念の公演中止となってしまいましたが、ありがたいことにBlu-rayとDVDは無事に発売となりました! 嬉しいですね!!
東京公演が今後、おそらく公演されるのでは????は楽しみにしているところです。
というわけで、ここではBlu-rayを観ながら、礼真琴さんのお披露目作品『眩耀の谷』のストーリーと魅力を2記事に分けてつづりたいと思います。
(この記事はネタバレを多分に含みます)
『眩耀の谷~舞い降りた新星~』
お芝居の演目は『眩耀の谷』。宝塚歌劇OGであり、演出・振付けで活躍されている謝珠栄先生が初めて脚本から手掛けた記念すべき作品となっています。
舞台は紀元前の中国。流浪の民「汶(ブン)族」と彼らの聖地である「眩耀の谷」をめぐる、若き大夫・丹礼真(タンレイシン)の冒険と成長を描いた歴史ファンタジーです。
主人公の名前が「礼真」、というところに、まず愛を感じます。
ちなみに舞空瞳さん扮するヒロインの名は「瞳花(トウカ)」。
お披露目公演にこのような芸名に縁のある役名がつくとは嬉しいものです。
幕開きは、琵琶とともにこの物語を紡ぐ春崇(シュンスウ・有沙瞳さん)の語りから。彼女はお芝居中いちども他の役と言葉を交わさず語り部に徹するのですが、作品の空気に溶け込みつつ説明と進行の役割を自然に果たしており見事の一言でした。さすが娘役スターが厚い星組……!
続いて舞姫姿の瞳花が登場。
待ってました! 圧倒的な踏力と華やかさに釘付け!
汶族の民が集まり自然を愛する歌と舞を心いっぱい披露します。もともと謝先生の振付はどこか民族的な香りがして魅力的だと思っていたのですが、その持ち味が余さず発揮されたナンバーでした。
そして「心優しい青年がおりました」の語りと共に礼真が登場。
眩しいスポットライトに、トップさんになったのだと改めて感じます……。
満面の笑顔でのびのび歌い始める礼真。若く溌溂とした姿は礼真琴さんご自身の魅力と重なります。
部下の91期コンビ・慶梁(天寿光希さん)&百央(大輝真琴さん)との掛け合いも楽しげ。
将軍の元へと向かうのが待ちきれないといった姿は、さながら遠足前の小学生です。なんて可愛い! バナナはおやつに含みます!
一方宮廷では、巫女の敏麗(ビンレイ・音波みのりさん)が妹の瑛琳(エイリン・小桜ほのかさん)と何やら怪しげな相談中。
なんと素敵な姉妹でしょうか。音波さんの可愛らしさと大人の魅力の配合は絶妙だと日頃から思っているのですが、今回の役どころはピリ辛大人テイストです。
真っ白な装いと利権への執着のギャップも見事で、お衣装部さんへの感謝が湧いてきます。
そして2人は王への拝謁に向かいます。
満を持して宣王(華形ひかるさん)の登場。
ひげが自然に生えているとしか思えない完璧なイケオジ加減です。
この後人払いをして敏麗から秘密を聞くのですが、そこでさりげなく去っていく王妃が超美しいと思ったら華雪りらさんでした。切っても切っても可愛い実力派娘役が出てくる星組。
金太郎アメかと思います。
敏麗から告げられるのは、汶族の聖地である眩耀の谷に黄金が埋蔵されているという情報。
この黄金で富を得るため、宣王は管武将軍(愛月ひかるさん)に何としてでも眩耀の谷を探し当て手に入れるよう命じます。
愛月さんは星組生として初めての公演ですが、不安など微塵も感じさせない存在感。
宙組時代からお持ちの華と個性に磨きがかかったようにお見受けします。
甲冑を身に着けた説得力が半端なものではありません。
特に剣舞の場面では、キレがありながらも若々しさではなく「歴戦の将軍」という迫力が漂っており目を奪われました。
若き礼真との対比が鮮やかで、双方の魅力が引き立ちます。
そんな管武将軍を礼真は即座にリスペクト。「我が股肱(ここう)の臣となってくれるか」と言われて大喜びし、眩耀の谷を必ず見つけ出すと奮起します。
しかし気合も虚しく谷はなかなか見つかりません。
そんなある晩礼真は、不思議な生き物の幻を目にします。
扮するのは水乃ゆりさん。
素晴らしい身体能力を活かした軽やかな舞がなんとも神秘的です。さすが娘役金太郎アメの星組。
導かれるように森の奥深くに進むうち、礼真は倒れながらも生き続ける巨大な木の麓に辿り着きます。
森と星空の雄大さに抱かれて故郷を思い出し、母から聴いた子守唄を口ずさむ礼真。回想で現れる母(万里柚美さん)とデュエットする一節は優しくあたたかです。
今公演を以て専科へ異動される柚美組長が、礼さんを見守る母親役であることに目頭が熱くなります……。
懐かしく歌っていると、唐突に謎の男(瀬央ゆりあさん)が現れ「その歌を教えてくれないか」と迫ります。
役名「謎の男」という時点でちょっと面白く感じてしまうのは瀬央さんの楽しいキャラクター故でしょうか。
男は歌を教わる代わりに眩耀の谷に連れて行く、と申し出、礼真はついて行くことにします。ここで歌う礼さん&瀬央さんの同期デュエットは迫力満点。
「誠を知るは勇気がいる その重圧に耐えられるか」
という歌詞は、今後の物語を暗示するようで印象的です。
お2人の歌唱力もさることながら、お芝居のいち要素としてのナンバーの存在感に惹き込まれます。
実は倒れた巨木は谷の入口。
謎の男に導かれその先へ進むと、そこには黄金に輝く美しい谷がありました。今回のお衣装やセットには光り物があまりないので、眩耀の谷の輝く岩壁のセットはとても幻想的で印象に残ります。
そこに現れたるは汶族に若者たち。カイラ(綺城ひか理さん)、クリチェ(天華えまさん)、イムイ(極美慎さん)らを中心とした戦士たちに囲まれます。
この場面の殺陣が超ダイナミック! 礼さんの蹴られ芸に身体能力の高さがうかがえるので注目です。
敵意むき出しの民たちに戸惑いつつ、平和のため谷を探しているのだと説明する礼真。
しかしそこで聞かされたのは、周国が汶族を迫害した歴史と、黄金に目がくらんで侵略を仕掛けているという事実でした。
怒りと悲しみに燃える汶族たちの歌と踊りは鬼気迫るものがあります。
今作品から星組生となった綺城さんは、長身と深い声で凄味を発揮。
語り口は落ち着いていながらも。歌や振りの一節一節から熱が溢れるような燃える若者像でした!
殺されるかと思われた礼真ですが、汶族の長老的存在タカモク(ひろ香祐さん)の制止によりひとまず捕らえられるのみとなります。
星組95期の優しいお兄さん(勝手に認定)ひろ香さんが汶族を束ねていると思うと、最高に安心感があります。
捕らえられた礼真の元に再び謎の男が現れますが、助けてくれる気配はなし。あっという間にいなくなってしまいます。
代わって入ってきたのは小刀を手にした瞳花。振り上げられた刀にもはやこれまでと覚悟しますが、切られたのは礼真を縛っていた縄でした。
ここで瞳花は「ここから逃がす代わりに周国にいる自分の息子を探してほしいと」礼真に頼みます。なんと彼女は周国で管武将軍に妾として囲われ、子供を産んでいたのです。尊敬する管武将軍が、無理やり召し上げた女に子供を産ませ挙げ句その子を取り上げた、ということが信じられず戸惑う礼真。しかし謎の男の後押しもあり、瞳花に協力すると約束します。
【熱が入りすぎたので後編に続きます。】
ライター:松下梨花子