宝塚歌劇という世界があまりに独特なのでこの世界の規則やしきたり、他にはないルールのなかで仕事をすることはとても難しいことではないかと察します。
なかには御自身と劇団の求める方向性の不一致に悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
才能があればあるほど、御自身に強い信念があればあるほどその溝は深まるに違いありません。
そのなかで諸先生方皆様、公演毎にブラッシュアップされ、目に見える形で宝塚歌劇団、生徒への信頼、愛情、敬愛の念をぶつけて下さる方ばかりです。
その先生方の熱い想いは作品を通して、演者を通してこちら側に激しく伝わります。
演者と製作者の相性は私にとって何の作品をするかよりも密かに大事な要因となります。
今の時代は話題作、大作こそが正義の世の中に変化してきました。
よりわかりやすく豪華な大舞台に人々は感動し価値を見出し正解とする。
少し前の時代は演出家先生がスターに当てた完全オリジナル芝居が主流でした。
私はそのどこか不完全で曖昧なのに多大なる愛を感じるお芝居が好きでした。
しかし宝塚歌劇団という世界をより多くの人々に認知してもらい観てもらうためには誰が観ても楽しめてわかりやすい演出というものが必須となってきたに違いありません。
最近の演出家先生たちはきっと昔以上に多くのことを求められるのではないでしょうか。
舞台を観て毎回その情報量の多さに驚きます。
皆さん頭脳明晰で抜群の舞台センスを持っておられます。
その上、距離感も近く共に舞台を楽しみ盛り上げて演者のモチベーションをあげようとして下さる優しさがこちらサイドから見てもしっかりと受け取れます。
スターの特性を熟知し、更に自分自身の特性も熟知し、どのように互いにセッションし魅せることがお客様への最大の喜びに繋がるのか、緻密な計算による演出にプロ意識の強さをとにかく感じます。
作品の質の良さ、そのなかに大切な愛情や目に見える温もりを感じることがとても多いです。
最近では女性演出家先生方の活躍ぶりも見事ですし新しい時代が来たなぁと目が離せません!
タカラジェンヌは様々なメディアを通して彼女たちの素顔を見れる機会は多くありますが演出家先生方の素顔はヴェールの奥に隠されています。
最近ようやくスカイステージで先生方にスポットを当てた番組やメイキング映像、生徒との普段の絡み、またスターからのメッセージなどを通して先生方とのリアルな関係性を知ることが出来るようになりました。
どの先生も熱血でとても劇団愛が強いように見えていました。
いや、きっと私の目に映る姿は真実だと信じています。
だからこそ、今回の件は悔しかったです。
その思いを裏切られてしまったようで。
見えない世界で起こった出来事があまりに残酷で…。
大好きだった作品を見る度に思い出してしまう。
作り手という存在は想像していた以上に作品に与える影響が大きく、ブランド力があるものだと痛感しました。
それでも、命をかけて劇団のために製作し続ける先生方が今後辛い思いをしませんように、非難を浴びることがありませんように。
これを機にヴェールの奥の全ての人々が安心して仕事に専念出来ますよう…ひたすらに強く願っております。