宝塚歌劇の作品における究極のテーマと言えば、
「愛」
格好良い男役さんと素敵な娘役さんの美しい恋愛模様は見ているだけで夢の世界に浸れます。
ですが、宝塚歌劇の作品の中には、男の友情をテーマにしたものや、恋愛をテーマにしつつも男の友情が描かれているのもなどもあります。
男の友情には、恋愛とはまた違った良さがあります。
今回は、男の友情が描かれている宝塚歌劇の作品をご紹介したいと思います!
「the WILD Meets the WILD」(2013年 宙組)
この作品は、蓮水ゆうやさんと七海ひろきさんのダブル主演で上演された、宝塚歌劇では珍しいウエスタン物です。
上演当時、蓮水さんと七海さんのポスターの格好良さに衝撃を受けた記憶があります!
タイトルの頭文字「W M W」を取った、「割と、本気で、西部劇」というキャッチコピーも面白いです☆
物語の舞台は、19世紀末のアメリカ西南部の街「トゥーム・ストーン」。
主人公は、同じ街で兄弟のように育ったジェレミー(蓮水ゆうやさん)とベンジャミン(七海ひろきさん)。
高等教育を受けるために街を離れたジェレミーは、10年ぶりに帰って来た故郷の変わり果てた姿に愕然とします。
そこでベンジャミンと再会するのですが、ジェレミーが故郷を捨てたと思っているベンジャミンは、上手く心を開けません。
そのあと起きる事件を通じて、徐々に二人が絆を取り戻していくのですが、保安官の蓮水さんとカウボーイ姿の七海さんがとにかく格好良いです!
一学年違いで普段から仲が良かったお二人の関係がそのまま舞台に活かされているようで、ハラハラドキドキしながら夢中になっているうちに、あっという間にラストを迎えてしまいます。
まさに、男の友情物語の真骨頂的作品なので、一見の価値ありです!
「長崎しぐれ坂」(2005年 星組、2017年 月組)
幼い頃、江戸で一緒に過ごした幼馴染の伊佐次、卯之助、おしまの3人は、十数年後、まったく違う境遇となって遠い長崎の地で再会します。
凶状持ちとなって唐人屋敷にかくまわれて暮らす伊佐次。
その伊佐治次を必ず自分の手で捕らえようとする岡っ引きの卯之助。
流れて芸者となり、商人に囲われているおしま。
おしまと再会した事で、懐かしの故郷江戸へ帰りたい気持ちが強まった伊佐次は、おしまと二人で江戸に逃げる約束をします。
ですが、それを知った卯之助は、おしまの主人である商人にこの事をさりげなく知らせて妨害します。
これは、伊佐次の命を助けるためにした事です。
治外法権の唐人屋敷を一歩でも出れば、伊佐次を捕らえようと待ち構える長崎奉行につかまってしまいます。
そうなれば、死罪も免れません。
そこで卯之助は、伊佐次の身を守るために彼を唐人屋敷から出させないようにしたのです。
幼い頃から足が悪く、近所の子供たちからいじめられていた卯之助は、いつも自分をかばって助けてくれた伊佐次に恩を感じていました。
それでわざわざ、伊佐次を追って長崎まで出てきたのです。
最後は、卯之助が伊佐次を江戸に逃がそうとするも、長崎奉行に見つかってしまい、伊佐次は撃たれて命尽きてしまいます。
涙なしには見られないラストシーンに、伊佐次と卯之助の強い友情を感じられます。
初演、再演と伊佐次を演じている轟悠さんのやさぐれっぷりも必見です。
「愛のプレリュード」(2011年 花組)
真飛聖さん演じる主人公のフレディーは、訳あって警察官を辞め、今はボディーガードをしています。
そんなフレディーの元に、令嬢キャシーのボディーガードの仕事が舞い込んできます。
始めはわがままで手の焼けるお嬢様だったキャシーと徐々に心を通わせて恋に発展していくのですが、そこで、警察官時代の相棒だったジョセフ(壮一帆さん)と再会します。
今は警察を辞めて不動産の仕事をしており、キャシーの恋人だというジョセフに、フレディーはどこか違和感を覚えます。
実は、フレディーが警察を辞めた後、二人で解決した事件がお金の力によって揉み消されてしまい、正義感の強かったジョセフをお金に執着する男へと変えてしまっていたのです。
そんなジョセフですが、実は仕事で騙されていた事に気が付き事件に巻き込まれ、そこへフレディーが助けに駆けつけます。
そこでの銃撃戦でフレディーをかばったジョセフは撃たれ、フレディーの腕の中で息を引き取ります。
ジョセフが最後に残す言葉で、二人はかつての友情、絆を確認するのですが、とても感動する場面です。
さらにその後、回想のような形で再びジョセフが現われ、フレディーと固く手を握り合う場面があるのですが、ここで感動再び!
この公演は真飛さんの退団公演だった事もあり、フレディーとジョセフとしてだけでなく、真飛さんと壮さんとしてもお互いの友情を確かめ合っているようにも感じられる場面です。
「カリスタの海に抱かれて」(2015年 花組)
地中海のカリスタ島で生まれたシャルルは、ある事情からフランスで育ち、フランス司令官となって20年振りにカリスタの地に戻ってきます。
そこでアリシアという島の娘と出会い、二人は惹かれあうのですが、アリシアには許嫁がいて、しかもその許嫁はシャルルの幼馴染ロベルトだったのです。
同じ日に生まれたシャルルとロベルトですが、島で起きた昔の事件のせいでシャルルは裏切り者の子としていじめられていました。
そんなシャルルの事をいつもかばってくれていたのがロベルトでした。
ロベルトを裏切る事はできないと、シャルルはアリシアに冷たい態度を取るようになります。
ずっとカリスタで過ごし、島の独立を目指すロベルトは、フランス司令官であるシャルルの事を信用せず、20年振りの再会にも関わらず、二人の仲はぎくしゃくしてしまいます。
実はシャルルは、故郷カリスタの独立を実現すべく自ら志願してカリスタ島に赴任してきたのですが、いくら説得してもロベルトとの距離は縮まりません。
ですが、カリスタのために行動するシャルルの姿を見て、徐々にロベルトも心を開いていきます。
アリシアは、最終的にシャルルと結ばれる事になりますが、親友ロベルトのために身を引こうと葛藤するシャルルの姿がとても切ないです。
以上、『男の友情』が描かれている宝塚歌劇の作品を4つご紹介させていただきました。
こうしてみると、男の友情も恋愛同様、一筋縄でいかない事が多いですね。
でも、タカラジェンヌが演じると、男の友情も暑苦しくならないところがすごいです♪
恋愛も宝塚舞台の重要な要素ですが、たまには男の友情に注目してみるのも、鑑賞の楽しみ方の一つとしておすすめです。
ライター:七海 れい