去る8月19日、宝塚歌劇団星組トップスター紅ゆずるさんが、トップ娘役の綺咲愛里さんと共に宝塚大劇場をご卒業されました。
これまで多くの作品を通してたくさんの感動ととてもたくさんの笑いを届けてくださった紅さん。
もちろんサヨナラショーも、熱くひたむきで楽しいお人柄の表れた素晴らしいものでした。
そんな紅さんのサヨナラショーのリストと感想をお伝えします!
セットリスト
- ひとかけらの勇気(『THE SCARLET PIMPERNEL』より)
- オーム・シャンティ・オーム(『オーム・シャンティ・オーム』より)
- 夢を売る男(『OCEAN’S 11』より)
- Sue Me(『GUYS AND DOLLS』より)
- あなたを見つめると(『THE SCARLET PIMPERNEL』より)
- 紅子トークタイム
- Killer Rouge(『Killer Rouge』より)
- エストレージャス(『ESTRELLAS』より)
- あなたこそ我が家(『THE SCARLET PIMPERNEL』より)
- Seven Wonders(『CATCH ME IF YOU CAN』より)
- Goodbye(『CATCH ME IF YOU CAN』より)
- ありがたやなんまいだ(『ANOTHER WORLD』より)
トップお披露目・プレお披露目公演から
お披露目公演から
『THE SCARLET PIMPERNEL』(以下スカピン)から、「ひとかけらの勇気」「あなたを見つめると」「あなたこそ我が家」の3曲が使用されていました。
スカピンは、トップコンビお披露目公演であると共に、紅ゆずるさんにとっては新人公演主演公演、
そして綺咲愛里さんにとっては初舞台公演という、お2人双方に思い出深い作品です。
紅ゆずるさん自身でおっしゃっていたように、舞台の一番端にいても、諦めなければ夢はかなうと信じてひたむきに芸の道を歩んできた紅さん。
その勇気が歌詞と重なり、心に響きました……。
また、綺咲さんも「あなたを見つめると」をソロで披露。
トップ就任前はとにかく可愛らしい娘役さんというイメージであった綺咲さんですが、スカピンではマルグリットとして大人の艶やかさを放たれる姿に感動したことをよく覚えています。
トップ娘役としての経験を重ねて再び扮したマルグリットは、パーシーの歌詞を借りると「前より美しく 気高く強く 輝いて」いました!
そして真っ白なお衣裳でデュエットされた「あなたこそ我が家」。
お2人の、本当の夫婦のような信頼と愛が溢れ出て見えるようで目頭が熱くなりました。
退団会見で、恒例となっている結婚の予定に関する質問に対し「宝塚で綺咲愛里と結婚しましたので」と返答された紅さんを思い出さずにはいられませんでした。
素敵な結婚式にお招きいただきありがとうございます!はい!
プレお披露目公演
プレお披露目公演からは、テーマ曲の「オーム・シャンティ・オーム」。
明るく楽しく笑いと愛に溢れたプレお披露目作品は、いま振り返ると、このトップコンビの舞台姿をすばらしく表した演目であったと思います。
綺咲さんのビジュアルがインドの美少女そのもの!絶大な説得力!今回のショーでは紅さんは登場されませんでしたが、綺咲さんを中心とした組子たちと、母親役を演じた美稀千種さんのお衣裳姿が懐かしかったです。
2番手時代の思い出の曲
柚希礼音さんトップ時代からは『OCEAN’S11』の「夢を売る男」。
映像でしか拝見したことがありませんでしたが、ベガスの帝王に相応しいのある凄みのあるまなざしと存在感に圧倒されたことをよく覚えています。
今回のショーでは、同時に退団される如月蓮さんと麻央侑希さんが一緒に登場!
「スーパーマンの名前は?」というお約束のボケ箇所も盛り込み。
北翔海莉さんトップ時代からは、『GUYS AND DOLLS』よりネイサンとアデレイドの押し問答ソング「Sue Me」。
個人的に、ネイサン・デトロイトは紅さんの魅力を余すところなく使った素晴らしいハマり役であったと思います!
婚約者との将来を全然真剣に考えない賭博狂いの遊び人であるネイサンを、品を失わずコミカルで粋なギャンブラーとして演じることができたのは間違いなく紅さんの絶妙なセンスの賜物です。
相手役はもちろん、次期トップスターの礼真琴さん!久しぶりの娘役姿も超キュート❤
こんなに格好良ければ、14年間結婚してくれなくても待ち続けちゃうよなあと妙に納得した一曲でした。
また、2番手時代の小劇場公演『CATCH ME IF YOU CAN』からも2曲が登場。
この作品は映像が残っておらず初めて耳にしたため、サヨナラにあたっての書き下ろし曲のような新鮮な気持ちで聴くことができました。
デュエットの『Seven Wonders』は、綺咲さんを見つめて歌う紅さんの優しいまなざしと、「なるほど」「まあ!」などと相槌を入れる綺咲さんの可愛らしさにキュンとしました。
そしてソロ曲『Goodbye』は、なんと銀橋から客席にバラの花を一輪ずつ投げ渡すパフォーマンス!
まず投げるためのバラの花束を、涙を浮かべた礼さんが運んでいらしたことにもらい泣きしました……。
ただ歌うだけでなく、花という形にしてファンへの気持ちを届けようという演出は、紅さんの優しさや真摯さ、サービス精神などさまざまな素敵さの表れであったと思います。
ショー作品から
ショー作品は、直近の2作が登場。
『Killer Rouge』は、退団者の如月さんと麻央さんのお2人が銀橋で歌われました。
「紅に染まる」「紅く激しい」などの歌詞が多いわりに、お衣裳は青色(エストレージャス仕様ですね)という、サヨナラショーならではのごちゃまぜ感も満喫。
ベテラン星オトコ全開のギラギラパフォーマンスに熱く盛り上がりました!
『エストレージャス』は、如月さん・麻央さん・蓮月りらんさんの退団者3名と礼真琴さんが中心となって披露されていました。
礼さんは全国ツアーで同作を上演されたこともあり余裕の貫禄。
組替えでいらした舞空瞳さんと共にこの作品が観られたことも嬉しかったです。
紅さんから引き継いだ星組をこれからも盛り上げます!心配ご無用!という星組全体の勢いを感じることができました。
紅子さんトークタイム
忘れてはならず、また忘れることができないのが、星小路紅子さんのトークタイム!
数々のショーに登場され、台湾にも進出した紅子さんは、紅ゆずるさんのサービス精神とオモロさの結晶のようなものだと思います。
今回は、大劇場の至る所を「最後だから」と触りまくっていた紅子さん。
そして「ゆずるちゃんに代わってお礼を言います」と深々お辞儀をした紅子さん。
観ていた人はもちろん、劇場やスタッフの方にもかけていた言葉なのだと感じました。
こちらが感謝したい気持ちでいっぱいです……
ありがたやなんまいだ
最後の曲は、落語ミュージカル『ANOTHER WORLD』より「ありがたやなんまいだ」。
何を歌っても感動の涙に包まれるであろう空気の中、あの盆踊り調の前奏に驚きと笑いで客席がざわつくのがわかりました。
しかし考えてみると、生きていることへの感謝を込めて、大団円のなか歌われた、なにより明るいこの曲は、紅ゆずるの旅立ちを飾るに相応しいものだったと思います。
「生きてさえいればどんな苦労も乗り越えられる」という康次郎のセリフと、苦労を重ねて輝いた紅さん、そして組子の皆さんの姿が重なり涙が……と思っていたところ、最後に鳴った「チーン♪」にすべて持っていかれてしまいました!!
さすが紅さん!やられた!という気持ちです。
おかげさまで、笑顔で拍手をすることができました。
さいごに
涙を笑いで包みこむサヨナラショーは、最後の最後まで紅さんらしい明るさと優しさに溢れていました。
お別れは悲しいことではありますが、このショーが、最後の日までこちらも明るく応援し続けようという勇気を与えてくれたように思います。
ますます輝きを増す紅ゆずるさん、綺咲愛里さん、そして星組の皆さまに出会えたこと、「ありがたや~」です!
ライター:りかこ