宝塚歌劇団月組公演『ピガール狂騒曲』~シェイクスピア原作「十二夜」~よりの初日の幕が無事開けました。
レビューの『WELCOME TO TAKARAZUKA -雪と月と花と-』では長年宝塚歌劇団に多くの功績を残し続けた松本悠里先生の退団公演ということで大いに話題ともなりました。
106期生のお披露目公演ということで注目を集めていた今作では、いわゆる、ザ・宝塚!というようなストーリー構成ではなく、ちょっと変わった内容となっています。
と、言いますのも宝塚歌劇団と言えばトップスターとトップ娘役の恋愛ストーリーというのがセオリーのような感じなのですが、なんとこの『ピガール狂騒曲』ではトップスターである珠城りょうさんが男装の麗人という役どころなため、2番手の月城かなとさんとの恋愛ストーリーになっているんです。
男装の麗人だなんて宝塚の男役そのもののようなキャラクターのようにも思いますが、そんな男役である珠城さんが、更に本来は女性であるのに訳あって男装しているという頭が混乱してしまいそうな設定…。
そんな難しい設定をもサラッと演じることが出来るのはさすが演技の月組の申し子と言っても過言ではないでしょう。
月城かなとさん演じるシャルルは、珠城りょうさん演じるジャック(ジャンヌ)に惹かれていき、トップ娘役の美園さくらさん演じるガブリエルはジャックに一目惚れするわけですが、宝塚で2番手を含んだ三角関係はよくあるとはいえども、こんな三角関係は例を見ないのでは?と新しい扉が開きそうな予感です…。
そんな三角関係ではないのですが、過去にもトップスターとトップ娘役が恋愛関係にない作品というのが他にもありました。
たまには変わり種も見てみたい!という方のためにいくつかご紹介させていただきます。
花組公演 A Fairy Tale -青い薔薇の精-
つい最近の作品なので記憶に新しいかと思いますが、こちらは元花組トップスターである明日海りおさん演じる薔薇の精エリュと華優希さん演じるシャーロット・ウィールドンはキスシーンはあれどもラストで結ばれる…というようなストーリーではありませんでした。
おとぎ話の終わりはいつもハッピーエンドという歌詞にもある通り、ハッピーエンドには代わりありませんでしたが、そもそもが恋愛ストーリーに重きをおいた作品ではなかったので2人が結ばれることがイコールでハッピーエンドには繋がらないということなのではないかな、と考えられます。
シャーロットの人生の中には辛く悲しい時期もありましたが、世界的にも有名な『エリザベート』とはまた違う1人の女性の一生として成長していく過程が見られるという意味でもおすすめの1作です。
なにより薔薇の精役というのがここまでぴったりな方っているんでしょうか…とため息が思わず出てしまうくらい美しい明日海りおさんにも注目です。
月組公演 ラストプレイ -祈りのように-
2009年に瀬奈じゅんさん主演で上演された作品になります。
ご存知の方もおられるかと思いますが、この時期瀬奈さんには、いやゆる相手役という存在が不在でした。
トップ娘役不在時期というのは宝塚歌劇団の長い歴史の中で何度かありましたが、その間他の娘役さんを相手役として据えることもありますが、今作では2番手である霧矢大夢さんとの友情を軸に描かれた作品となっているため恋愛らしい要素がほぼありません。
孤児院で育った瀬奈さん演じるアリステアはピアノの英才教育を受け、世界的にも有名になっていきます。
ところがある日、演奏中にストレスと重圧から失神してしまいます。
その後、目が覚めるとピアノに近づくだけで具合が悪くなり、演奏できなくなってしまい、1人都会へ飛び出し偶然出会った裏社会で生きる霧矢さん演じるムーアの元に身を寄せることに。
これまでは天涯孤独で生きていくためだけにピアノにしがみついてきたアリステアは、自由きままに生活しているムーアと共に過ごすことで様々な刺激を受けていき、自らの意志で生きる道を見つけていく、というストーリーになっています。
正塚晴彦先生らしい全体的に暗いストーリーにはなりますが、恋愛ストーリーではないという宝塚なのにどこか違う斬新な作品にもなります。
雪組公演 ルパン三世 -王妃の首飾りを追え!-
原作をご存知であればなんとなくわかるかもしれませんが、ルパン三世と言えば様々な女性にうつつを抜かしつつも結ばれることなく終わる…というような結末を毎度迎えるというのが定石ですよね。
早霧せいなさんと咲妃みゆさんの大劇場お披露目公演ではありましたが、実は2人による恋愛ストーリーではなかったんですよね。
咲妃さんはマリー・アントワネット役であったため鳳翔大さん演じる夫であるルイ16世がいますし、ルパン三世役の早霧さんにも相手役とまでは言いませんが、原作の中では度々ペアとして扱われがちな大湖せしるさん演じる峰不二子がいました。
原作者であるモンキー・パンチ先生からも大好評を得ていたこの作品、これまでにはないマリーアントワネットのハッピーエンドという楽しいストーリーとなっていますので是非見てみてください♪
星組公演 怪盗楚留香外伝 -花盗人-
台湾公演で上演されたこちらの作品。
原作は台湾文学として人気である武侠小説が元になっています。
柚木礼音さんが演じるのは酒と女をこよなく愛し、冒険と正義のために盗みを働いては現場に香の匂いを留めて去る洒脱な怪盗 楚留香。
「酒と女をこよなく愛す」とあるのですが、実は原作でもこれといったパートナーを設けることはありませんでした。
とはいえ、宝塚では往々にして原作にはないオリジナルキャラクターを据えたり設定を変えたりすることがあるのでトップ娘役である夢咲ねねさんが相手役になるのだろうな~…と思っていたら、まさかのそこだけ設定に忠実となっておりかなり驚きました。
星組の次回作として発表されたロミオとジュリエットのようなストーリーなのですが、夢咲さん演じる左明珠と紅ゆずるさん演じる薛斌(せつひん)は両家が長年争っている間柄にありながらも惹かれ合う存在に。
なんとか結婚したいと考えた2人はとある方法を思いつきます。
ですがその場に居合わせた楚留香によりその企みがバレてしまい…と、いうミステリー要素も含んだ作品になっています。
奇しくも今は星組の次回作がロミオとジュリエットというベストタイミング!
ロミジュリの前にこちらの作品で予習してみるのもいいかもしれません♪
宙組公演 『神々の土地』~ロマノフたちの黄昏~
こちらも先ほどご紹介した月組公演「ラストプレイ -祈りのように-」の瀬奈さんと同様、当時トップスターであった朝夏まなとさんが相手役不在だった作品となります。
上田久美子先生の作品ということで、なんとなくお気づきかもしれませんがどこにもほつれのない美しくも哀しいストーリーになっています。
ロシア革命に翻弄される朝夏さん演じるドミトリー・パブロヴィチ・ロマノフは肯定の身辺を守るために転任を命じられます。
王朝を救う道を模索する彼に真風涼帆さん演じるフェリックス・ユスポフ公爵から皇帝皇后を操っていると噂されている愛月ひかるさん演じるラスプーチン暗殺を持ちかけられます。
そんな中、皇帝から星風まどかさん演じる皇女オリガとの結婚をすすめられるドミトリー。
しかしその心にはある女性の面影がよぎります。
相手役というわけではないですが、一応恋愛ストーリーが中心となっている作品にはなります。
しかしそこは上田先生、それだけでは終わらないというのがおすすめポイントでもあります。
見るだけで割と体力が削られる作品にはなりますが、是非見てみてください!
どの組でも意外とトップスターとトップ娘役の恋愛ストーリーではない作品があるものです。
バウ公演や外箱公演も含めると更に沢山ありますので、是非皆さんも探して見てみてください♪