宝塚歌劇団花組バウホール公演・ミュージカル「ノクターン ―遠い夏の日の記憶―」
森で出会った1組の男女。
こんなにも恋焦がれ、そして惹かれ合ったのに…。
今回は、柚香光さん主演「ノクターン」のオンデマンド観劇感想です。
■あらすじ
19世紀ロシア。
青年ウラジミール(柚香光)は、家族と共にモスクワの郊外にある別荘へとやってきます。
ある日、ウラジミールが森に狩りに出かけると、そこに数人の取り巻きと共に戯れるジナイーダ(華耀 きらり)の姿がありました。
出会った当初は、お互いにあまり良い印象ではなかったウラジミールとジナイーダでしたが、徐々に2人は惹かれ合うようになっていきます。
しかし、ジナイーダは貴族とは名ばかりの落ちぶれた家柄の令嬢。
対して、ウラジミールは名家の子息。
不釣り合い…そう思ったジナイーダは、「一緒にいることはウラジミールのためにならない」と、ウラジミールから離れていこうとしました。
そのような中で突如現れたある人物。
その人物は、ジナイーダの弱みに付け込み…。
■本編について
昼ドラがお好きな方はお好みかも?と思われるような作品です。
全体的には暗めのお話。
場面的には、森の中と家の中ぐらいで、これといって派手な演出はありません。
そんな限定的な中で動く人間模様。
愛するが故にもがき苦しむ者もいれば、他人の気持ちなど考えず、私利私欲のために動く者も…。
一見すると、ただの貴族のお坊ちゃまとお嬢さんの恋話かのような作品ですが、話が進むごとにドロドロとした世界に発展していきます。
■観劇感想
全体像
本作品のポイントは、ジナイーダが「魔性の女」というところ。
お話のテーマ自体は、「貴族のお坊ちゃまウラジミールと、落ちぶれた貴族のご令嬢ジナイーダの恋」なのですが、ジナイーダが魔性の女であるばかりに話がこじれていきます。
こじれ方は、まさかの展開。
まるで昼ドラでも観ているような気分になりました。
観劇前の本作品に対する筆者の予想は、「ウラジミールとジナイーダが恋に落ちたものの、ライバルが現れて一波乱…」といったところだったのですが、予想をはるかに超えまして…。
それもこれも、ジナイーダが魔性の女だったから?
それとも、ジナイーダの弱みに付け込んだ人物が全ての現況?
それとも…。
筆者は、ただただそれら一連の出来事が、ウラジミールのトラウマになっていませんように…と願うばかりです(ウラジミールは世間知らずのお坊ちゃまなので)。
ちょっと気になる登場人物
それでは、ウラジミールとジナイーダ以外の「ちょっと気になる…」そんな登場人物たちについてご紹介しましょう。
―ジナイーダの取り巻き達―
ジナイーダといつも一緒にいる男5人衆。
若者からおじさまと、年齢層は広そうでした。
本作品には、あまりフザけたような場面がないのですが、彼らが出てくる場面に限っては、いくぶんかフザけた雰囲気に。
5人衆にはそれぞれ個性があるのですが、面白さにかけてはルージン(天真みちる)が天下一品。
さすが天真さん…といった感じで、面白いを極めていてなかなかのものでした。
さて、「面白い」がいれば、「カッコいい」もいます。
中でも際立っていたのは、ベロヴゾーロフ(水美舞斗)。
軍人ということで、軍服姿で登場。
キレのあるダンスも披露してくれるので眼福でもあります。
彼の場合は、他の取り巻き達とはちょっと違うんですよね。
その違いがそう思わせるかどうかはわかりませんが…。
ベロヴゾーロフは、カッコいいのですが、ちょっとコワい…そんな印象を受けました。
―ウラジミールの父親―
父親のピョートル(瀬戸かずや)は、婿養子。
そのせいか、家(家柄)に対してあまり責任感がないようにみえます。
なので、ウラジミールには優しい良き父親なのですが、妻からすると…といったよう。
ウラジミールの父親ということで、あまり注視していなかったのですが、思いのほか活躍してくれていたのでビックリしました。
まぁ、活躍といってもいろいろ…。
どこでどのように活躍されるかは、お芝居をご覧になってからのお楽しみ。
2人の母親
ウラジミールの母親と、ジナイーダの母親。
同じ母親でもここまで違うのか…というほど、違う母親像にもご注目ください。
<ウラジミールの母親>
母親のオリガ(桜一花)は、夫がああなので(上記参照)家に対してかなり責任感があるようです。
まぁ、正式な跡取りが彼女なので仕方がないといえば仕方がないのですが。
ただ、ピョートルさえもっとしっかりしてくれていれば彼女の苦労ももうすぐ薄らぐはず…ではないかと。
貴族ということもあり、見た目は華やかな母親なのですが、その裏では気苦労が絶えません。
それは、息子ウラジミールに対しても同じこと。
母親であるがゆえ、その責任から苦労します。
母親としての葛藤、妻としての葛藤…どうすれば彼女の苦労は報われたのでしょうか。
―ジナイーダの母親―
ゼセーキナ侯爵夫人(五峰亜季)は、嫌な女。
1人の女としても、母親としてもよろしくない人です。
まぁ、それは彼女が貴族の出ではなく…というのもあるのですが、夫のせいもあるのでしょう(理由はお芝居の中でどうぞ)。
とにかくお金に、また、ジナイーダに対しても固執する毒親なのでもう大変。
オリガとは正反対の見事なまでに「嫌な女」ゼセーキナ侯爵夫人…これはこれで、お芝居のスパイス的要素。
五峰さんの演技力のすばらしさをご堪能下さい。
■まとめ
柚香さんバウ初主演作品「ノクターン」。
若い柚香さんを中心に、上級生が脇を固めるという何とも安定感のある作品でした。
内容的にはちょっと重めかとは思いますが、それでもグイグイのめり込めちゃうという不思議な作品です。
タカラヅカオンデマンドにて配信されていますので、興味のある方ははぜひご覧になってみてくださいね。