宝塚歌劇団宙組の娘役トップである星風まどかさんの専科への異動が決まっていましたが、この度専科から花組トップ娘役への就任が発表されました。
今回はそんな魅力的な娘役トップ星風まどかさんがヒロインを務める「アナスタシア」について語りたいと思います。
アナスタシアを彩る演者たち
ロシア革命で殺害された皇帝一家の末娘・アナスタシア(役:星風まどかさん)が、実は生きのびていたていたという「アナスタシア伝説」をもとに作られたブロードウェイミュージカルが、昨年上演の日本公演版を経て、宙組公演として上演されました。
登場人物についてですが、宝塚版ですので主人公は真風涼帆さんが演じるディミトリとなっています。
ディミトリは普段、詐欺師をして暮らしていますが、実は心はとても純真な青年です。
ロシア革命で処刑された皇帝一家の中で生き残ったマリア皇太后(寿つかささん)が賞金を懸けて孫娘を探していることを利用して、その報酬をもらおうと画策するところから話は始まります。
そこへ星風まどかさんが演じるアーニャが現れ、アナスタシアに仕立て上げて……といったストーリーです。
芹香斗亜さん演じるグレブはロシア政府の警視副総監であり、父親はアナスタシア達、皇帝一家の処刑に関わった人物で、もしアナスタシアが存命ならば彼は父親が果たせなかったことを実現しようと、彼女を追います。
ディミトリの詐欺の相棒は桜木みなとさん演じるヴラド。
ディミトリとともにアーニャに行儀作法や歴史を教え込み、皇女アナスタシアとして作り上げます。
最初はスリや詐欺などを働くディミトリやヴラドの様子が、主人公らしからぬ印象でしたし、アーニャに対しても賞金をもらうための道具にしか感じられなかったですが、どんどん三人のやりとりが楽しくなっていきます。
訓練していくうちに、ディミトリがアーニャを大切に思う気持ちや本当のアナスタシアなのだと信じる気持ちが見てわかり、記憶喪失だったアーニャも少女時代を思い出していく様子が丁寧に描かれます。
時折、挟まれる皇帝一家の華やかなりし時代、家族の楽しいひとときが煌びやかで、とても温かな分、処刑の事実は心が痛みます。ここで出てくる皇帝一家の美しいこと。
瑠風輝さん演じる当時の皇帝であるニコライII世の軍服の着こなしが素晴らしく、高貴です。
そして美風舞良さん演じるアレクサンドラ皇后の母親らしい優しさ、寿つかささん演じるマリア皇太后の威厳に満ちながらも孫娘への愛情。
寿さんは朝夏まなとさん主演の「神々の土地」でも同じマリア皇太后を演じていましたね。
愛海ひかるさんのオリガ、水音志保さんのタチアナ、潤花さんのマリア、天彩峰里さんの少女時代のアナスタシア、遥羽ららさんのアレクセイの五人がそれぞれ美しく、可愛い姿を見せてくれます。
雪組から組替えで、次期宙組トップ娘役が決まっている潤花さんがひときわ美しく目を引きます。
物語が進み、サンペテルブルグでのディミトリの少年時代の話はロシア革命での、アーニャ、アナスタシアの辛さとはまた違った過去で、厳しさを感じました。
パリへ行くお金が足りない、となった時にアーニャが実は!と持ってきた物やその展開には心躍ります。
ついにパリへと向かうディミトリ達一行ですが、列車の中での騒動などドキドキして、冒険といった気持ちが味わえます。
そしてパリへと到着し、いざ皇太后に面会、となりますが、ここへきてアナスタシアの偽物が多いことでマリア皇太后が心を閉ざしてしまうのが何ともハラハラします。
ホテルでうなされながらアーニャが夢を見て、何者なのか思い出すのが印象に残ります。
バレエ舞台の場面も美しく
バレエ鑑賞の場面、亜音有星さん演じるジークフリートと潤花さんのオデットも素敵なのですが、ここは優希しおんさんのロットバルトのしなやかさとともに併せ持つ跳躍力に見入ってしまいます。
皆が鑑賞している姿がメインとなり、劇中劇の形ですので仕方がないのですが、あまりに素晴らしく、このバレエをもっと見たい、と思います。
それくらい優希しおんさんのバレエが見事で、もっと前面で、と望んでしまいます。
男役の力強さを活かして女役に挑戦!和希そら
そしてもう一人、敢闘賞と思うのが和希そらさん演じるリリーです。
「ウエストサイド・ストーリー」でも女役でしたが、男役の力強さを生かした歌唱や役作りが非常に良く、印象的でした。
さて、マリア皇太后はアーニャを認めるるのでしょうか?アーニャは果たしてアナスタシア皇女なのでしょうか?
結果は見てのお楽しみなのですが、とにかく歌も素晴らしく、主役から脇役までとても素晴らしい歌唱と演技を見せてくれます。
物語も大人から子供まで楽しめる上質な童話で、家族というものや恋人、愛する者への思いが詰まった素敵な作品です。
この困難な状況下で心温まるミュージカルを皆さんに見ていただきたいです。
現在、東京宝塚劇場にて2月21日まで公演中です。