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雪組実力派トップコンビが有終の美を飾る「シルクロード~盗賊と宝石~」観劇レポ

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団雪組のトップコンビである望海風斗さん、真彩希帆さんのサヨナラ公演「シルクロード ~盗賊と宝石~」がストーリーをもったショー作品としてとても素晴らしかったので感想を書きたいと思います。

“盗賊と宝石”のサブタイトルが示すように、盗賊が手に入れた青いダイヤモンドが旅してきた物語がショーで展開されます。

古くは「ジャンプ・オリエント!」や「EXOTICA!」などのようにオリエンタルな香りのするショーで、テーマがはっきりしており、飽きることがなくわくわくします。

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「シルクロード~盗賊と宝石~」

セットも豪華で、青いダイヤモンドと砂時計が印象に残ります。

この砂時計、砂漠の砂でもありますが時間に限りがあることを想起させ、退団公演だということを痛感します。

まず登場するキャラバンの男の彩凪翔さん。

今回の退団者でもありますが、このショーの水先案内人のようで作品の世界に引き込みます。

続いて盗賊である望海風斗さん、彩風咲奈さん、朝美絢さん達がキャラバン隊から首飾りを奪い取った瞬間に宝石として真彩さんが出てきます。

そして盗賊、キャラバン隊、宝石が入り交じりどんどん物語が進み、舞台はペルシャ、インド、中国へと旅していきます。

ペルシャでは千夜一夜がモチーフで、過去も未来も混ざり合って、文明や人が交流するシルクロードの様子を表しています。

スリの望海さんが仲間たちといつものようにスリを働こうとすると、キャラバン男の彩凪さんに捕まり、黄金の奴隷として連れてこられたのがシャフリヤール王の朝美さんのもと。宝石の真彩さんと惹かれあいますが……。

この場面、望海さんが憧れる天海祐希さんのショー「EXOTICA!」での“金の花”を思い起こさせる手錠が小道具で使われます。

耽美的な場面ですね。

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インドは「BLUE MOON BLUE」で出てきたような神々が歌い踊り、ロケットも披露し煌びやかです。

 そして中国。“大世界(ダスカ)”と名付けられたこの場面。

「BUND/NEON」のようなチャイナ服での場面が男役同士での絡みがあったり、対立があったりとてもドラマチック。

妖しくて目も楽しませてくれます。

そして耳を楽しませてくれるのが真彩さんの歌。

「Lone Digger」というCaravan Palaceというフレンチ・エレクトロ・スウィングバンドの曲です。

このラップまじりの歌がとても格好良く、世界観を作り上げています。

歌詞に呼応した望海さんの振りも色っぽくて注目です。 

そして場面はどこかの、戦争を思わせる場面へと。

どこの国かというのははっきりとは表していませんが、ナチスを連想させる軍服と暴力の世界が繰り広げられます。

ここでの朝美さんの軍服姿の美しさが目を惹きつけます。

残忍な場面なのに美しいことに罪の意識を覚えます。

真彩さんが目隠しされた姿で登場し、この世界を嘆きますが望海さんが救済するがごとく皆を導いていきます。

この場面の音楽、有名な菅野よう子さんが作曲していますが、希望に満ちた澄んだ曲に心が洗われ、死へ、闇へと向かっていた世界から一気に希望に満ちていく様子がとても心地良いです。

そして、盗賊と宝石が二人で旅に出る姿はトップコンビの姿と重なり、胸が熱くなりますね。

フィナーレは旅の終わりであり、これまでの旅を回想するよう趣向が凝らされています。

盗賊の彩凪さんの「じゃ・あ・ね」は仕草も素敵です。

望海さんと娘役達との群舞は、男役としての魅力を引き立てます。

青い薔薇が尊く、そして初舞台「シニョール・ドンファン」の紫吹淳さんと同じ薔薇という小道具を使うのがとても粋な演出です。

続く男役達との群舞は男役の集大成を見た気がしました。

花組で培った黒燕尾姿は雪組で洗練されたものとなり、大変眩しかったです。

そして青い薔薇を彩風さんに渡すのが、トップのバトンを受け渡すこととつながり、二人の間に確かな絆が見えました。

デュエットダンスは「時には昔の話を」で、望海さん、真彩さんの実力あるコンビらしく、優雅で大人の雰囲気が。元々花組だった二人。こうして最後に踊っていて運命を感じます。

望海さん、真彩さんのトップお披露目作品「ひかりふる路」では芝居作品を担当した生田大和先生が、初のショーに挑戦した意欲作。

「盗賊と宝石」の歌詞に「共に歩んだ旅路の果てで君の最後を俺が奪おう。誰にも渡さない」と歌われますが、正にお二人へのオマージュが散りばめられ観客もその旅を一緒にしてきた気分になりました。

ここまで歌の上手いトップコンビもなかなか現れない中、それを生かした作品になっています。

世界観のあるストーリーショーが物語に引き込み、実力派トップコンビが有終の美を飾る様を目の当たりにし見応えのある作品で心が豊かになりました。