宝塚歌劇団雪組トップスター望海風斗さんと同じく、 2/17日に退団発表を、2/18日に退団記者会見を行われた真彩希帆さん。
入団当初から、天使の歌声と噂に名高かった真彩希帆さんですが、私が彼女の美しい声を初めて認識したのは、2014年明日海りおさんの大劇場お披露目公演、花組『エリザベート-愛と死の輪舞-』の美容師役です。
「たまごの白身にコニャックを三杯」と歌う彼女の、なんて可愛らしく締麗な声!
とても透明感のある歌声は、あのころから唯一無二でした。
花組から星組へ組替えをして、 真彩さんは『こうもり…こうもり博士の愉快な復讐劇…』で新人公演初ヒロインを務め、バウ公演『鈴蘭』と『燃ゆる風』でもヒロインを務めるなど、多くの経験を積み重ねてゆきます。
そして、雪組に組替えをした後、『Dramatic “S” !』では初めてのエトワールを務め、ちぎさんとゆうみちゃんの退団に大きな花を添えてくれた真彩さん。
たくさんの組替えをして、同じ花組であった望海風斗さんと共に雪組のトップとなる彼女の歴史は振り返ってみると、「忙しい宝塚人生だなあ」という感想が第一に浮かび上がってくるほどです。
ひかりふる路
さて、望海さんと真彩さんの大劇場お披露目公演と言えば、『ひかりふる路』です。
復讐に燃える貴族の娘マリーアンヌは、本当に真彩希帆さんにぴったりのお役でしたね。
望海風斗さんの退団会見では真彩さんのことを「私と共に走り、 闘って」 とおっしゃっていましたが、本当に、戦い抜く決意のある女が似合う真彩さん。
殺すために近づいたにも関わらず、ロベスピエールに惹かれてしまう葛藤。
彼に心を開いた後、待っていたのはロベスピエールが行う恐怖政治。
そのやり方についていけなくなってしまう時、ロベスピエールを止める方法は殺すことだけなのではと思い当たるものの、「愛した人を殺すな~んて出来~ない~わ!」という絶叫の歌。
生で聞いたときは鳥肌が立ち、テレビ画面越しで観ていても勝手に涙が流れてしまうあの場面。
こんな素敵な人がトップ娘役。
これから、どの公演にも主な出演者に必ず名前が載るだなんて。たくさんの場面が分け与えられるなんて。なんて素晴らしいことなんだろうと歓喜し、楽しみにしていた毎公演。
そこから、私たちの期待を裏切るどころか期待以上の、素晴らしい公演を披露してくださる真彩さん。
ファントム
真彩さんを語るうえで、『ファントム』を飛ばすことはできないでしょう。
まるで真彩さんへのあてがきなのではないかと思ってしまう、クリスティーヌというお役。
片田舎の、貴族社会とは縁遠い娘が、歌声ひとつでオペラ座に導かれ、オペラ座の怪人ファントムと出会う物語。
オペラ座の怪人ファントムが、声をかけずにはいられなかったほど、惹かれた声。自分で磨き上げたくなった原石。
疑うことを知らないクリスティーヌが、ファントムを先生として慕っていたことがよくわかる場面があります。
緊張していたクリスティーヌが頭の中で先生とのレッスンを思い出し、ドレスを身にまとう上流身分の方々に歌声を開花させる場面です。
皆、度肝を抜かれ、それからうっとりしてしまうシーン。
真彩さんはそれが成り立つ絶対的な美声を私たちに届けてくれました。彼女こそがクリスティーヌ。
その歌声を聞いてファントムが、シャンドン伯爵が恋に落ちることになんの疑問も抱かせない美しき声。
真彩さんは、芝居をしている皆さんだけでなく、その歌声で私たち観客をも惹きつけ、恋に落としました。
そういう、とても縞麗で、混じりけのない、涙が出るような歌声でした。
語りだしたらキリがない、真彩さんの素晴らしさ。
20世紀号に乗って
『20世紀号に乗って』は望海さんと真彩さんには珍しい、楽しくてハッピーなコメディミュージカルでした。
みんながあっちやそっちでやりたいことをやり、ファントムのパロディさえ行われる展開。
円盤発売がされていないのがとても口惜しいですが、望海さんと真彩さんが思いっきり歌って、企んで、笑って、愉快で、今思い出しても楽しすぎた公演です。
『壬生義士伝』も『ワンスアポンアタイムインアメリカ』も素晴らしさに変わりはなくともハッピーじゃない演目でした。
退団公演となる『fff-フォルティッシッシモー歓喜に歌え!』は果たしてハッピーエンドなのでしょうか。
あの悲劇を作り上げるのが誰よりお上手なウエクミ先生が、ハッピーなところが見当たらないベートーヴェンという題材で、どのように作り上げてくださるか、今からとても楽しみです。
歓喜に歌え!という副題を信じて、ハッピーエンドで終わらせてくれるのではないかとこっそり期待したいと思います。
退団発表はされてしまいましたが、まだ半年以上も宝塚に在籍してくださる望海さんと真彩さんを全力で応援したいねです。
そして、皆様が悔いなく観劇できるよう、流行りのコロナウイルスなどの蔓延が、すこしでも早く、終焉を迎えてくれたらと思います。