いよいよ11月6日から始まる、新たな花組トップコンビによる本公演お披露目作品『元禄バロックロック』。
先行画像やポスター画像を見ると、少しエキセントリックで妖しいメイクや衣装にワクワクが止まりませんよね!
公演解説を読んでみると…
『元赤穂藩家老クラノスケ(永久輝 せあ)』『コウズケノスケ(水美 舞斗)』『タクミノカミ(聖乃 あすか)』。
…ん?なんだか聞いたことのある名前が。
どうやらこれはあの有名な【忠臣蔵】を元にしたファンタジー物語のようです。
忠臣蔵って確か仇討ちの史実だったと思うけど、どんな内容だったかな…?という人のために、初日に先がけて忠臣蔵を一緒におさらいしてみましょう!
事の発端は浅野内匠頭の謎の恨み
私たちがドラマや映画で目にする『忠臣蔵』という物語はどうやらかなりフィクション要素が多く含まれているようで、史実では不明点が多く残っているそうなんです。
忠臣蔵の元ネタとなっている事件は、歴史上では『赤穂事件(あこうじけん)』と言います。
忠臣蔵と赤穂事件の違いを照らし合わせながらご説明していきたいと思います。
まず、事の発端となった事件現場は、江戸城内(現在の皇居)にあった松之大廊下(まつのおおろうか)。
現在でもその場所には石碑が建っています。
その場所で、赤穂藩(現・兵庫県赤穂市)の第3代藩主、浅野内匠頭(あさの たくみのかみ)が、「この間の遺恨覚えたるか」と言い放ち、幕府の偉い役人だった吉良上野介(きら こうずけのすけ)に背後から突然斬りかかります。
城内に大きな刀は持ち込めないので、脇差しと呼ばれる小さな刀での斬りかかりだったためか、吉良は肩先と額を浅く切っただけで命に別条のない傷でした。
しかし、これは今で言えば国会議事堂内での政務中に政治家が突然斬りかかるようなものであり、とんでもない罪です。
しかも、この日は当時の将軍・徳川綱吉が執り行う大切な儀礼の日であり、そんな大事な日を血で汚された将軍は大激怒。
当時は今と違って「喧嘩両成敗」の考えが主流だったので、普通なら両者にしっかり事情を聴取してから沙汰が決まるべきものだったのに、激怒した綱吉は超スピード死刑宣告。
つまり、浅野内匠頭にその日のうちに切腹を命じました。
加えて、なんと赤穂藩の取り潰しも即決定。これはかなり重い刑です。将軍はよっぽど腹が立ったのですねえ。
しかし、斬りかかるならせめて江戸城を出てからでもいいものの、なぜ我慢できずに城内で吉良に襲い掛かるほどの深い恨みを持っていたのか、理由は明らかになっていません。
忠臣蔵では、そのあたりを「浅野は吉良にいじめ抜かれていた」というような描写になっていますが、本当のところは不明なんですね。
討ち入りは主君の仇討ちではなかった?
当時のルールは喧嘩両成敗なので、本来ならば遺恨によって斬りかかられた吉良のほうにも何かしらのペナルティーがあってしかるべきなんですが、吉良にはひとつのお咎めも無しに、浅野が100%加害者!と決めつけられた上に勤め先を一瞬にして失ってしまった赤穂藩士たち。
青天の霹靂で衝撃の事実を知らされた藩士たちは途方に暮れて散り散りになりますが、「吉良、許すまじ」と胸に復讐の炎をたぎらせて、最終的に「吉良を討ち取ろう!」と残った浪士は47人。
そのリーダー格が、大石内蔵助(おおいし くらのすけ)です。
大石を中心に、1年以上もかけて入念に吉良上野介を確実に仕留めるための準備を始めます。
ある藩士はスパイとなって潜入したり、ある藩士は商人となって吉良邸に出入りしたり。
そしてついに決行の時がやってきます。
1703年、雪の残る1月明け方。
47人は吉良邸に討ち入り、吉良の首を見事討ち取り、その首を持ったまま9キロも離れた泉岳寺(東京都港区)に堂々とパレードし、主君である浅野内匠頭の墓前に吉良の首を備えて報告をします。
実は当時、仇討ちというのは法律的に認められていました。
情状酌量の余地があり復讐も致し方なし、と幕府から認められれば、罪にはならなかったということですね。
しかし、なぜかこの仇討ちは幕府から仇討ちと認められず、47人全員の切腹が言い渡されます。
このような事態をも覚悟しての討ち入りだったでしょうから、きっと47人は潔く宣告を受け入れ、各々切腹していったのだろうと推察します。
このような展開を聞くと、主君の無念を晴らすために自分の命を投げうってでも…!!という忠義に生きた感動話に思えますが、どうやらこれも事実はそうでもなかったかもしれない、という説もあるようです。
本当に47人が敵討ちのためだけに討ち入ったというわけでもなく、仕事を失った浪士たちが再就職先を得るための最後の手段として選んだのかもしれない、という説です。
この赤穂事件以外にもこの時代は全国各地でたくさんの仇討ちが行われており、見事仇討ちを成し遂げた武士たちはその後の再就職先を得ている例がかなり多かったそうな。
結局、浅野内匠頭がなぜ江戸城内で乱心したのか、なぜ大石をはじめとする47人が仇討ちをしたのか、大事なところは謎のまま…ということでした。
忠臣蔵をどうアレンジしてくるのか?元禄バロックロック
映画やドラマなどで見る『忠臣蔵』では、吉良上野介は悪役、大石内蔵助はヒーロー、という位置づけで表現されることが多いようです。
今回の『元禄バロックロック』での配役を見てみると…
コウズケノスケ…水美舞斗(みなみ まいと)さん
クラノスケ…永久輝せあ(とわき せあ)さん
タクミノカミ…聖乃あすか(せいの あすか)さん
なるほど。
やっぱりこちらもコウズケノスケがダーク寄りで、クラノスケが白っぽい役になりそうな予感。
他にも、47人の一人でかなりの剣客だったという堀部安兵衛であろうと思われる『ヤスベエ』(飛龍 つかさ)という役名があったり、将軍・綱吉の生母である桂昌院であろうと思われる『ケイショウイン』(美風 舞良)という役名も見られます。
あくまで『忠臣蔵アレンジ』ではあるものの、史実を知っていると「あの人をこう使ってくるか!」という違う楽しみ方ができると思いますので、いろいろ予習してから観てみるのもいいですよね。
ちなみにトップ柚香光さんが「クロノスケ」トップ娘役さんの星風 まどかさんが「キラ」。
主人公であるクロノスケとヒロインであるキラは完全オリジナルキャラだと思いますので、オリジナルキャラと実在の人物の絡め方も非常に楽しみです!