先日、博多座での月組公演『Dream Chaser』を観劇して、新たなる月組の第一歩が感じられました。
『Dream Chaser -新たな夢へ-』が、前トップスターの珠城りょうさん、前トップ娘役の美園さくらさんの持ち味と違った、月城かなとさん、海乃美月さんのカラーになっていたので驚きました。
この『Dream Chaser』は、珠城さん、美園さんのさよなら作品として宝塚大劇場、東京宝塚劇場で上演。
さよならの趣向が多く詰まっていました。
なので、最初は、思い出いっぱいの作品をすぐに再演するのは、気持ちが追い付かないとも思いました。
しかし、観劇してみると、それは杞憂だったのです。
“新たな夢”へとサブタイトルが加わったように、構成はほとんど同じながらも、トップコンビの新たなる未来に沿う作品に生まれ変わりました。
やはり、トップコンビのキャラクターの違いが大きいと思います。
お芝居もですが、ショーもそのスターさんの持ち味が大きく左右するものだと気づかされました。
それは、トップコンビのみならず、他のスターにも言えることで、今回は同時期にバウ公演も上演されていたので、それぞれポジションが変わり、いろいろな発見がありました。
場面で例えると、「情熱(スパニッシュ)」で、カリエンテを鳳月杏さん、アミーゴを暁千星さん、というのは本公演でも同じ配役だったのですが、アレグリアが美園さんから天紫珠李さんに変わったので、三人の関係にも変化が生じていました。
美園さんのアレグリアは、カリエンテの鳳月さんに心惹かれていく様子が力強く出ていましたが、天紫さんは少しずつ流れていく印象がありました。
本公演では珍しくトップ娘役がトップスターと絡まない場面ですが、博多座ではポジションの違う絡みで面白かったです。
「ミロンガ」は、本公演でこれもトップ同士が組まない場面で、こちらは珠城さんが登場。
海乃さんら娘役との艶っぽいダンスも見どころでしたが、鳳月さんや暁さんとの絡みもファンの間で評判となりました。
博多座ではトップコンビが揃い踏み。
月城さん、海乃さんにフォーカスされた場面になったのが特徴的です。
再演されるにあたり、トップの場面、2番手の場面をそのまま新体制に置き換えずに作り直したことが功を奏したことが多くありますが、その中に「I‘ll be back」があります。
もともと、当時の2番手・月城さんが率いる場面でしたが、今回は暁さんにバトンタッチ。
バウ公演で抜けたメンバーはそのままに、七城雅さんを加えて構成。
若々しく、暁さんのスター性と勢いを感じられる若手ならではの場面になっていました。
「Dawn(暁)」は、迫力のある場面ながら本公演では、中詰で終わりが迫っているという、心寂しさを感じましたが、博多座ではそうは感じず。
後半への勢いを感じたのは、やはりさよなら公演とプレお披露目という性格ゆえなのでしょうね。
「Hymn of life(生命の賛歌)」は、本公演では珠城さんと月組の組子との温かいふれあいが、胸に迫ってきて、さよならということを強く意識させられました。
博多座ではこれから月組を新たに作っていくという力強いメッセージを感じる場面です。
そして、「フィナーレ」では、フィナーレAでのフィナーレの歌手を本公演では風間柚乃さん、博多座では夢奈瑠音さんが務めたのですが、これは同じ曲なのか、と思うほど雰囲気が違いました。
風間さんが昭和歌謡などと言われていましたのは、ご本人の持つ色と芝居巧者ならではの貫禄ですかね。
上級生の夢奈さんの方が爽やかに感じたのはご愛敬。
デュエットダンスはコンビならではのカラーを感じました。
珠城さん、美園さんの情感と細かいテクニックの合わさったダンスも魅力的でしたが、月城さん、海乃さんのしっとり、柔らかなダンスも素晴らしいです。
このフィナーレはデュエットダンス以降が本公演とは構成がガラッと変化。
本公演はコンビを、特に珠城さんにスポットを当て、ファンに惜しむ時間を与えていて、毎回終わってほしくないという気持ちが押し寄せました。
博多座では趣向を凝らし、海乃さんを月城さんが引き留め……というところが新しいコンビらしくて良いです。
また、「Stand by Me」が使われ、メッセージが伝わってくる名場面となりました。
今回、芝居もですが、案外月城さんの男っぽさが際立っていたように思えました。
前トップスターの珠城さんの方がマッチョな印象ですが、相手役に向ける感情の生々しさなどで、そう感じるのかと。
海乃さんは月城さんの相性も良く、自立しながらも寄り添うのが微笑ましいです。
2番手昇格の鳳月さんは、ショーでも活躍し引き締め、暁さんはダンスだけでない魅力を発揮していました。
全体の流れを重んじる月組ですが個も充実し、全員揃う来年の公演は月組の勢いがすごいことになりそうです。