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上質なコメディ作品に。宙組「プロミセス、プロミセス」

観劇レポ

先日、梅田芸術劇場シアター・ドラマシティと、東京建物Brillia HALLで宙組、芹香斗亜さん主演の「プロミセス、プロミセス」が上演された。

ブロードウェイ・ミュージカル作品で、映画の「アパートの鍵貸します」をベースとしてニール・サイモンが脚本化し、ミュージカル化したものです。

当時、トニー賞の各部門を総なめした名作です。

ニール・サイモンと言えば、コメディ作品を数多く手がけ、宝塚歌劇でも「おかしな二人」や「第二章」でおなじみですね。

そして、この宙組公演。前評判にたがわず上質なコメディ作品に仕上がっていましたので、感想をお伝えしたいと思います。

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あらすじ

この物語の背景は1960年代のニューヨークで、主人公のチャックは真面目で人が良く、だけど冴えないサラリーマン。

おまけに思い人のフランには相手にされず、名前も覚えてもらえない始末。

上司たちに自分のアパートの鍵を貸す羽目になり、良いように使われ、挙句はフランと不倫の恋をする上司・シェルドレイクに貸すことに。

鍵を貸す代わりに出世を、と浮かれるチャックですが、思いを寄せるフランが、と思うと観ているこちらまでやるせなくなります。

主役の芹香斗亜さん

芹香さんは、翻弄されるチャックという役を見事に演じ、最高に面白いコメディを作り出しました。

主人公像としては、宝塚らしくないのですが、このチャックを芹香さんが演じると可愛く、応援したくなってしまいました。

フランとデートの約束をしても、シェルドレイクとの約束が優先され待ちぼうけ。

だけれども、そんなフランを好きでいるチャックがいじらしいです。

コメディが性に合っているのか、間が良くテンポも良く、軽やかで客席はクスクスと笑いに包まれました。

歌も軽やかで心地よかったです。

フランに向ける笑顔が優しく、包容力を感じさせる演技でこの公演を成功に導きました。

ヒロイン 天彩峰里さん

ヒロインのフラン役は天彩峰里さん。

よく考えると上司と不倫をするヒロインとは、ある意味すごいです。

しかし、上司のシェルドレイクを妻があると知っていますが、一途に愛し、彼の言う「妻とは離婚する」というのを信じ、結果裏切られて自殺未遂をするような純粋な部分がよく出ていました。

時代背景を思えば、この時代の女性はこうやって男性次第で幸せになれるかどうか、というのを痛いほど感じさます。

フランも彼女なりの幸せを探す中で、チャックといる時の明るい笑顔が印象的です。

天彩さんといえば歌唱力ですが、今回この作品のレベルを上げたのは彼女の歌が良かったということが言えるでしょう。

和希そらさん

シェルドレイク役の和希そらさん。

不倫をしながらもフランに一筋ならば可愛いものですが、「妻と別れる」という言葉とは裏腹に、家庭でも良いお父さんを演じるのが、フランならずとも傷つけられますね。

しかし、憎いことに、このシェルドレイクってば格好良く、魅力的なのです。

そりゃあ、フランでなくとも惚れ込んでしまいますし、秘書の暴露によるといろいろと前歴もあるようで。

これが宙組最後となった和希さんですが、雪組でも活躍を願います。

この作品、他にも個性的な愛すべきキャラクターがいっぱい。

専科・輝月ゆうま

チャックの隣の部屋に住む医師のドレファス役に輝月ゆうまさん。

月組から専科へ異動して初めての出演で、一幕は顔出し程度ですが、二幕は大活躍。

チャックが代わる代わる女性を連れ込んでいると勘違いしているのが可笑しく、軽妙なやりとりが流石です。

この前まで楠木正成役でシリアスな役をこなしていましたが、今回のコミカルな芝居も上手いです。

芹香さんより下級生ですが、こういった役はお手の物で、更なる活躍が期待されますね。

留依蒔世さん

当初からカール・クーベリック役を演じることが決まっていた留依蒔世さん。

愛海ひかるさんの休演に伴い、女役のマージ・マクドゥーガル役も務めました。

女役?と発表時は思ったのですが、このマージ役が最高だったのです。

妙にセクシーで、でも気の良さがあって楽しくて。

チャックと意気投合してアパートに来たものの、フランが……という場面も、笑いを誘いました。

若翔りつさん

そして、大きな役ではないですがエッド・ドービッチを演じる若翔りつさんも目を引く芝居です。

一幕のドービッチももちろんですが、二幕の別の役もメインではないのに目が離せなくて。

パーティーの場面で、日替わりでボーイやウェイターにちょっかいを出すお姉さま(?)は、ついつい見てしまいました。

笑える中に切ない恋物語があって、とても良くできた作品です。

不倫が中心にあり、ドロドロした部分もありますが原田諒先生の手腕で軽やかに見せたのはお見事で、舞台装置がおしゃれで尚且つ転換がしやすいという合理的なものでした。

そして宙組のチームワークで年末のひとときを過ごすのに相応しい作品になりました。

主演の芹香さん、良い作品過ぎてもしや?と去就を噂されてはいましたが、とりあえず一安心。
この成果をもってステップアップしてほしいと願うばかりです。

それだけの実力とスター性を感じさせる舞台でした。