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月組『応天の門』キャスト別観劇レポ

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団月組平安朝クライム『応天の門』。

若き日の菅原道真の事は、原作は現在も連載中の灰原 薬氏のコミックスです。

宝塚歌劇で初の映像化、舞台化されます。

和物でありながら謎解きミステリーという新作ならではの新しい試みに期待が高まります

以前タカラヅカスカイステージ「ミライ演出家」の番組で宙組『HiGH and LOW』の装置監修の大橋泰弘さんが野口幸作先生と共に舞台設計の綿密な演出家として田渕大輔先生の名前を挙げられていたので、どんな舞台装置かとても楽しみでした。
 
冒頭映像がダイナミックで観客をあっという間に平安時代へ連れて行ってくれます。

映像ならではのスピード感と浮遊感が素晴らしいです。

和物でありながら謎解き要素やセリフがとても現代的なので時代劇が苦手でも抵抗なく観れる演目でした。

各所に笑いの場面が多くて月城かなとさん演じる若い菅原道真公と海野美月さん演じる昭姫、鳳月杏さん演じる在原業平、彩海せらさん演じる紀長谷雄、彩 みちるさん演じる白梅のかけ合いがコメディかな?と思うぐらい面白く、息がとても合っていて開幕直後とは思えない絶妙な間が素晴らしかったです。

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月城かなとさんは変幻自在の男役

前回の月組『グレート・ギャッツビー』では初恋に執着する実業家でその男の情念が凄まじかったです。

今回は相手役の海野美月さんとは恋愛関係ではありません。

ある事件をきっかけに知り合い一緒に謎を解き明かしていきます。

頭脳明晰だけどその分理屈っぽい若者を軽やかに演じられていました。

ギャッツビーは色気ダダ漏れでしたが、今回はむしろ色気ゼロで、そのコントロール力がすごいです。

大好きだった兄の死が政治や世の中に対する不信感の原因かなと思いますが、昭姫や在原業平との関わりの中で少しずつ閉ざしていた心を開き自ら未来に向かっていく姿が清々しいです。

色気といえば鳳月杏さん!

今作品では色気と恋愛パートは鳳月杏さんが一手に引き受けておられました。

原作では在原業平と藤原高子( 天紫 珠李さん)の関係は若い頃の恋でお互い過去の思い出となっていると個人的には解釈しましたが、宝塚版では若き在原業平(英かおとさん)と高子(蘭世 惠翔さん)のシーンが多く、まだ想いを残しているようにも思えました。

歴史上でもプレイボーイとされる在原業平のイメージをより鮮やかにふくらませた鳳月杏さんの在原業平でした。

現代で言うと警察官の長である警視総監という立場ですが、真実を明らかにしようとする菅原道真にこれ以上深入りしてはいけないと捜査を中断させる(いろんな意味で)大人の男の人でした。

底抜けに明るい紀長谷雄役の彩海せらさん!

前回『グレート・ギャッツビー』で新人公演主演の彩海せらさん。

今作品の紀長谷雄は菅原道真の同級生でちょっとコミカルなお役です。

風間 柚乃さんは孤独な藤原基経役

藤原基経は、菅原道真の亡き兄吉祥丸(瑠皇りあさん)と交流があり人間的な気持ちも持ちつつ、感情を外に出さない策略家です。

菅原道真と在原業平を取り巻く人々の楽しく暖かいわちゃわちゃ感と対照的に孤独感が半端なく、ビジュアルも原作通りのクールで冷徹な風貌をそのまま再現されていて、風間柚乃さんの役者としての幅の広さを感じました。

ラテン グルーヴ

『Deep Sea -海神たちのカルナバル-』
はラテンで熱かった!

暗闇からいきなりライトがついて全員が登場するシーンのことを「チョンパ」というそうです。

2月号の『歌劇』にも書かれていましたが、実際に目にすると本当に華やかで嬉しい! 

舞台は海野美月さんのニックネームのくらげの映像があったり、だんだんと海の奥深くに潜っていく感覚でした。

海底から地球の核のマントルまで行き着きます。

立春は過ぎたもののまだまだ寒い日が続きますが、ショーは月組の熱さが伝わってきて、真夏の太陽並みに熱くなりました。強烈な赤の衣装がザ・ラテン!でした。

個人的に一番のおすすめシーンは中盤の秘密の花園のシーンです。

風間柚乃さんの歌唱力が素晴らしかったです。

月城かなとさんと鳳月杏さん(女装)のダンスシーンの後ろで風間柚乃さんが歌い上げるのですが、男役の低音から普段娘役さんが歌う高音まで一人で歌われているのです。

その音量と響きに鳥肌が立つほどでした。

ライター・さんなん