スポンサーリンク

雪組『Lilacの夢路』プロイセン王国って…なんだっけ?徹底予習!

宝塚歌劇についての雑記

スポンサーリンク

プロイセン王国って…なんだっけ?

彩風咲奈(あやかぜ さきな)さん、朝美 絢(あさみ じゅん)さん、和希そら(かずき そら)さんはドロイゼン家の兄弟という役柄です。

その「ドロイゼン家」とは、「プロイセン王国のユンカー(騎士領所有の貴族)」とあります。

まず、プロイセン王国から説明していきましょう。

プロイセン王国とは、今のドイツ連邦共和国ができる前にあった王国です。

現在のいわゆる「ドイツ」、ドイツ連邦共和国が国家として成立したのは、あの「ベルリンの壁崩壊」からです。

ベルリンの壁が崩壊され、東西ドイツが正式に統一されたのは、1990年10月3日。

現在のドイツというのは割と新しい国、ということになりますね。

ドイツがある中央ヨーロッパというのはとにかく侵略の歴史が長く、ドイツが東西に分かれてしまう前にも、いろいろな利権を巡って領土を奪い合ったり、宗教戦争やナチスドイツの台頭など、かなり過酷な状況にありました。

現在のドイツになるまで、多くの君主や政党が入れ替わり立ち替わり、ドイツ周辺の土地を巡って争ってきました。

その中で長くドイツの北部を統治してきた国が、プロイセン王国です。

「プロイセン王国」という名で正式な国家として存在していたのは、1701年ー1918年の間です。

公演解説の時代背景には「19世紀初頭、ドイツ」 とあります。19世紀初頭のヨーロッパといえば、ナポレオンが強く政権をふるっていた時代です。

ナポレオンがセントヘレナ島へ流罪となり、ヨーロッパは1814年から「ウィーン体制」という新しい政治体制に流れ、プロイセン王国も新たな領土を獲得するなど、権勢を誇っていました。

ちなみに、世界史の授業で「普仏戦争」という単語を聞いたことを覚えていませんか?

あの「普」がプロイセン王国のことです。

つまり、プロイセン王国とフランスとの戦争ということですが、この戦争では大国フランスにプロイセン王国が圧勝しているので、本当に強大な国だったんですね。

ユンカー(騎士領所有の貴族)ってなに?

さて、そのプロイセン王国の貴族が彩風さんたちドロイゼン家というわけですが、普通の貴族ではなく、わざわざユンカー(騎士領所有の貴族)と書かれています。

ユンカーって一体なんでしょうか?普通の貴族と何が違うのでしょうか?

まず、一般的に言う「貴族」とは。『ベルサイユのばら』など、宝塚の作品にも貴族はたくさん出てきますね。

貴族とは、国家によって身分と収入が保証されている特権を持っている家柄、という感じでしょうか。

現在もその特権を持っていて悠々自適に暮らしている身分の人は世界的に見てもほとんどいませんので、私たちにはちょっとピンと来ませんが…

貴族=ヨーロッパ、というイメージがありますが、日本で言えば蘇我氏や藤原氏、源氏物語などに登場する人物も多くが貴族です。

主人公の光源氏も貴族なので、日中に働きもせず女性のところに通ってばかりですしね(^^;)

生まれつき、労働の必要もなくお金持ちが約束されてるなんて!と思いますが…

王族や皇族と同じように、貴族も結婚や恋愛、教育、宗教などに本人の意思は反映されずに窮屈な部分はかなりあったと思いますので、自我をしっかり持っている人が貴族の家に生まれてしまうと、それはそれで不幸な面もあったように思います。

では、ユンカー(騎士領所有の貴族)とは。

江戸時代の大名や武家と同じように、国のトップから土地を与えてもらう代わりに戦争時に兵力として協力した人たちがいました。

その土地が「騎士領」です。そしてその土地を使って農奴を雇い農場を経営して、農作物を作らせていた人たちのことをユンカーと言います。

当時、ペストの大流行などで農作物を作る農民が不足していたヨーロッパ諸国。

農作物が高く売れて大きな収入を得て権力も得たユンカーたちは農奴たちへの支配を更に強め、絶対王政・プロイセン王国を支える階級として、上級官僚などにも進出していきました。

大金持ちであり、奴隷も多く抱えるユンカー達にプロイセン王国は支えられていたと言っても過言ではなく、ヨーロッパの中でプロイセン王国を強国へと押し上げたのがユンカーとも言えます。

ユンカー=騎士の末裔

江戸時代で言う「悪代官」ではありませんが、ユンカーの中には私利私欲のために悪事を働く人もいたことでしょう。

しかし、ユンカーの先祖はプロイセン王国に忠誠を誓う騎士たちです。

ヨーロッパにおける騎士とは、日本における「武士道」に似たような倫理観を持っています。

勇気、正義感、忠誠心、博愛精神、礼節など、己の行動規範を厳しく律して弱者を守る、まさに「Knight(ナイト)」です。

その騎士道に恥じないような教育を受けているのがドロイゼン家、ということではないでしょうか。

『Lilacの夢路』の公演解説に「イギリスの産業革命」とありますので、ユンカーたちもこの時代は農場経営というユンカーの本職から離れ、いろいろな産業に着手したのでしょう。

そしてユンカーであるドロイゼン家も実業家としての道に進んでいこうとしている過程のお話、と予測してみました。

こうして歴史からしっかり紐解いていくと、登場人物たちの気持ちにも少し理解が深まりそうですよね。

演出家である謝玉栄先生の前作、『ELPIDIO(エルピディイオ)』は意外にもコメディー要素を含んだ作品でした。

今回の『Lilacの夢路』はどのような作風なのか、非常に楽しみです。