スポンサーリンク

宝塚歌劇団の深刻な演出家不足?

宝塚歌劇を楽しもう

殿堂入りしていらっしゃる5名の先生は会社で言えばもう「監査役」のような立場だと思いますので、最前線で作品を作っていく、という立場はもう卒業されたと判断します。

すると、正塚晴彦先生以下が「現役」となります。

デビューしたばかりの若い演出家も登板が少なくて当然ですので、町田菜花先生以下も除くと、正塚先生から谷 貴矢先生までを「現役バリバリ」と判断し、考察を進めることとしましょう。

スポンサーリンク

藤井大介、働きすぎ問題

この一覧表でまず目に飛び込んでくるのが、藤井大介先生の「10回」という1人だけ2ケタ台の登板数!

そのうち4作は再演ではありますが、6本もショーの新作を作るのはかなりの「産みの苦しみ」があると察します。

なぜこんなにも藤井先生ばかりが…?と思えば、「ショー専門の演出家がほぼいない」という事実が浮かび上がります。

今回カウントした2021年~2023年のみにおいて言えば、ショーだけを発表した演出家は3名のみ。

  • 岡田敬二
  • 中村一徳
  • 藤井大介

岡田先生は「殿堂入り」ですのでノーカウントとして、野口幸作先生も基本的にはショーを作ることが多いので、「ショー作家」と呼べる演出家は実質3人のみ、ということになります。

藤井先生が10作なのに対し、なぜ中村一徳先生が4作なのかは、きっと「人気作を作れるかどうか」というシビアな問題もあるのでしょう。

それにしても倍以上というのはちょっと差がありすぎるので、本来はもっとヒット作を書けるショー作家が育っていなければいけなかったのではないでしょうか。

もちろん宝塚の魅力はお芝居にもありますが、「何度でも通いたい!」と思わせるのは、ショー。

つまり、質のいいショーが書ける演出家の豊富さは宝塚の客入りに大きく影響するのに、今現在でショーが書ける演出家がこれだけというのはなかなかキビシイ状況。

そう思うと、2008年に退団された荻田浩一先生という人材は本当に貴重でした。

先日の文春騒動の際に、荻田先生は公式ツイッターにて「宝塚を愛してるから、離れた」と呟いていました。

上田久美子先生もそうですが、人気演出家に「ここから離れよう」と思わせてしまうような宝塚の体質が、非常に心配です。

登板数が少ない中堅演出家問題

次に表から見えてくるのは、やけに発表作が少ない中堅演出家の面々。

2年間で植田景子先生が2作、鈴木 圭先生が1作。

中堅ではありませんが、まだ現役のはずの谷 正純先生が2作というのもちょっと心もとない数字です。しかもそのうち1作は再演なので、2年間で新作は1作のみ。

同期の石田先生は6作品も担当しているので、これは大きな違いです。

植田景子先生は若い頃に演出留学までさせてもらっているので、かなり劇団も期待をかけていたのでしょう。

ご本人も、もともと宝塚の大ファンで5回も演出家試験に応募したほどの根性の持ち主です。

それなのに、2年間で新作1本、再演1本というのは、どう考えても少ない。

何か体調不良でも…?と思ったのですが、先日のバウホール公演『舞姫』のときにお姿をお見かけした際にはいつもと変わらぬ元気そうなご様子でした。

そして鈴木 圭先生。

こちらは数年前に生徒さん(93期生)との交際が発覚し、その後はそのままご結婚されましたが、やはりあまり体裁が良くないということだったのか、しばらく作品を担当することからは離れていたようです。

それがようやく明け、この7月に復帰が決まりました。

これを皮切りに、またどんどん作品が発表されるといいのですが。

谷 正純先生ももうかなりの大御所とはいえ、同期や先輩の演出家たちが2年間で5回、6回と登板していますので、正直もっと頑張っていただかないと…という感想を抱いてしまいます。

近年、座付き演出家ではない謝珠栄先生の起用が増えているのは、担当作品が増えない先生たちの分なのでしょうか。

ちなみに、中堅演出家の一人であった木村信司先生はどうやら定年退職されたようです。

期待が集まる若手演出家たちと、残る不安

では、未来の宝塚の客入りを左右する若手演出家たちはといえば…

ここ数年、女性演出家の活躍が目立ち、天才演出家の上田久美子先生なきあと、ファンの期待を背負っています。

さきほど挙げた「ショーが書ける演出家不足問題」についても、栗田優香先生がショーデビューを予定していますので、大注目です!

栗田先生はデビュー作からずっとヒット作を連発しているエースですので、ここで「ショーもすごくいいじゃん!!」となれば、もう「ポスト上田久美子」と言っていいでしょう。

一方で気になるのが、町田菜花先生。

2019年にめでたくバウホール作品『PR×PRince』でデビューを飾ったものの、それ以来、作品の発表はありません。

デビューを飾っても若手演出家は演出助手や新人公演担当が仕事の中心でしょうから、年に何度も作品を発表するわけにはいきませんが、それにしても町田先生が2年間で0作品というのは少なすぎます。

後輩たちはこの2年間で2回、3回と登板しているので、何かしらの事情があるのでしょう。

まだ2024年の公演スケジュールは何も発表になっていませんが、そろそろ2作品目を発表されるといいですね。

本来ならば、宝塚でまだまだ活躍していたであろうこんな面々。

  • 木村信二
  • 荻田浩一
  • 児玉明子
  • 上田久美子
  • 原田 諒

この大きな穴を埋めるため、宝塚歌劇団は演出家を絶賛募集中のようです。

宝塚の演出家は、他の舞台の演出家とは求められるものが全く異なると言えます。

「スミレコード」の厳守や、男役優位のキャスティング、「この生徒を使ってほしい」という劇団からの要求、等々。

ショーにおいては、コンサートでもライブでもなく、「レビュー」を作るというのは非常に独特な作業です。

だからこそ、宝塚歌劇団というのは「座付き演出家制度」を採用し、先輩演出家のもとで舞台作りを一から学び、この特殊な仕事内容を身につけていくのでしょう。

つまり、何年、何十年もの時間をかけてじっくり育てる必要があります。

どうか今の若手演出家たちにもっとたくさんの活躍の場を与えていただき、文春騒動のようなことが二度と無いよう、大切に育てていってほしいですね。

※正しくは木村信司先生でした。訂正してお詫びいたします。
※町田菜花先生は産休・育休中とのことでした。