宝塚歌劇団雪組の全国ツアーが発表になりましたね。
何とあの雪組のレジェンド麻実れいさんの退団公演「はばたけ黄金の翼よ」を再演するというのですから、驚かれたオールドファンの方々(もちろん私も)も多いと思います。
34年前のこの作品、麻実れいさんが退団されてすぐ、後任トップ平みちさん主演で全国ツアーがありましたが、その後は一度も再演されることはありませんでした。
今日は過去の記憶を辿りながら「はばたけ黄金の翼よ」についてご紹介したいと思います。
「はばたけ黄金の翼よ」とは?
「はばたけ黄金の翼よ」は1985年、麻実れいさんのサヨナラ公演として阿古健・脚本・演出で上演されたミュージカル作品です。
原作は粕谷紀子先生の劇画「風のゆくえ」で、中世の北イタリアが舞台です。
主人公は勇敢で冷徹な湖の国の若き領主ヴィットリオ・アラドーロ、そしてヴィットリオを父の仇と憎みながらも彼と結婚させられてしまう隣国の姫クラリーチェ。
敵同士の関係にある2人が、次第に心を通わせ結ばれるまでを描いた、ロマンあり、活劇ありのラブ・ストーリーです。
原作の劇画も、宝塚にぴったりなドラマティックな作品なので、観劇前に一読されるのも良いかもしれません。
「はばたけ黄金の翼よ」初演の出演者は?
主役のヴィットリオを演じた麻実れいさんは、男役の美学の全てを体現されたような稀有なトップスターでした。
当時「宝塚おとめ」には身長173センチとありましたが、実はもう少し高かったという噂もあります。
男性顔負けの長身と長い脚、彫りの深い顔立ちと華やかな立ち姿、よく響く低音ヴォイスと背中に滲む深い哀愁、そして溢れるような色気と包容力、挙げ始めたらキリがないほど魅力満載のターコさん。
日本人離れした容姿に中世イタリアのコスチュームがとてもよく似合っていました。
この作品には宝塚にしては珍しく濃厚なラブシーンが登場するのですが、ターコさんの色気がダダ漏れで心臓がおかしくなるのではないかと当時本気で悩んだ記憶があります(笑)
ヒロインのクラリーチェを演じたのは当時期待の新進男役、一路真輝(当時は一路万輝)さん。
もともとターコさんにはゴールデンコンビと謳われた遥くららさんという素晴らしい相手役がいました。
しかし遥さんはその2作前に退団していたため、サヨナラ公演のヒロインにはターコさんが直々に一路さんを希望されたそうです。
後に男役トップとなる一路さんですが、当時は一路さんのクラリーチェがとにかく可愛くて・・・
一路さんは素晴らしい歌唱力の持ち主で、その上娘役さん顔負けの愛くるしい容姿ですから、劇団も放っておくはずがありません。
他の組のトップ娘役就任の話も持ち上がったと聞きます。
このまま男役を続けるか、娘役に転向するかで悩んだ一路さんはターコさんに相談。
ターコさんは一路さんに「男役でしょう」とアドバイスして下さったとか。
一路さんは初演「エリザベート」でトートを演じた男役さんです。
もしターコさんの一言がなく、一路さんがそのまま娘役に転向していたら、宝塚版「エリザベート」は誕生していなかったかもしれませんよ(大袈裟?)。
「はばたけ黄金の翼よ」には、ヴィットリオ 、クラリーチェ、そしてヴィットリオの幼馴染で彼に影のように寄り添う冷酷なファルコ、クラリーチェの腹違いの兄で敵国の領主ジュリオが登場します。
何とこの主要四役、今思えば歴代の雪組トップスターが演じているのですよね。
ファルコは当時二番手でターコさんの後任トップとなった平みちさん。
ジュリオは平さんの次のトップ杜けあきさん。
そして杜さんの次のトップがクラリーチェ役の一路さん。
改めて振り返ると、何とも豪華な競演だったのですね。
「はばたけ黄金の翼よ」全国ツアーの配役は?
さて、次回雪組全国ツアーでの配役はどうなるでしょうか?
望海風斗さんと麻美れいさん、最初はあまり共通点が見当たらなかったのですが、先述した麻実れいさんの魅力は、大体どれも望海さんに当てはまることに気がつきました。
美しさ、包容力、男の色気、そして背中に滲む男の哀愁。
濃厚なラブシーンや決闘シーン、そして拷問シーンまであるこの作品、さまざまな場面を望海さんがどんなふうに演じられるか期待しています。
ヴィットリオの黒髪ウェービーロングの髪形も楽しみですね。
真彩希帆さんのクラリーチェ。
少女漫画の主人公とはいえ、新婚初夜に夫を短剣で刺そうとしたり、男勝りなところもあるヒロインです。
たくさんの役を経験してこられた今の真彩さんだからこそ表現できる芯が強くてチャーミングなクラリーチェになることでしょう。
さて、ファルコとジュリオは誰が演じるのでしょう?
候補としては彩凪翔さん、朝美絢さん、永久輝せあさんだと思いますが、この中のお1人は彩風さん主演の「ハリウッド・ゴシップ」の方に出演されるのではないかと思います。
個人的には、ファルコは彩凪さん、悪役風味のジュリオは新境地を開拓して欲しい永久輝さんを希望しますが、この3人でしたら誰がどの役でも絶対素敵だと思います。
小柳奈穂子先生の新脚本、新演出で蘇る「はばたけ黄金の翼よ」。
今から公演が楽しみです