緊急事態宣言3度目の発令で4月26日から5月11日の間、全ての宝塚歌劇団の公演も中止となってしまいました。
ただ、かろうじて予定されていた花組の大劇場公演と宙組の梅田芸術劇場公演はライブビューイングのみの公演が決定しました。
公演が完全に無くなる訳でなく、ホッと胸をなでおろす瞬間もありました。
しかし、これまでクラスターを発生させないようにさまざまな努力をしてきた劇場への突然の「無観客開催」の要請には理不尽を感じずにはいられません。
なんとか観劇できた、東京での『ホテル スヴィッツラ ハウス』はそんな私たちへの気持ちを代弁してくれるような作品でしたので、是非、お時間に余裕のある方は5月5日16:30のライブビューイングを観てほしいな、と思いました。
ネタバレをしない範囲で、ご紹介します。
中立国、スイスのホテルで繰り広げられるストーリー
舞台は第二次世界大戦のまっただ中、ナチスの脅威が広がるヨーロッパで中立国の姿勢をつらぬくスイスの高級ホテルです。
お話は、真風涼帆さん演じる主人公、ロベルトがホテルに潜入し、ナチスのスパイを探すことが軸になっているちょっとサスペンスっぽい内容。
容疑のかかっている登場人物の中で誰がスパイなのか?
いろいろミスリードも用意されているので、それだけでもワクワクして観られますし、ロベルトと潤花さん演じるバレエダンサーのニーナが心を通わせていく様子もときめきながら楽しめます。
芸術がいかに人生において大切か
しかし、今回おそらく、作中で一番大切に描かれているのは、
「芸術・舞台、そしてそれを愛する人々への賛歌」だと感じました。
ナチスの脅威の中、思うようにできない公演、表現者たち。
ユダヤ人だというだけで収容所に送られてしまう芸術家。
「いつまでこの状況が続くのか?」といった人々の憤り。
観劇していた頃は緊急事態宣言で再び公演が止まることがあるなんて考えていなかったので、昨年の緊急事態宣言で宝塚公演が全て止まった時の気持ちを思い出しながら観ていました。
そして、いかに芸術が世間の動きの中で犠牲になりやすいか、80年も前のヨーロッパが舞台ながら、かなり実感を持って観ました。
登場人物たちは皆芸術を愛していて、守ろうと真剣に取り組んでいます。
ロベルトも諜報員ながら、母親がバレエダンサーであり、舞台芸術への愛をしっかりと持った人物に描かれていました。
芸術がいかに人生において大切か、登場人物たちの言動に宝塚ファンは強く共感できる内容になっているのではないでしょうか。
桜木みなとさん演じるユーリー・バシリエフが美しい!
また、今回もどの登場人物も魅力的なのですが、桜木みなとさん演じるバレエダンサー、ユーリー・バシリエフがとても美しくて目がはなせませんでした!
所作の全てが美しい、ストイックで神経質なバレエダンサー。
2月までアナスタシアで陽気なおじ様を演じていたとは思えない変わりっぷり!
イライラしながらタバコを吸う仕草は近寄りがたい雰囲気がありつつとてもかっこいい反面、信頼できる人の前(ネタバレになるかもしれないのでぼかします)だと笑顔でストレートに愛情を表現するギャップがまた、素敵です。
ライブビューイングだとどのくらい映るのかわかりませんが、公演中ついつい桜木さんをオペラで追ってしまいました。
開襟の深いシャツも綺麗に着こなされてて、男性的でありながら妖艶で、あまり宝塚の男役像としてスタンダードではないとは思うのですが、とても魅力的な役だと思いました。
ビジュアル的にも楽しめます!
内容的にとてもおすすめな『ホテル スヴィッツラ ハウス』ですが、スタイルの良い宙組さんのスーツものというだけでも胸躍りますし、植田先生のこだわりのつまった美しい舞台セットやお衣装も素晴らしかったです。
「美しいものがみたい!」という欲求を十分に満たしてくれる作品でもあると思うので、是非気になった方はライブビューイングを観てくださいね。
ライター:霧村さえ