宝塚歌劇団花組公演では古代ローマ初の皇帝を題材とした「アウグストゥス ー尊厳ある者-」が上演されています。
東京宝塚劇場では、いよいよA日程のグループになり、終盤となってきましたが、まだまだ観劇していない方もいらっしゃいます。
ということで、まだ観劇していない方に向けて軽い予習を・・・。
アウグストゥスって人名?難しいの?と思われがちですが、興味深いストーリーでした。
この時代、この登場人物と言えば2006年月組で上演の「暁のローマ」があります。
この時はオクタヴィウス(※「暁~」ではオクタヴィアヌス)=北翔海莉さん、アントニウス=霧矢大夢さん、カエサル=轟悠さん、カッシウス(※「暁~」ではカシウス)=大空祐飛さん、ブルートゥス(※「暁~」ではブルータス)瀬奈じゅんさん、と錚々たるメンバーで演じられました。
「暁~」のようにカエサルとブルートゥス(ブルータス)のドラマが描かれることは多々ありますが、初代ローマ皇帝とは言え、意外とその名を知ることも少ないです。
初見、事前に調べなくても面白かったですが、2回目の前に少し調べたら話がわかりやすかったです。
なので、少し頭の隅にあった方がより一層面白いのではないかと思います。
軽く予習しましょう
最初に述べてしまうと、アウグストゥスとは副題ともなっている「尊厳ある者」の意味でオクタヴィウスを称した名称です。8月を英語でAugustと言いますがこちらの語源でもあります。
舞台となるのは紀元前46年。
主人公·オクタヴィウスは、ガイウス·ユリウス·カエサルの大甥です。
カエサルは皆さんご存じですよね。
英語ではジュリアス·シーザーと呼ばれ、シェイクスピアの戯曲にもなっています。
ちなみにこの頃の日本はというと第10代天皇·崇神天皇が治めていたと伝わっています。
さて、この物語はオクタヴィウス(柚香光さん)が大伯父·カエサルの凱旋式に参加するべく、遊学から帰る途中から始まります。
途中賊に襲われますが友人で補佐役でもあるアグリッパ(水美舞斗さん)の機転で難を逃れます。
カエサルがポンペイウスに勝利し宴を催している最中、そこへポンペイウスの娘であるポンペイア(華優希さん)が切りかかるのですが、これを止めるのがオクタヴィウスです。
オクタヴィウスは真の和解を示すには彼女を放免することだと訴えます。
アントニウス(瀬戸かずやさん)はカエサルの部下であり、ブルートゥス(永久輝せあさん)も同じく部下でしたが、カエサルを裏切っていました。
カエサルの愛人であり、エジプトの女王であるクレオパトラ7世(凪七瑠海さん)も祝祭に招待されており、市民は長い戦いに終止符を打ったカエサルを称賛して熱狂します。
しかし、同じ理想を抱いたポンペイウスと袂を分かち戦うことになり、共和制を謳いながら独裁者の必要性を口にするカエサルの言葉にオクタヴィウスは心の中に疑念を抱きます。
また、カエサルの政治によっての共和政崩壊を恐れたブルートゥスらがカエサルを亡き者にし、そのブルートゥス達をアントニウスを……。
カエサルの後継者にはオクタヴィウスを指名しており、就任します。
オクタヴィウスが理想の政治を行う中でアントニウスとの関係、またアントニウスとクレオパトラの仲、それに伴う対峙とストーリーがめまぐるしく展開されます。
見どころ
トップ就任から2作目で余裕の出てきた柚香さん、そしてトップ娘役として円熟味を増しつつ退団の迫る華さんのやりとりにとても見応えが。
どちらかといえばカエサルの動に対し、静のオクタヴィウスで受け身になりがちですが、こうやって真ん中で進めていく姿にトップとしての成長を見ました。
また、同じく男役として完成した感のある瀬戸さんの芸の凄さを実感します。
上級生ならではの迫力を感じますね。
軍事には少し弱いながらも平和を愛しアウグストゥスと称された初代皇帝オクタヴィウスと、脳筋ながらも軍事に長け支えるアグリッパの補い合う関係が同期である柚香さん、水美さんにも重なり、今後の花組にも楽しみを見出しました。
余談ではありますが、病弱なアウグストゥスは、後継者として健康なアグリッパを中継ぎにし、その後アグリッパの子である自分の孫たちに帝位を継承させることを計画し、自分の娘と結婚させたとか。
登場人物の名前が覚えづらいという声もありますが、初代皇帝がどうやって理想の世を作ろうと歩んだのか、今新しい花組を形成しつつあるこの時期、思いをはせて見るのも興味深いです。
また、ストーリーに沿いながら、オクタヴィア(音くり寿さん)の芝居巧者ぶりや、マエケナス(聖乃あすかさん)やトレボニウス(希波らいとさん)の若手男役美丈夫勢を観察するのも楽しみです。
難しそうではありますが、引き込まれる作品ですので肩ひじ張らずに楽しめたら、と思います。