宝塚歌劇団花組がいよいよ11月6日に初日を迎える『元禄バロックロック』。
花組トップ娘役・星風まどかさんは宙組のトップ娘役から花組のトップ娘役を歴任するという珍しい人事が行われ、話題を呼びました。
柚香 光さんと星風さんという新しいトップコンビを迎えての最初の本公演となったのが、『元禄バロックロック』で、先行画像やポスターの斬新さに期待が高まっています。
その元禄バロックロックの担当演出家は、谷 貴矢先生。宝塚歌劇団に「谷先生」はお2人いらっしゃるので、若いほうの谷 貴矢先生はヅカファンの間で「ヤング谷」「若谷」なんて呼ばれています(笑)
ちなみに、ベテランのほうの谷 正純先生とは血縁関係はまったくないそうです。
谷 貴矢先生はこの『元禄バロックロック』が大劇場デビュー作となります。
そこで、谷 貴矢先生というのはどんな先生なのかちょっと深掘りしてみたいと思います!
東大出身!独自で劇団立ち上げ!
谷 貴矢先生といえば、有名なのが「東大出身」という肩書き。
宝塚の座付き演出家はみんな一様に高学歴。
慶応に早稲田、同志社大…しかし、東大出身の先生というのはあまり聞いたことがありません。
この時点で既に異彩を放っていますね。
しかも、東大在学中の2004年にご友人たちと『イケメニアン』という劇団を立ち上げ(独特なネーミングセンス!)、すでに演出家としての道を歩まれていたそうな。
特技はバイオリンだそうなので、なんとなく「いいご家庭の出身」という感じがしますよね。
しかし、その環境に甘んじることなく自分の力だけでどこまでやれるか挑戦してみたい!という気概が素晴らしいです。
テーマ【AIと人間】で衝撃のデビュー!
宝塚の演出家というのはまず助手として作品に携わったり新人公演の担当をしたりしてデビューを待ちます。
ですので、聞いたことのない名前を公演プログラムのスタッフ欄で見かけるとヅカファンは「新人演出家さんが入ったな」となんとなく頭にインプットしておきます。
谷 貴矢先生も「また谷先生という名前の先生が入ってきたんだな。どういう作品を作る先生なんだろう」とコアなファンは注目していたであろうと思います。
そしてついに迎えたデビュー作が『アイラブアインシュタイン』。
今やいろいろな場面で私たちがお世話になっている【AI】人工知能と人間との共存をテーマにした作品でした。
なんとも東大出身らしい、IQの高そうな感じがしますよね(笑)
しかも、ご自身で劇団を立ち上げていくつもの作品を生み出した経験のある谷 貴矢先生ならっではな感じがしますね。
今までになかった斬新な切り口に、賛否両論はありましたが強い印象を残したデビューとなりました。
【和モノ×テクノロジー】シリーズがスタート
次なる作品は、雪組に組替えしてきたばかりの朝美 絢(あさみ じゅん)さん主演のバウホール公演『義経妖狐夢幻桜(よしつねようこむげんざくら)』。
ここから現在まで続く、「和モノ×現代テクノロジー」の融合シリーズが始まっていきます。
『義経妖狐夢幻桜(よしつねようこむげんざくら)』は、タイトル通り、源義経が主人公となっています。
しかし、なぜか役名は全員カタカナ。
この流れは『元禄バロックロック』までずっと受け継がれていきます。
それが一体どういう意味なのか…谷 貴矢先生はその答えを明言してはいませんが、なんとなく「歴史上の人物に似ているけどこれはあくまでファンタジーなので似て非なる人物」という解釈でいいのかな?なんて。
公式ホームページで谷 貴矢先生はこの作品をこのように回顧しています。
“”「源義経=チンギスハン説」を最初に知った中学生の頃、荒唐無稽なその説には、子供心に大きなトキメキを感じたのを覚えています。そのトキメキに対し誠実にチャレンジした結果、この作品もファンタジー性を多分に含むものになりました“”
アイラブアインシュタインと同じように、かなり素っ頓狂な設定に賛否はまた分かれましたが(笑)、2作目で既に確固たる『貴矢ワールド』を爆誕させていました。
シーボルト事件×宇宙?!
その次に発表した作品は月組の鳳月 杏(ほうづき あん)さん主演の『出島小宇宙戦争』。
これは幕末に起きた「シーボルト事件」が題材となっています。
シーボルト事件とは、国外への持ち出しが絶対にご法度となっていた日本地図を、医者として来日していたシーボルトが持ち出そうとした事件のことです。
シーボルトに日本地図を渡してしまったのが、鳳月さんが演じた「カゲヤス」こと、天才天文学者の高橋景保。
しかし、この作品ではその事件をなぞったというよりも、あくまで登場人物を参考にしただけで、結構オリジナル性が強かった印象です。
なにせ、カゲヤスが宇宙人調査に繰り出すわけですから…素っ頓狂レベルはさらに高まっていきます!(笑)
シーボルト役を演じていた風間 柚乃(かざま ゆの)さんの風貌がかなり宇宙人っぽかったので、出島=宇宙人に征服された島ということだったのでしょうが、やはり賛否は分かれました(笑)
忠臣蔵を貴矢流に調理すると?!
宝塚歌劇団にはたくさんの演出家の先生がいらっしゃり、古典作品も含めてたくさんの作品がありますが、その中でも谷 貴矢先生はなかなか異彩を放つ作品を作る先生だということですね。
でも、座付きの演出家をたくさん抱える宝塚ならではの楽しみ方がここにあります。
いろいろな個性の生徒さんがいて、お気に入りの「ご贔屓さん」を探すことが楽しいように、「ご贔屓演出家」を探すこともまたヅカファンならではの楽しみ方。
ついに大劇場デビュー作となった『元禄バロックロック』は忠臣蔵をモチーフにした作品のようですが、一体どのように「貴矢流」に変えてくるのか、とても楽しみですね。