先日、宝塚歌劇団星組「柳生忍法帖」の新人公演が東京宝塚劇場で行われました。
このコロナ禍に於いて星組公演の新人公演が東京で行われたのは紅ゆずるさんのサヨナラ公演「GOD OF STARS-食聖-」以来です。
この作品は山田風太郎氏の原作を大野拓史先生が脚本化し演出したもので、スケールの大きな作品として好評です。
柳生十兵衛が、黒幕・芦名銅伯に対峙。
会津藩主・加藤明成と会津七本槍と呼ばれる家来達に悪逆非道な行いをされた堀主水の娘・お千絵達の復讐のため、剣術指南をする物語。
宝塚歌劇で娘役がこのようにメインで殺陣をして、復讐劇を繰り広げるのは珍しいのではないかと思います。
対して男役のメインは十兵衛達の敵役として登場。
大きく立ちはだかり、こちらも見どころです。
柳生十兵衛など主要人物は実在の人物ですが壮大なSF日本物といった趣で、外連味があり見ごたえのある作品。
新人公演もコスチュームプレイの星組の伝統を受け継いで見映えが良く、面白い作品に仕上がっていました。
主演・天飛華音
今回、主演の柳生十兵衛役を天飛華音さんが務めました。
「GOD OF STARS-食聖-」以来2回目の主演です。
前回の東京新人公演ではマイクトラブルがあり、そこで舞台度胸を見せつけましたが、今回も本役・礼真琴さんのアクションに負けじとキレの良い動きで魅了。
眼帯で片目は隠されていますが、しっかりとした目鼻立ちの容姿が映え、華やかなオーラが真ん中向きですね。
登場シーン、本来隠れて銀橋に出てきますが、マイクがガサゴソと鳴り、そこに注目がいったのもご愛敬。
お千絵達に剣術指南をするのも飄々としていながらも、七本槍達への憎しみを滲ますところに人間味がありました。
また、ゆらに好かれながらも、女性のあしらいが上手くないのも可愛さが出ています。
一番成長が見られたのは歌唱面かと。礼さんかと思うほど低音が良く響いて素敵な声になっていましたし、気持ちよく伸びて上手くなりました。
スターとしての資質が揃ってきてこれからが楽しみです。
初ヒロイン・瑠璃花夏
ヒロインのゆら役は瑠璃花夏さん。初ヒロインとなりました。
出番が少なく、十兵衛との関係は敵方の娘という難しい役どころ。
しかも、十兵衛への思慕が急展開ですので、観客を納得させるのは至難の業だと思います。
本役の舞空瞳さんのように、出ているだけでヒロインなのだと思わせる力はまだ不足していますが、華やかな容姿が目を引きます。
一見、悪女のようですが父・芦名銅伯の夢を実現するため加藤明成の子を宿し、従順な娘として振る舞うのが健気です。
そこから自分の意思を通し、十兵衛に心寄せていくところが見えました。
難しい役柄だとは思いますが、丁寧に演じていて今後どういった役を見せてくれるか期待しています。
芦名銅伯役 碧海さりお
芦名銅伯役は碧海さりおさん。「眩耀の谷 ~舞い降りた新星~」では新人公演主演ですが東京は中止に。
「ロミオとジュリエット」では愛をWキャストで務めました。
本役・愛月ひかるさんの妖しさと比べてしまいますが、そこは新人ながらに大きく見せようという努力が伝わる演技でした。
双子の天海大僧正役も務めましたが、こちらの方がニンに合っているのではないかと。
堅実な演技が出来るので演技派として楽しみです。
咲城けい
七本槍の一人、漆戸虹七郎役は咲城けいさん。凰稀かなめさんに似た面差しで、非常に華やか。
ゆらとの関係が垣間見え、強さもあり、ただ悪いというだけでないことを感じさせました。
声良し、口跡良しで実力もありますね。
今後のスター候補発見と思える好演で、将来主演をするのではないでしょうか。
夕陽真樹
他には沢庵和尚役の夕陽真樹さんの演技が達者で印象に残りました。
十兵衛を導きながらも、尊重し、どこか自由な感じがとても良かったです。
奏碧タケル
また、平賀孫兵衛役の奏碧タケルさんも目を引く若手ですね。
柳生宗矩役の颯香凜さんも父の威厳と慈愛があり、いつもながら上手いと思わされました。
星咲希
お千絵役の星咲希さんも熱演。
敵を討ちたいという気持ちがひしひしと伝わり上手い役者で、これから要チェックですね。
稀惺かずと
多聞坊役の稀惺かずとさんは愛嬌があり、流石の華やかさ。
全体的にこのような作品は新人公演ではキャラクターを作るのも衣装を着こなすのも難しいだろうと思いましたが、健闘していました。
本公演よりもストレートに伝わる部分もあり、十兵衛と娘役達の敵討ちが清々しく、ワクワクするような舞台となっていました。
そして、挨拶の時の誠実さも気持ち良く、これからの星組の未来も明るいことを感じた新人公演でした。