7月11日に大劇場千秋楽を迎える、花組公演「巡礼の年~リスト・フェレンツ、魂の彷徨~」
今回は「巡礼の年」の観劇レポートと共に、東京公演に向けての見所も紹介したいと思います。
柚香光さん×永久輝せあさんのラブシーンは必見
制作発表会で「印象的なラブシーンがある」とのお話があり、誰もが柚香さんと星風さんのラブシーンだと思っていたはず。
ですが、幕が上がってみると、ラブシーンの組み合わせはまさかの柚香さんと永久輝さん!
しかも物語の冒頭だったので、急いでオペラを構えたのを覚えています。
ソファに寝転がる柚香さんに、自分が吸っていたタバコを咥えさせる永久輝さん。
柚香さんの何の抵抗もなくそれを受け入れる姿に、2人の関係が出来上がっていることを感じさせられました。
ピアノにもたれかかり不協和音を鳴らしながら密着し、永久輝さんをソファに押し倒しながら暗転していくまでの流れは一ミリたりとも目が離せません。
冒頭にしてクライマックス?とまで思ってしまう胸キュンシーンでした。
柚香光さんの弾き語りと横顔に酔いしれる
端正な顔立ちで、世の女性を虜にしてきたピアニストのフランツ・リスト。
そのお役はまさに柚香さんにぴったり。
柚香さんの細い指から繊細に奏でられるピアノは、何度見ても息をひそめて聞いてしまいます。
また“左右の顔を見せるためだけに2台のピアノを用意した”というエピソード通り、柚香さんの横顔を思う存分堪能できますよ。
水美舞斗さん率いる「芸術家」チームが愛おしい
「巡礼の年」には作曲家、画家、小説家、詩人など、フランツを取り巻く芸術家たちが沢山出てきます。
水美さん演じるショパンは言わずとしれた天才ピアニスト。
共に切磋琢磨する姿や、ショパンの言葉の端々から伝わるフランツへの想いに、ついつい“れいまい”を重ねてしまいます。
新人公演で主演を射止めた侑輝大弥さんも、この芸術家チームの一員。
おおらかでにこやかな画家、ウジューヌ・ドラクロワを演じています!
表情豊かな侑輝さんの演技に注目です。
柚香光さん、星風まどかさんの結末はハッピーエンドだったのか?
お互いに相手がいながら惹かれあい駆け落ちをした、フランツと伯爵夫人のマリー。
パリを飛び出し、「ただの男と女」として愛を育みました。
しかし、フランツはパリで自分が受けていた称賛の声をどうしても忘れることができません。
その承認欲求は膨らみ続け、ついにパリに戻ることに。
その後もマリーを置いて他国へ飛び出し、地位や名誉を得ることに執着してしまうのでした。
そんな2人が再会を果たしたのは、革命が終わってしばらくしたころ。
フランツが子供たちにピアノを教えている、という噂を聞きつけて、マリーがフランツの元を訪ねます。
マリーは歩き方も話し方も随分ゆっくりになっていて、年齢を重ねたことが分かります。
一方、フランツは以前と変わらない様子ではありますが、どこか落ち着いていて以前の「欲」に駆られていた青年時代から成長したように見えます。
2人は若かりし頃を懐かしみ、「君が僕を救ってくれた」と感謝の気持ちを伝えあうのです。
フランツとマリーは、余生を共に過ごすことになるのか?
はたまた、また別の道を歩むことになるのか?
2人の今後は描かれておらず、決定的な描写もありませんでした。
完全なるハッピーエンドとは違うかもしれませんが、2人の未来が明るいものであることを願いたくなる、そんな終わり方だったと思います。
「巡礼の年」は、回想シーンや、現実なのか空想なのか?と戸惑ってしまう場面も多く、一回目の観劇ではなかなかストーリーを把握するのが難しかったように思います。
受け取り手の想像によって、いかようにも解釈できるなと思いました。
何度も観劇を重ねる内に、フランツやマリー、ショパン、ジョルジュの心情も少しずつ分かるようになり、見れば見るほど深まるお芝居だと感じました。
それも演者の皆さんが日々、そのお芝居を深めていっているからだと思います。
残りの大劇場公演、そして東京公演でも更にパワーアップした舞台を見せてくれることを期待しています。