宝塚星組が11月12日から宝塚大劇場で公演する『ディミトリ~曙光に散る、紫の花~』。
11月は、礼 真琴(れい まこと)さんが星組トップスターに就任してちょうど丸3年になります。
今回の作品も「コスチュームの星組」と言われるのに相応しい豪華なポスターに仕上がっており、期待が高まっています。
公演解説を読んでみると、『13世紀のジョージア(旧グルジア)を舞台としたドラマティックな歴史ロマン』とあります。
う~ん、正直言ってジョージア(グルジア)と言われてあまりピンと来ない人のほうが多いのではないでしょうか。
一体ジョージア(グルジア)がどのような歴史のある国なのか、登場人物は今で言うとどこの国の人なのか、観劇前に少し予習してみましょう。
ジョージアってどこにあるの?
まずその呼び方ですが、「ジョージア」が英語由来の発音、「グルジア」がロシア語由来の発音だそうです。
2008年に日本とロシアが武力衝突したのをきっかけに、2015年から日本では英語由来の「ジョージア」で統一されているようです。
ジョージアは、トルコとロシアに挟まれた小さな国です。
【出典:外務省HP】
フィギュアスケートの羽生結弦選手が初めて金メダルを獲得した、ソチオリンピック。
あのソチがジョージアとの国境近くにありますね。
ソチオリンピックってロシアの中でもこんなに西の端で行われていたんですね!
国の面積は日本の5分の1なので、北海道くらいの大きさでしょうか。
小さな島国である日本よりもずっと小さな国ということになります。
日本で有名なグルジア人は…現役力士の栃ノ心(とちのしん)くらいでしょうか。
小さな国であるゆえ人口も少なく、日本の人口が1億2千万人に対して、ジョージアは400万人!
そこから日本に渡って有名になるジョージア人というのはさすがにそれほど多くいませんよね。
ジョージアは戦渦の歴史を持つ国
さきほどの世界地図を見ても分かるように、ジョージアの近隣国はロシア、ウクライナ、イラン、トルコ東部…我々日本人からすると「ちょっと怖いエリア」と言えます。
アジア圏とヨーロッパ圏の境目となるこのエリアってどうしてこんなに紛争が多いのでしょうか?
それには2つの理由が思い浮かびます。
まずは、「便利な土地だから」。
各国の経済発展に欠かせないものは貿易です。古代も今も、各国は自国に足りないものを輸入で手に入れてきました。
現代日本で言えば、ガソリンが最も身近で必要不可欠な輸入品でしょうか。
そのガソリンは主に中近東やロシアから輸出されて各国に運ばれていきます。
「シルクロード」は絹を運んだ道だからそう呼ばれているように、古代から様々な物がいろいろなルートを通って行き来しています。
ジョージアがあるこの場所はまさにその物流ルートに都合のいい場所なので、いろんな国が「ここが欲しい!」と奪いにやってきました。
そのたびに命がけで闘ってきた歴史がジョージアにはあります。
2つ目の理由は、宗教が交わるところだから。
ジョージアがあるエリアはキリスト教勢力とイスラム教勢力が混在している地域になります。
つまり、宗教戦争が起きるたびにジョージアも紛争に巻き込まれることになります。
日本のように島国ではなく地続きなので、侵入されやすいということもあるでしょう。
そしてやはりこの現代でもロシア・ウクライナに近いエリアということで緊張は続いています。
ちなみに、現在のジョージアの国旗はこちらになります。
宝塚でジョージアの物語を上演するということで、日本に駐在しているジョージア大使がツイッターで大変喜んでくれているようですね!
『ディミトリ~』でも主要キーワードとなる主都トビリシ
古代でも主要都市として狙われ続けてきた、ジョージアの主都、トビリシ。
トビリシはジョージア語で「温かい」という言葉「トビリ」に由来するそうで、トビリシを建設したヴァフタング1世がこの町を建設した際に温泉を発見したことから名付けられたそうです。
【トビリシの街並み】
きっと『ディミトリ~』の物語の中でもこの「主都トビリシ」というワードが出てくるでしょう。
それほど、ジョージアの歴史を語る上で大変に重要な場所です。
写真中央にそびえたつ、立派な大聖堂。つまり、ジョージアはキリスト教の国になります。
多くの紛争の中で古代・中世の建造物はほとんど破壊されてしまいましたが、舞空 瞳(まいそら ひとみ)さん演じるルスダンの母、タマラ(白妙なつ)時代はジョージア史上最大の繁栄を極めていた治世で、多くの修道院や教会が建てられたそうです。
国が栄えていたということは国内が安定し、文化・学術も栄えます。
そのおかげでタマラ時代には割と多くの文献資料が制作されていて、そのおかげで娘・ルスダン時代のことも現代に伝わり、原作である小説『斜陽の国のルスダン』創作にも繋がっています。
ルスダン(舞空 瞳)が女王となったジョージアに、ルーム・セルジューク朝の王子ディミトリ(礼 真琴)が人質として連れてこられ、ハンサムなディミトリを気に入ったルスダンが、彼を夫として迎えます。
ディミトリのほうもイスラム教からキリスト教に改宗してまでルスダンとの結婚を選びます。(ちなみにディミトリのほうが年下だそう)
しかし、これは決定的な史実とまでは言えないようで、ディミトリについての詳しいことは分かっていないようです。
この「ディミトリ」という名前もキリスト教徒用の名前として改名され、元のイスラム名は不明だそうです。
しかし、むしろその「詳細不明」こそが作家の創作意欲を掻き立てるわけで、この名作の誕生に至ったわけですね。
原作の小説『斜陽の国のルスダン』はそのタイトルにあるように、主人公はルスダンのほうです。
それを宝塚用にディミトリを主人公にした、ということは多少のオリジナル性は出てくるでしょう。
若くて可愛らしいイメージの舞空 瞳さんがどのように女王としての威厳を見せてくれるのか、その威厳すらも包み込むディミトリの大きな愛を礼 真琴さんがどのように表現するのか。
充実期に入った星組に暁 千星(あかつき ちせい)さんという新しい顔が加わってどのような化学変化が見られるのかも楽しみですね!