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柚香光ルドルフの素晴らしさはここ!

宝塚歌劇についての雑記

先日東京宝塚劇場にて花組さんのうたかたの恋を観劇致しました。

オープニングで真っ赤な絨毯の上で身を寄せ合う花組のトップコンビを観た時に、『あ、これぞまさに、うたかたの恋のルドルフとマリーだ。』そのくらいに一瞬にして説得力の高すぎる二人が登場しました。

自分のなかにある『うたかたの恋』に対するイメージが良い意味で打ち破られたようなそんな気分でした。

幕開き既に悲壮感が漂っている。

なんなら開演アナウンスの柚香さんの声色が既に死を匂わせている。

儚くも美しい淡い恋物語ではない、闇に葬られ八方塞がりになり行き場を無くしてしまった二人のどうしようもない末路がそこには既に成立していました。

うたかたの恋という作品は初演より何度も何度も再演を繰り返し今日に至っております。

今回の小柳奈穂子先生による新しい演出のうたかたの恋は従来の作品より時代背景や政治的な要素が多く含まれており夢々しい悲恋物語というよりはある種生々しく血生臭さを感じるような演出でした。

また、ルドルフ皇太子のぼんやりとした人物像がはっきりと明確に表現されているため彼自身の政治的な立ち位置や境遇、精神的な闇の部分や繊細さ、いつも死が隣り合わせになりながら生きている様がリアルに再現されていてラストへの話の流れがあまりに自然でストレスが無く構成が素晴らしかったです。

それも柚香さんという役者が人間の根底にある汚い負の部分を大切にされ、細かく解釈し表現するスキルが優れているからかもしれません。

感傷的で儚く心に大きな苦しみや傷を背負いながら生きているルドルフのなんとも表現し難い退廃的な美しさ。

柚香さん唯一無二の耽美な男役像があまりにルドルフとリンクして溜息が漏れてしまう程です。

あんなに格好良く悩ましい柚香ルドルフならどんな女もみんな奈落の底に堕とされても仕方がないと思わせる存在そのものが罪のような役でした。

その皇太子ルドルフに恋に堕ちるまどかマリーのピュアピュアな可愛いさ。

最近大人なまどかちゃんばかりだったので、流石にマリーは少々無理があるのではないか?と思ったけれど全然心配御無用でした。

うるるんとした瞳の輝き、まどかちゃんの中にあるヤンチャで天真爛漫な可愛さ、お転婆さが役とリンクしていました。

まどかちゃんは相手役さんを好きにさせてしまう魔性の魅力と包容力が抜群にあります。

だからこそ生気を失ったあのやさぐれルドルフ皇太子は彼女の魅力に一目惚れし、恋焦がれ、縋りながら生きていくしか無くなってしまうのです。

まどかちゃんという存在が柚香さんにとって〝運命〟を感じずにいられない相手だからこそルドルフとマリーの巡り合わせは誰も引き離すことができない強く赤い糸を感じ、よりドラマチックで儚くも美しいラブストーリーになったのかもしれません。

マイヤーリンクでの可愛いらしいかくれんぼの場面は毎回アドリブが多彩でその自然な二人のやりとりにもキュンキュンさせられました。

そして寝室の場面で眠れないマリーを後ろから抱きしめて指をトントンするルドルフの愛と優しさに猛烈に胸をしめつけられ、最期に愛するマリーが眠りにつくと優しく寝かせて震えながら銃を向けるルドルフ。

全ての演出を知り、何度も見てきた場面なのに、鳥肌が立ち、心が震えました。

ラストの天国の結婚式の場面はあまりに美しく尊く幸せで涙が溢れてしまいます。

これぞうたかたの恋!!!と叫びたくなるような壮大なスケールの物語でした。

小柳先生が柴田先生の原作に敬意を払いながらも新しい場面を増やしより現代的で今の花組にピッタリな演出にしてくださったこともとても好感度が高かったです。

個人的に好きな場面として、オープニング後、大階段を使った豪華な舞踏会の場面は圧巻でした。

こんなにも厳かにお芝居で大階段を使う機会は滅多にありません。

衣装も華やかで柚香さんを筆頭にダンサーが多い花組ならではの美しくクラシカルな軍服バレエがとにかく素晴らしかったです。

柚香さん率いる花組は現代的でありながらも格式が高く歴史を感じる古典的要素もあり、その究極なハイブリッドの塩梅が絶妙で、だからこそ今の時代に、めちゃくちゃベタで重い昔の作品が観たくなる不可思議な魅力があります。

そういう意味でも今回のうたかたの恋というずっしりと重口な作品が今の花組さんと出会えたことがとにかく嬉しかったです。

これは私の個人的な小さな希望でもありました。

その夢がこんなに素晴らしい形で願ったこと、心より感謝したいと思います。