綺城さんはノヴァロ
『二人だけの戦場』は民族問題、独立戦争を扱った、重めの作品です。
『ディミトリ』に続き、ロシアとウクライナの戦争を想起させる作品のチョイスですね。
ちなみに『二人だけの戦場』が下敷きにしているのはユーゴスラビア紛争で、『ディミトリ』は13世紀のジョージアです。
『ディミトリ』ではギオルギ王役だった綺城さんが演じるのは、主人公に敵対する兵士役です。
初演で演じられたのは、矢吹翔さん。
現在はCHIHARUさんの名前で、ヘアメイクアーティストとして活躍されています。
タカラジェンヌやOGさんのメイクで、ご存じの方も多いのではないでしょうか?
宙組の『FLY WITH ME』で、真風涼帆さんたってのお願いでCHIHARUさんの組子たちへのメイク講習が開かれ、とても自然で美しいメイクとなったことが、記憶に新しいですね。
そんな矢吹さんは低い声が魅力の、別格男役さんでした。
そのお役を綺城さんが継がれたことで、やはり永久輝せあさんの同期支えとしての異動で、別格への道を進まれるのかな、という感じがヒシヒシとします。
路線系の役と言えば、初演で和央ようかさんが演じたアルヴァでしょう。今回は希波らいとさんが演じられます。
『うたかたの恋』で二度目の新人公演主役を射止められた、期待の若手スターですね。
天華さんは今が踏ん張りどころ
『Stella Voice』はワークショップという形を取りつつも、天華さんのコンサートでもあるように感じられました。
ワークショップより一歩踏み出した、新しい試みでしょうか。
バウ・ワークショップ『New Wave!』が各組を一周して、新たな船出の第一歩となる『Stella Voice』の真ん中という大役を任せられた天華さんです。
それもバウホールの45周年という輝かしい日に初演ということで、劇団からの期待を感じます。
『Stella Voice』は成功と言って、いいと思います。
天華さんの実力を堪能できただけではなく、男役として完成されつつある姿を拝見できました。
また、下級生に対する心配りも素晴らしかったです。
羽玲有華さんの「僕は怖い」のために、天華さんがお稽古場で「死」を演じられたと聞いて、感動しました。
この次の『1789』の天華さんの配役が、気になるところです。
瀬央さんの羽根が、意味するもの
別箱公演の『バレンシアの熱い花』で、瀬央さんが2番手羽根を背負ったことが、話題になりました。
それはもちろん素晴らしいことなのですが、一つ懸念があります。
全国ツアーで2番手羽根を背負ったということは、大劇場では2番手羽根を背負うことはないということではないでしょうか?
2番手羽根のお披露目なら、本来は大劇場でなくてはなりません。
全国ツアーはお祭りですから、羽根も公演先のファンへのサービスとなります。
つまり正式な2番手羽根とは、カウントされません。
瀬央さんの出身地、広島県広島市を巡るツアーで2番手羽根を背負わせる。
これは2番手になれないことを前提とした、劇団から瀬央さんへの贈り物のような気がします。
長期トップと言われている、現星組トップスター礼真琴さん。
レジェンドスターであり、長期トップであった元星組トップスター柚希礼音さんと重なる部分がいくつもあります。
柚希さん時代、実質2番手でありながら全国ツアーでしか2番手羽根を背負えなかった、涼紫央さんが思い出されます。
涼さんが実質2番手を務めている間、めきめきと頭角を伸ばしたのが若手時代はダークホースであった紅ゆずるさんでした。
瀬央さんが2番手にならない前提なら、暁さんを2.5番手に留めておく理由は一つしかありません。
星組では暁さんを2番手にしない、ということでしょう。
人事の手堅い星組ですから、礼さんの次のトップさんはすでに決まっていると思います。
しかし人事は水物です。
天華さんにもチャンスがあると思うのです。
同期という枷
永久輝せあさんの花組異動で、弾かれるように星組に異動になった綺城さんです。
しかし永久輝さんのトップ就任を前に花組に戻されたことで、同期支えとして別格スターへの道を歩み始めた気がします。
かつては星組の御曹司と呼ばれた天華さんですが、同期の暁千星さんが上に振って来たことで別格への道を感じさせました。
しかし暁さんの微妙な立ち位置により、蓋とはなっていない気がします。
他組への異動の可能性も含め、天華さんにはスターとしての道が見えている気がします。
以前より真ん中が似合う穴のないスター、というイメージでしたが、最近は歌が深みを増して大きな武器になってきました。
また『Stella Voice』の圧倒的なコンテンポラリーダンスで、表現者としての実力を見せつけられた気がします。
『1789』が楽しみ
星組次回大劇場公演『1789』の全貌は、まだ明らかになっていません。
初演は宝塚ファンの記憶に焼き付いていることと思いますが、東宝版はまた演出が異なります。
どちらも小池氏雄一郎先生の演出ですので、次回の星組版のベースが、月組版になるのか、東宝版になるのか、気になるところです。
宝塚初演時には、美弥るりかさんが圧倒的な存在感で脚本以上の存在感を見せつけてくださった過去があります。
天華さんの役が発表されるのが楽しみですね。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。