2025年3月21日に初日を迎えた宝塚歌劇花組バウホール公演『儚き星の照らす海の果てに』を観劇してきました。
希波らいとさん主演によるこのミュージカル・ロマンは、新進気鋭の演出家・中村真央先生のバウデビュー作としても注目を集めており、期待を胸に劇場へ足を運びました。
作品の印象とストーリー
『儚き星の照らす海の果てに』は、壮大な海を背景に、運命に翻弄される人々のドラマを描いた作品です。
1幕では、登場人物たちの背景や関係性が丁寧に描かれ、物語の舞台となる豪華客船の雰囲気が美しく表現されています。
2幕では一転して緊迫感ある展開が続き、事故のシーンでは息を呑むほどの迫力がありました。
後半は涙なしには見られない感動的な場面が続き、心に深く響く結末を迎えます。
この作品のテーマは、儚さと希望が交錯する人間ドラマだと感じました。
登場人物一人ひとりに焦点を当てた丁寧な描写が特徴で、主演の希波らいとさんを中心に、脇を固める出演者たちにも見せ場がしっかり用意されていました。
希波らいとの主演としての輝き
希波らいとさんが演じる主人公は、誠実でまっすぐなキャラクター。
初主演とは思えないほどの落ち着きと存在感で、舞台全体を引っ張っていました。
歌声も安定しており、ダンスシーンでは花組らしい華やかさが際立っていました。
キャストと演出の魅力
共演者たちも素晴らしく、二葉ゆゆさんや夏希真斗さんといった花組の個性豊かなメンバーが、それぞれの役に深みを与えていました。
特に二葉ゆゆさんの繊細な演技は、物語に情感を添える重要な要素だったと思います。
また、夏希真斗さんが「輝月ゆうまの後継者」と感じられるほどの熱量あるパフォーマンスを見せ、客席から自然と拍手が沸き起こりました。
演出の中村真央先生は、デビュー作とは思えない完成度で作品をまとめ上げていました。
脚本はクセがなく、ストーリーがスムーズに進む一方で、キャラクターの内面を掘り下げる視点がやや控えめだった印象も受けました。
それでも、音楽とダンスがふんだんに盛り込まれ、観ていて飽きることがありませんでした。
今後の作品にも期待が高まる才能です。
全体の感想
初日ということもあり、キャストの動きに若干の硬さが見られたものの、これから回を重ねるごとにさらに洗練されていくのだろうと楽しみになりました。
花組らしい華やかなダンスと熱量、そして深い感動が共存するこの公演は、バウホールならではの親密な空間で観るのにぴったりの作品でした。
個人的には、終演後に余韻が残り、しばらく席を立てなかったほど心を揺さぶられました。
宝塚ファンとして、希波らいとさんの新たな一歩を目撃できたこと、そして花組の団結力と魅力を再確認できたことが何よりの喜びです。
ぜひ多くの方に観劇していただきたい作品です。