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雪組公演「fff」音楽の力と演出家の興味深い解釈

宝塚歌劇を楽しもう

宝塚歌劇団雪組公演「f f f -フォルティッシッシモ-~歓喜に歌え!」が現在盛り上がり中ですが、大変面白い作品になっていますので感想を語りたいと思います。

学校でも習う有名な音楽家ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンを題材としたこの作品。あの上田久美子先生の手にかかると当時の状況や取り巻く世界が色をもって鮮やかに描かれます。

本来ならば昨年、2020年が生誕250年のメモリアル・イヤーでした。

1770年に当時ローマ帝国領であったボンで生まれたベートーヴェン(ルイ)は、子供の頃から音楽教育を受け、各地で演奏会を行い一家を養うようになるのですが、お父さんのスパルタぶりたるや……。

一昨年に星組で上演した「ロックオペラ モーツァルト」や東宝で繰り返し上演されているミュージカル「モーツァルト!」などの海外作品でモーツァルトが幼くして演奏で生計をたて、父親も熱心に教育する様子は知っていましたが、ルイの境遇は本当に厳しいものだったようです。

しかし、手を差し伸べる人もいて、音楽の家庭教師に迎え入れるブロイニング夫人や後に医師となるゲルハルト・ヴェーゲラー、その恋人ロールヘン(エレオノーレ・フォン・ブロイニング)達もいます。

傍から見ると、ただ不幸なだけではないようにも見えますが、ルイの人生は幼少期の環境や失恋、そして襲い来る難聴が彼を苦しめます。

彼の音楽へのまっすぐな思い、ナポレオンやゲーテへの憧れが熱を帯びて描かれ、演じられるのがとても迫力があり、音楽のすごさ、エンタテインメントの面白さを実感しました。

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望海風斗

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(ルイ)を演じたのは今回が宝塚での最後の公演となる望海風斗さん。

宝塚の主人公としてはちょっと変わり者で恋人には振られるし、決して自分を曲げない人物です。

しかし音楽への熱い思い、何があっても思った道を突き進む生き様が伝わってきて気持ち良いです。

望海さんといえば下級生の頃からの確かな歌唱力が思い浮かぶと思いますが、今回は集大成としていかんなく発揮され、客席で音の迫力を感じることが快感です。

このコロナ禍で生の観劇が難しくなった今、音に包まれる経験は贅沢だと思いました。

また、ルイの鬼気迫る音楽への思いが望海さんの宝塚への気持ちと重なり、感動しました。

真彩希帆

ヒロイン?と最初は戸惑いを覚える役、謎の女を演じるのは真彩希帆さん。

サヨナラ公演なのにがっつりと組まないのかな、などと思いましたが、ルイの人生に深くかかわり、彼と共に歩むその姿はやはりヒロインなのだと思いました。

彼女もやはり実力派で、花組時代の「エリザベート」新人公演でのマダム・ヴォルフも素晴らしく、娘役の枠に囚われない良い役者であり歌手です。

今回のこの役も真彩さんにしか出来ない唯一無二の存在だと確信しました。

彩風咲奈

ルイが憧れるナポレオン役は彩風咲奈さん。

交響曲第3番を彼のために作ったエピソードはよく知られています。

自由・平等・友愛を掲げる姿はルイにとって眩く映り、憧れというよりは英雄でしょうか。

ナポレオンが皇帝に即位することでルイは失望します。

しかしロシア遠征のナポレオンとの対話でルイは様々なことに気づかされ、何故音楽を作るのか、どうして戦争をするのか、謎の女とは何なのか、紐解くものとなっていました。

彩風さんは風格も申し分なく、堂々としながらも細やかな演技でナポレオンを演じました。

彩凪翔

ルイの憧れのもう一人、ゲーテ役は彩凪翔さん。

ゲーテが書いた「若きウェルテルの悩み」が劇中劇で展開されますが、ルイはゲーテに自作曲を送ったりするなど崇拝しています。

しかしその交流の中で二人は思想の違いから道を分かちます。

ゲーテもルイの身を思うこそというのが出ていて切ないです。

彩凪さんがよく演じていました。

朝美絢

ゲルハルト役は朝美絢さん。ゲルハルトが書いたベートーヴェンの手記が残っています。

ルイ少年を救い、友情を結ぶ様子が伝わってきました。

少年時代の場面でお金を受け取らないルイに対して対価だと教えるところがとても良いです。

他にも印象的な役がいっぱいあります。

天上界の人々の中でケルブ(智天使)の一樹千尋さんは流石の上手さですし、ヘンデルの真那春人さん、モーツァルトの彩みちるさん、テレマンの縣千さんは随所に出てきて目が離せません。

冒頭、クラシック音楽は教会のためにあり、後々貴族のためのものになった、という場面があり、モーツァルト達は既に天上の人ですが、貴族が通る度に恭しくお辞儀したり挨拶するのが面白いです。

実在の人物と実際のエピソードに上田先生ならではの解釈を入れ込んだこの作品。

とてもパワーがあり、観劇する喜びを味わえるのは、描き出される人物達が生き生きとしており、出演者達がそれに応えて演じているからに違いありません。

ラスト、謎の女とは、音楽とは、というものが解ける様は鳥肌が立ちました。

音楽の力、生の舞台のすごさを感じ、幸せを実感する作品です。