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花組『巡礼の年』予習徹底解説①リストはどんな人物?

宝塚歌劇についての雑記

6月4日から宝塚大劇場花組公演、『巡礼の年〜リスト・フェレンツ、魂の彷徨〜』が始まりました。

柚香 光(ゆずか れい)さんが花組トップスターとなって今年で3年目に入り、充実期を迎えています。

そして宙組から星風まどか(ほしかぜ まどか)さんを迎えて本公演2作品目となる、『巡礼の年』。

担当演出家は生田大和(いくた ひろかず)先生で、これまでに実在の人物を描いた作品を多く発表しています。

今回もそのシリーズで、主人公はフランツ・リスト。

「ん…?作品名には『リスト・フェレンツ』ってあるけど…」

と思いますよね。

そこにも生田先生のこだわりが強く表れています。

では、リストとは一体どんな人物だったのか、リストを取り巻く人間模様も含めて一緒に予習していきましょう。

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生田先生のこだわりが詰まりまくったタイトル

まず、「巡礼の年」というのは、リストが20代から60代にかけて作曲した作品を集めた作品集のタイトルです。

4部作の構成になっていて、リストが過ごした様々な国で見たもの、感じたことなどをピアノの独奏曲にして作った、作曲家としての日記のようなものです。

リストは74歳で亡くなっていますので、リストの作曲法や嗜好がどのように始まり、どのように変わっていったのか、その変遷がはっきりと見える大変興味深い作品集と言えます。

「巡礼」というタイトルがついているのは、リストがクリスチャンだったことからのように思います。

「聖地巡礼」という言葉もあるように、リストがヨーロッパの各地をまわり、受け取ったインスピレーションを次々に曲に託していったことが巡礼のようだという表現ではないでしょうか。

そして、生田先生がつけた副題、『リスト・フェレンツ、魂の彷徨』。

一般的に知られている「フランツ・リスト」ではなく、「リスト・フェレンツ」という表記にしたのは、リストの「自分はハンガリー人である」という強いアイデンティティーからではないでしょうか。

つまり、「フランツ・リスト」をハンガリー語に変えたものが「リスト・フェレンツ」。

しかし、最大の謎は、リストはハンガリー語も話せませんでしたし、ハンガリー音楽にもあまり精通していませんでした。

それなのになぜ「自分はハンガリー人である」という強いこだわりを持ち続けたのでしょうか。

きっと物語の中でも「自分はハンガリー人である」という強い自意識が表現されるでしょう。

ちなみに、ヅカファンの中でハンガリーと言えば、「エリザベート」に登場する「オーストリア=ハンガリー帝国」。

リストが生きていた時代にちょうどこのオーストリア=ハンガリー帝国時代が始まったので、エリザベートとの接触はあったのかどうか、この二重帝国をリストがどう思っていたのか、気になるところですね。

リストが亡くなったのが1886年、エリザベートが亡くなったのが1898年なので、2人は同時代を生きました。

お互いをどう思っていたのか、大変気になりますね。

演奏家・作曲家としてのリストはスーパースター

宝塚では過去にたくさんのヨーロッパ音楽家たちを扱った作品が上演されています。

その中でリストが登場した最近の作品は、2014年に宙組で公演された、『翼ある人びと』です。

先日、大変惜しまれながら退団された上田久美子先生の2作品目で、こちらも「やっぱり天才だ!」と当時大反響を呼びました。

この時代、才能ある音楽家たちが群雄割拠していて、リストもその一人として作品に登場しています。

演じていたのは愛月ひかる(あいづき ひかる)さん。

リストはこの時代のスーパースターで、サロンに集まった女性陣から熱視線を注がれ、長い指から繰り出される超絶技巧と耽美な美貌を振りまいていました。

むかし、マイケルジャクソンのコンサートで客席の女性たちが次々に失神してしまい、搬送されていく様子が報道されていましたが、まさにリストも演奏を始めると女性たちが次々と失神したという逸話が残されています。

まさにスーパースター!

リストの熱烈な恋人2人

「ピアノの魔術師」と呼ばれ、魅せる演奏家としてスーパースターだったリストですが、もちろん作曲家としても数々の名曲を残しています。

リストが作る楽曲はキラキラしていて聴きやすく、作曲家としても大変人気がありました。

その上、美貌も持ち合わせているのなら女性が放っておくはずもなく、リスト自身も恋を大いに楽しんだようです。

その中でも特に大恋愛と言えるのが、星風まどかさん演じるマリー・ダグー伯爵夫人と、カロリーネ・ツー・ザイン=ヴィトゲンシュタイン侯爵夫人の2人。

史実ではマリー・ダグー伯爵夫人よりも、カロリーネとの恋愛のほうがリストに強い影響を与えた存在のように感じますが、今回の作品では若い頃の恋人、マリーとの恋愛模様を描いています。

どちらの女性にも「伯爵夫人」「侯爵夫人」と付くように、リストと出会った時には人妻でした(笑)人妻キラー!

ちなみにマリーはリストの6歳年上です。

夫との間に子供までいるのに、どちらの女性も夫よりもリストを選んで駆け落ちしていますので、やっぱりリストはよほど「いいオトコ」だったのでしょうね。

夫と離婚してリストについていったマリー。

2人は3人もの子供までもうけますが、籍は入れずに事実婚状態でした。

しかし、やっぱりなかなか直らないリストの女癖の悪さからか、3人の子供までもうけたのにもかかわらず、マリーとの関係は数年で終わってしまいます。

マリーと別れた直後に出会ったのがカロリーネで、今度は2人は結婚を目指して奮闘しますが、敬虔なカトリック家系であったカロリーネは夫との離婚が認められず、結局籍を入れることはできませんでした。

その挫折によって2人の恋心も急速に冷めていったようで、リストが亡くなる最後まで手紙などのやりとりはあったようですが、恋人とも夫婦とも言えない関係だったようです。

う~ん、やっぱり芸術家は刹那的ですね。

マリーとの恋人期間で興味深いのが、ここに永久輝せあ(とわき せあ)さん演じるジョルジュ・サンドが関わってくるところです。

ジョルジュ・サンドとショパンの関係性や人生についてのまとめは後編にて!