いよいよお稽古が始まる宝塚歌劇団の雪組大劇場公演「壬生義士伝」。
舞台は幕末の日本で、トップスターの望海 風斗さんが演じる主人公の吉村 貫一郎は、新選組の隊士です。
宝塚の舞台にしばしば登場する“新選組”ですが、どんな人たちだったのかご存じでしょうか?
新選組というと、袖口に白の山形模様の入った水色の羽織が思い浮かびます。
活動内容としては、京都の治安を守る名目で、ためらいもなく人を斬っていた集団というイメージがあるかもしれません。
何となくイメージは出来る新選組ですが、彼らの事を良く知れば、歴史の知識が深まるだけでなく、新選組が登場する宝塚の作品ももっと楽しむことができます。
そこで、新選組ってどんな人たちだったのかという事とともに、新選組が登場する宝塚の作品をご紹介したいと思います!
新選組とは?
新選組とは、簡単に言えば京都の治安を守るために配備された組織のことです。
反幕府勢力を取り締まっていましたが、戊辰戦争の終戦とともに解散します。
有名なだんだら羽織の浅葱色(水色)は、武士が切腹するときに着用した死装束の裃と同じ色で、死を恐れないという志が表れています。
新撰組の主な人物
近藤 勇
新選組の局長。多摩の農家に生まれ、近藤周助の養子となり、天然理心流4代目を継ぐ。
天然理心流の道場、試衛館の門人たちとともに上京し、新選組の局長となる。
かなりの大喰らいで、握りこぶしが入るほど口が大きかったというエピソードも。
土方 歳三
新選組の副長。武蔵国多摩郡石田村(現在の東京都日野市)に10人兄弟の末っ子として生まれる。
少年時代、実家秘伝の「石田散薬」を行商しながら各地の道場で他流試合をかさねて剣術の修業をする。その時、日野の道場で近藤と出会う。
近藤の右腕として新選組を厳しく統率し、「鬼の副長」と恐れられた。
戊辰戦争の際、函館五稜郭で狙撃されて亡くなる。
「鬼の副長」の顔とは裏腹に、花や女性に関する俳句を多く残している意外な一面も。
とにかく女性によくモテて、知り合った女性からの恋文を「つまらぬもの」として親戚に送っている。
ちなみに、坂本竜馬と同い年。
沖田 総司
新選組一番隊組長および撃剣師範。9歳のときから天然理心流で剣を学び、19歳で免許皆伝。
いつも冗談を言っているような明るい性格で、よく近所の子どもたちとも遊んでいた。
持病の肺結核で若くして亡くなる。
新撰組の局中法度
新選組には、隊士たちが守るべき規則があります。
局中法度と呼ばれるこの規則に背いた者には、容赦なく粛清が下されます。
一、士道ニ背キ間敷事
(武士道に背く行為をしてはならない)
一、局ヲ脱スルヲ不許
(新撰組からの脱退は許されない)
一、勝手ニ金策致不可
(無断で借金をしてはならない)
一、勝手ニ訴訟取扱不可
(無断で訴訟に関係してはならない)
一、私ノ闘争ヲ不許
(個人的な争いをしてはならない)
右条々相背候者切腹申付ベク候也
(以上いずれかに違反した者には切腹を申し渡す)
とても厳しい内容ですが、死と隣り合わせの任務を負っていた隊士たちの士気を保つためには、常に緊張感を持たせておくことが必要だったのかもしれません。
新選組をテーマにした宝塚歌劇団の作品
1.「誠の群像―新選組亡流記―」
新選組の副長・土方歳三を主人公としたこの作品は、
1997年の星組公演では麻路さきさんが、
2018年の雪組公演では望海風斗さんが土方を演じています。
新選組をまとめるため、時に冷酷な手段を取り「鬼の副長」と恐れられた土方歳三ですが、宝塚ならではの恋物語もあり、己の信じる誠を貫いた彼の生き様を見れば、誰もが土方に惚れてしまうこと間違いなしです。
また、原案になっている司馬遼太郎さんの小説「燃えよ剣」「新選組血風録」も読みやすいのでおすすめです。
2.「星影の人」
沖田総司を主人公にしたこの作品も、宝塚で何度か上演されています。
沖田を演じたのは、汀 夏子さん、水 夏希さん、早霧 せいなさん。3人とも雪組のトップスターです。
沖田総司といえば、夭折した天才剣士として名高いですが、この作品では沖田と祇園の芸妓・玉勇の恋物語がメインになっています。
玉勇との逢瀬の途中で敵に襲われた時の沖田のセリフ、
「今夜の私は、強いですよ。」
は、沖田ファンでなくともときめく必見ポイントです。
3.「壬生義士伝」
今度雪組で上演されるこの作品は、浅田次郎さんの小説「壬生義士伝」が原案です。
この作品の主人公吉村貫一郎は、貧困から妻子を救うために盛岡藩を脱藩して新選組に入隊した田舎侍。
下級武士の生まれですが、北辰一刀流免許皆伝の腕前は、近藤や土方などの名だたる隊士たちも一目おいたほど。
その腕前を活かして稼いだお金は全て、故郷に残した妻子の元に仕送りし、守銭奴と呼ばれながらも家族のために人を斬り続けた吉村。
2018年の全国ツアー公演「誠の群像」では土方を演じた望海 風斗さんが、まったく身分も人柄も異なる吉村貫一郎をどのように演じるのか、期待が高まります!
新選組が登場する宝塚歌劇の作品
1.「維新回天・竜馬伝!」
2006~2007年に宙組で上演されたこの作品は、日本を維新に導いた坂本竜馬が主人公の物語。
竜馬を演じた貴城けいさんのトップお披露目公演であり、サヨナラ公演でもありました。
この作品では、日本の維新を進める坂本竜馬とは立場を事にする新選組は、竜馬の敵側になります。
この作品を見た時は、主人公の竜馬があまりに格好良いので竜馬を応援する気持ちが強く、「新選組はイヤな奴らだ」なんて思っていたのですが(笑)、同じ時代の出来事でも立場が変わると見え方も変わるんだなあと実感しました。
2.「銀ちゃんの恋」
「銀ちゃんの恋」は、自己中心的でわがままな俳優銀ちゃん(倉岡 銀四郎)と、彼を取り巻く人々の人間ドラマを描いた作品です。
物語のラストで、銀ちゃんを慕う大部屋俳優の“ヤス”がスタントとして階段から壮絶に落下する場面があるのですが、この時撮影していたのが「新選組」の池田屋討ち入りの場面。
スター俳優の銀ちゃんが演じているのは、土方歳三です。
新選組自体がテーマという訳ではありませんが、彼らの活躍を知ることができる面白い作品です。
3.「JIN―仁―」
村上もとかによる同名の漫画が原作で、宝塚では2012年に雪組で、2013年には月組で上演されています。
この作品は、現代の脳外科医である南方仁が幕末にタイムスリップする物語です。
そこで坂本竜馬と出会うのですが、竜馬の運命を知る南方は、歴史を変えることになるかもしれないと分かりつつ、何とかして竜馬の命を救おうとします。
そこで、少しですが新選組が登場します。
「維新回天竜馬伝」を見たときと同じく、竜馬サイドから見るとつい、新選組は敵、という風に思ってしまいます。
以上、新選組と新選組が登場する宝塚の作品を紹介してきましたが、いかがでしたか?
こうしてみると、新選組が登場する宝塚の作品は結構多いですね!
新選組のことをもっとよく知って、過去の作品を見直してみると、今まで気づかなかった事に気が付いたり、新たな発見があったりして、さらに楽しむことが出来ると思います♪
ぜひ、この調子で雪組の「壬生義士伝」も楽しみましょう!
ライター:七海 れい