宝塚歌劇団。
時代は95期、いや、瀬央ゆりあだ。間違いない。
昨年夏から秋にかけ、『New Wave!—星—』メインキャスト、『デビュタント』と、バウホール主演作が続いた彼女。
この時点でも、稀に見る活躍ぶりだと驚いた。
それが今年の11月末から12月頭にかけて、早くも次のバウホール主演が決まっただと!?
公式サイトを見るより先に、偶然SNSでこのニュースを知った私は、失礼ながら直感的に、何かの間違いだ、夢でも見ているに違いないと認識した。
だが待てよ、落ち着いて公式サイトの発表を見るのだ。
…お!本当に瀬央さんが主演ではないですか!!!
天性の才能だろうか、瀬央ゆりあって、どうにもこうにも憎めないキャラクターだと思う。
この人のこと嫌いな人っているのかな?
いない気がする。
むろん、美しくてカッコいい、スッとした男役さんなのだが、なぜか親しみやすく、ついついまるで友達のように呼び捨てしたくなる。
え、なりませんか?“
せお(笑)”って(笑)つい含み笑いもつけちゃう。
けっして悪い意味はないのだが。
瀬央ゆりあ、星組男役スター。2009年初舞台の95期生。
95期と言えば、次期星組トップスターに就任することが決まっている礼真琴をはじめ、愛希れいか、実咲凛音、妃海風といったトップ娘役も輩出。
その他にも、各組で華やかに活躍するスターが一際目立つ期だ。
そんな95期生45名中、彼女の入団成績は40番。(→95期生一覧)
圧倒的に下から数えた方が早い。
また、整った容姿の持ち主ではあるが、抜群に華のあるタイプかと言えば、勝手な見解ながらそうという訳でもない。
だが、この人には唯一無二の何かがあるような気がする。
それが何なのか、はっきりと言葉で表し難いのだが、何かが。
今やもう、星組になくてはならない存在となっている人。
そんな人でもかつては、同じ組の同期生に首席入団&実力者の礼真琴というスーパースターがいて、他にもあちこちで早くから注目を集める同期たちが大勢いて、周りとの差が開きすぎていると感じていたのだとか。
できない自分がただただ悔しかったそう。
そんな劣等生ジェンヌは、同期生たちの助けを借りながらここまで来たと言う。
きっと、助けてあげたくなるキャラクターだから助けられ、今この時・ここにいるのだろう。
それが、彼女の類い稀なる才能のひとつでもあるのだと思う。
そして、ご本人が着実に積み上げた努力こそが、何よりの賜物。
時を経て、入団7年目。
自身最後の新人公演で主演の座を手にした瀬央ゆりあ。
演目は、北翔海莉さんのトップお披露目公演であった『Guys and Dolls』。
ノーブルな風貌とスタイルの良さで、スーツを見事に着こなした。
その後北翔さんトップ時代の2作では、まだ上級生も多く在籍していたためか、大変失礼ながらあまり記憶に残ってはいないのだが、紅ゆずるさんがトップに就任してからは突如大きく花開いた印象。
紅さんのお披露目公演『スカーレットピンパーネル』のアルマン役を演じる彼女を見て、この人は未来の星組を担う1人となっていくんだなぁと、確信したものだった。
スカイステージなどで見せる、役を演じていない時の瀬央ゆりあは、とても面白い人だ。
抜群のユーモアセンスと絶妙な“間”を持っている。
その一方で、シリアスな役柄もピリッと仕上げてくる。
あんなにも面白い人なのに、彼女には和物の静の芝居でよく後ろ髪を引かれるので、不思議。
きっと基礎の部分がしっかりしているのだろう。
いつの間にこんなハイセンスな役者さんになられたのだ!!
年末の主演舞台『龍の宮物語』にも期待が高まるばかり。
さて、まだ少し先のことではあるが、同期の礼真琴がトップスターに就任したのちの星組で、彼女は一体どんなポジションで、どんな姿を魅せてくれるのだろうか。
想像すると、なんだか彼女の底抜けに明るい笑顔が脳裏に浮かんだ。
著者:有田だりあ