宝塚歌劇団の2020年最初の宝塚大劇場公演。全然お正月公演向きじゃない演目!(笑)
『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』 を観てきました。
元々、ハードボイルドな長時間映画が原作のため、明るい演目という期待はしていませんでした。
しかし、宝塚歌劇には豪華なフィナーレがあって本当に良かったなとしみじみ思いました。
ぱっと華やぐフィナーレは偉大ですね〜!明るく華やかな気持ちで帰れるもの。
さて、小池修一郎先生は、このお話が大好きで、先生なりに映画を辿るようなミュージカルにしたのだなということは伝わったのですが、 宝塚向けにマイルドにした、映画のダイジェスト版という感じでした。
物語はさておき、望海さんと真彩さんの歌を存分に聴ける演目であることは間違いなかったです。
ヌードルスという役柄は、映画を観て勉強すればするほど、演じにくかっただろうなと思います。
ワンスという映画は、観ている人に感動を与えるだとか、情緒を刺激するといったための物語ではなく、 淡々とその時代を生きたギャングを映す日記のような映画だからです。
トップ望海風斗「これが男役のトップ!」という存在感
そのため、宝塚版ではどのように演じられるのだろうと不安だったのですが、そこはさすがの望海さんです。
歌う時に込めてくれる熱い感情に、「これこそ宝塚」と感じ、ホッとしました。
この物語が成り立っているのは、望海さんの歌唱力あってこそだと言っても過言ではないと思います。
少年期、青年期、初老期の演じ分けも素晴らしく、男臭くて悪い男が本当によく似合います。
大劇場公演では毎回、「望海さんが何をしたというの?」というくらい、追い詰められ、苦しめられる場面があるのですが、今回もきちんとそんなシーンが用意されてありました。
歌が上手い人の嘆きは日本人に深く刺さって癖になるんですよね。
望海さんには、「これが男役のトップだ」と思わせてくれる大きな存在感があって、見ているだけで哀愁を感じます。
望海さんが出てくれると、わくわくするんですよね。
トップ娘役・真彩希帆「どんな役もこなせる力量」
それは、 ヒロインである真彩希帆さんにも同じことが言えます。
大劇場公演も5作目となり、ますます良い女になっていく真彩希帆さん。
笑い方は可愛らしく、歌声は美しく、 公演を重ねるごとに彼女のファンになる方は多いのではないかと思います。
そんなファンの声が聞こえたのかどうか、 1幕でたくさん歌ってくれる真彩さん。
それどころか、トップスターのような派手な演出で登場される真彩さん。
あそこは、『1789』でマリーアントワネットを演じたちゃぴちゃん(愛希れいか)を紡俳とさせるようなシーンでした。
少女期のチュチュを着ている真彩さんは、なんて可愛らしくて可憐なのでしょう!
「それは好きになるわ。輝いてるもの」と、ヌードルスの心を盗める魅力ある少女でした。
好きな人には危ないことをしてほしくはないし、愛よりも夢を追いたい。
そんなデボラの生き様を見せてくれた真彩さん。
真彩さんは歌と同じくらい表情の作り方がお上手で、物語が進むにつれ、デボラの昔のような笑顔が観たくてたまらない気持ちにさせてくれました。
クリスティーヌのような、右も左もわからない少女役も、今回のような芯の強いデボラ役どちらもこなせる力量が本当に素晴らしいです。
そう、望海さんも真彩さんも素晴らしかったのです。
こんな良い男とこんな良い女、 惹かれあわないわけはない、と分かるのです。
ワンスという映画は、愛や恋が主題のものではないので、仕方がないのですが、 こんな素敵なトップ2人の関係性に些かロマンと時間が足りないことが本当に残念でした。
2時間30分で3つの時代を見せようとするので、一回観ただけでは、友情と絆も、恋も、悲劇的顛末も、ノスタルジックを感じるまでもっていけない惜しい作品だと思います。
味のある新しい宝塚の作品
宝塚向けに脚色するならば、 この物語の主役にすべきは彩風さんが演じたマックス役で、ヒロインには朝美さん演じるキャロル役を持ってきたほうが良かったように感じます。
物語はまったくの別物になるとは思うのですが、この2人をメインに仕立てた物語にすれは、屈指の名作になったのではないかなと惜しい気持ちになりました。
しかし、映画のワンスをここまで分かりやすく、 宝塚用にしたのも凄いことだと思います。
これは小池修一郎先生が、「存分に望海さんと真彩さんの歌を聴いてください」と用意してくれた演目なのでしょう。
娘役さんたちの出番が非常に少なかったことは悲しかったのですが、その代わり、出てくる衣装がことごとく可愛かったです。
今作は、まさに味のある新しい宝塚の作品でした。
観た人それぞれの感想がかなり異なるのではないでしょうか。けれど、心を込めた熱演は、素晴らしいの一言に尽きました。