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宝塚歌劇「鎌足」で描かれた大化の改新

宝塚歌劇を楽しもう

今回は、2019年に公演された宝塚歌劇団星組の「鎌足−夢のまほろば、大和(やまと)し美(うるわ)し−」の観劇感想を紹介します。

この「鎌足~」という作品は、鎌足…いわゆる、「中臣鎌足と中大兄皇子が蘇我入鹿を討った(大化の改新)」という歴史の教科書にも出てくる有名なお話です。

歴史がお好きな方であればより楽しめると思いますよ。

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鎌足のあらすじ

お話の始まりは、お宙の上の遠いどこか…そこで、船史恵尺(天寿 光希)と僧·旻(一樹 千尋)が出会い、昔、飛鳥時代に生きた人々について語り出します。

恵尺は歴史を編むため、旻からその時の話を聞き出すのです。

·············

時は飛鳥時代。

僧·旻が開いた学塾にて、中臣鎌足(紅ゆずる)·蘇我鞍作(のちの蘇我入鹿(華形ひかる))·その他、子供たちが学問を学んでいました。

志を持つ者、持たぬ者…、様々なタイプの子供がいる中、目的は違えど志を持つ鎌足と鞍作は意気投合。

お互いにその志を自分の腕に掴もうと約束し、そして成長していきます。

しかし、時代がそれを許さず、いつしか2人は別々の道へと歩むことになっていくのでした。

そして、あるとき、鎌足は中大兄皇子と出会い…運命の時がやってきます。

■本編について

歴史を編むということ…。

それは、天寿光希さん演じる恵尺曰く「勝者のみを歴史に記すこと」なのだそうです。

勝者のみが後世に伝えられ、敗者は歴史に残す必要はないのだと。

しかし、鎌足はその言葉に疑問を抱きます。

勝者の裏には敗者がいて、そしてその周囲にもまた人がいて…。

そんな人たちもまたいろんな思いをして生き、また死んでいくというのに、勝者のみが歴史に残り、それ以外は歴史から消えるとはいったい?と…。

今を生きる私たちにとって歴史は教科書で学ぶもの…が一般的。

たしかに、教科書には事実だけが記されていて、それら「人の思い」などは記されていませんよね。

きっと、そこには悲しみや喜び、怒りや苦しみがあったはずなのに…。

鎌足と鞍作(入鹿)の友情関係、鎌足と中大兄皇子との関係性、鎌足と幼馴染·与志古娘(綺咲 愛里)との苦難ありの恋愛模様。

本作品では、大化の改新を中心に、そんな歴史の裏にあった「人の思い」が描かれています。

■観劇感想

日本史は苦手だな…なんて方もいるかとは思われますが、そこは心配せずとも大丈夫!

ストーリーテラー·恵尺がうまい具合に、飛鳥時代へと誘ってくれます。

中臣鎌足と蘇我入鹿、あの大化の改新の2人がこんな関係性にあったとは、勉強不足の筆者は露知らず…。

物語ゆえにいくらか脚色されてはいるのでしょうけれど、それでもかなり勉強になった作品でありました。

さて、そんなお芝居「まほろば…」の構成は、1幕が「中臣鎌足が蘇我入鹿を討つまで」、2幕が「蘇我入鹿を討ってから晩年までの鎌足」となっています

<1幕>

お芝居の始まりは、可愛い子供時代から。

とりあえずは、この子供時代、鎌足も鞍作も与志古娘も…みんな可愛かったです。

でも、成長と共に(取り巻く環境が変わると共に)、それぞれに苦しみがやってくる様は、何とも切なく物悲しいものがありました。

中でも、鞍作の場合は、蘇我入鹿に名を変えてから苦しみが増すばかりのよう。

しかし、その苦しむ姿は、切なくもなぜか美しく…。

蘇我入鹿は、どのような思いでそのような行動に至ったのか。

死を目前に、蘇我入鹿は何を思ったのか。

1幕では、そんな蘇我入鹿の思いに注目してみてください。

<2幕>

中大兄皇子と共に蘇我入鹿を討った中臣鎌足ではありましたが、それで万事OKとはいきませんでした。

幼い時を共にした鞍作(蘇我入鹿)を討った自分自身に、鎌足は苦しめられることになるのです。

それでも、鎌足の傍には与志古娘がいましたので、それが救いとなり…。

しかし、彼女にもまた彼女の運命がありました。

晩年の鎌足·与志古娘·中大兄皇子ら…、彼らが、苦しみ抜いて行きついたその先に待っていたものは、やはり苦しみだったのか、それとも…。

2幕では、そんな彼らの苦しむ思いと、その行く末を見守ってあげてください。

■ストーリーテラー·船史恵尺の存在

この物語の案内人役を務めるのは「船史恵尺」という人物です。

鎌足たちと同じ飛鳥時代に生き、宮中にて歴史を編む仕事(記録係的な感じ)に就き、魂となってもなお、宙の上で歴史を編み続けているよう。

生前、時に恵尺は苦しむ鎌足に助言という名の誘惑で、鎌足を「行くべき道」へと誘います。

結果的には、全ての道を決めたのは鎌足なわけですが…、でも、その場面から漂ってくる空気は、まるで恵尺が歴史を操っているかのようでゾっとします。

恵尺は、誰の敵でも味方でもありません。

ただただ、歴史を編むことに忠実なだけ。

それが、こんなにもゾっとするとは…。

恵尺が出てくる場面は、だいたいは歴史が大きく動く前触れです。

彼がどのような言葉を放つのか…ぜひご注目ください。

■まとめ

本作品は、紅ゆずるさん·綺咲 愛里さんのプレお披露目公演となった作品です。

今はもう退団されてしまったお2人…何だか懐かしいですよね。

この作品には他にもすでに退団されてしまった如月 蓮さんや麻央 侑希さんなど、懐かしい面々も出演されています。

現在、タカラヅカオンデマンドにて配信されていますので、ぜひご覧になってみたくださいね。