宝塚歌劇団関連の書籍は多く出ているかと思いますが、2019年に出版された「タカラヅカの謎 300万人を魅了する歌劇団の真実」という本はご存知でしょうか。
こちらは元宝塚歌劇団の総支配人と星組プロデューサーを務められていた森下信雄さん著になります。
元々阪神阪急ホールディングスの中にある阪急電鉄株式会社に入社され宝塚歌劇団には一切の興味もなかった森下さんが1998年より劇団の制作部制作課長に出向となり2000年に星組のプロデューサー、2007年に総支配人になられ劇団について宝塚について知りそこで得たことをビジネスの観点からわかりたすく解説された一冊になります。
宝塚が好きなヅカオタは勿論のこと、ミュージカル好きの方であったりアイドルが好きな方であったり、はたまた宝塚のことを知らない方でもビジネス本としても楽しめる内容となっています。
その中で気になった「何故宝塚歌劇団はロングラン公演をしないのか」についてがとても興味深く、さらにはそこにこそ宝塚歌劇団の真髄を感じたため自身の考えも交えて感想を記していきたいと思います。
何故宝塚歌劇団はロングラン公演をしないのか
結論から言いますと、宝塚歌劇団がロングラン公演をしない大きな理由はスケジュールの都合上ということになります。
ミュージカルの本拠地であるアメリカのブロードウェイであったり、宝塚歌劇団と同様に世界に誇る劇団四季さんではロングラン公演という上演方法を選択されています。
ロングラン公演とは読んで字の如く、1つの公演を長い期間上演することになります。
人気の作品であればある程長い期間上演すればするほど儲けが出る上にセットやお衣装やその他の小道具も不備が出ない限り使い続けることが出来ますから出資が少なくて済むというのが大きなポイントになります。
しかし、大前提として宝塚は花組・月組・雪組・星組・宙組の5つの組が順番に兵庫県にある本拠地宝塚大劇場と東京都にある東京宝塚劇場の2劇場で約1ヶ月ずつ公演を行なうようなスケジュールが年間で組まれています。
仮に花組の公演がかなりの人気作だったとしても「じゃぁ、もう1ヶ月やろう!」ということにはならないわけです。
そして宝塚は循環するからこその良さもあるわけで、勿論ご贔屓さんの退団は身が引きちぎられる思いを味わう程の哀しさがつきものですが、退団される方がいるからこそ毎年入団される方もいるわけですし、それによって番手があがり良い役につける下級生もいるわけです。
更にはお衣装を外注しないことによって得られるポイントとしてお衣装部さん達がタカラジェンヌ個人であったり組の内情に詳しいからこそのお衣装の小さな差異を出すことができるという箇所には激しく頷くしかありませんでした。
ほんの一瞬のシーンであろうとも、ボタンの数やラインの数、さらにはほんのちょっとした装飾の違い1つで私達ヅカオタは一喜一憂しながらオペラグラスを覗くものです。
そんな私達の心情やそこから考察する流れまでしっかりと劇団に把握されているのかと思うと、これからもついて行きます…という気持ちにならざるを得ませんでした。
この他にも全国ツアーに際してチーム分けされることの意義であったり、地方公演ならではのファンとタカラジェンヌ達が得られる面白さ、地産地消というような劇団内で全てを生産し消費することのハイリスクハイリターンさの解説など、内容がとても濃いのに読みやすい1冊となっていました。
普段本をあまり読まない方でもチャレンジしやすい本かと思いますので是非お手にとって読んでみられてください。
更にはビジネス本として回りの方に宝塚を布教するための1冊としてもおすすめかもしれません♪
ちょっと職場や学校で机の上に何気なく置いてみてはいかがでしょうか?