宝塚大劇場にて公演中の月組「桜嵐記」。
涙涙でタオル持参で何度も観劇されている宝塚ファンも多いかと思います。
さて、今回の記事では、まだ、これから観劇される方向けに、月組公演『桜嵐記』に関する事前情報や予備知識などをご紹介していきます!
『桜嵐記』の裏に見える珠城りょう&上田久美子の物語
現在、宝塚歌劇団に在籍する演出家の中で「天才」と言えば上田久美子先生。
デビュー作から一貫してファンの大きな支持を集め、今や「ウエクミ作品にハズレなし」というまでの絶対的信頼を得ています。
その中でも、鮮烈なデビューを飾った作品が『月雲の皇子(つきぐものみこ)』という古事記に登場する物語を軸にした悲恋モノで、その主演が珠城りょうさん。珠城さん自身もこの作品が初主演でした。
そして、数作の大ヒット悲恋作品を連発したのちに初めてのショー作品『BADDY』を発表し、これもまた型破りで斬新なテーマ・演出がファンを驚愕・大興奮させました。
その主演もまた珠城りょうさん。
今や宝塚を代表する売れっ子演出家となった上田久美子先生の2つの「初」を担当しているのが珠城りょうさんということで、このお2人には何か特別な絆があり、珠城りょうさんの退団公演を上田久美子先生が担当するということが発表になった時はファン一同歓喜に沸きました。
お互いの「初めて」と珠城りょうさんの「最後」でタッグを組む2人。作品の裏にあるこのような「演出家と生徒の物語」も、作品を鑑賞する際の醍醐味の一つですよね。
楠木正行ってダレ??
では、珠城りょうさん演じる楠木正行に関しての説明にまいりましょう。
楠木正行(くすのきまさつら)とは、あの有名な楠木正成(くすのきまさしげ)の長男です。楠木正成には3人の息子がいて、その3人とも『桜嵐記』に登場します。
楠木正行(長男):珠城りょう
楠木正時(次男):鳳月 杏(ほうづき あん)
楠木正儀(三男):月城かなと(つきしろ かなと)
ちなみに、3人の父である楠木正成役は輝月ゆうま(きづきゆうま)さんです。
時代は、1336年~1392年の「南北朝時代」。日本史がニガテな人にとっては「南北朝時代って…なんだっけ??」ですよね(笑)
簡単に言うと、「北朝(室町幕府@京都)」と「南朝(@奈良の吉野)」の2か所に日本の政治中枢が分かれてしまっていた時代のことです。楠木ファミリーが属するのは南朝。
この北朝と南朝にはそれぞれに天皇がいて、「こっちが正当な系統だ!」「いやいやこっちだ!」というような争いが勃発します。その結果、「じゃあ交代にしよう」ということで、しばらくは北朝と南朝が交代で政権を動かすことになりますが、最終的には北朝が室町幕府として1573年まで日本の中心となりました。
今で言えば、日本の首都が東京と大阪にそれぞれにあるということですから、かなりイレギュラーな事態ですよね。
ちなみに、楠木ファミリーが所属する南朝の天皇が後醍醐天皇で、演じるのは専科の一樹千尋(いつき ちひろ)さんです。
楠木正行と弁内侍の悲恋
では、美園さくらさん演じる弁内侍(べんのないし)との関係性は、というと…
後醍醐天皇の側近の娘である弁内侍は、『桜嵐記』では暁 千星(あかつき ちせい)さん演じる後村上天皇の娘、中宮顕子(ちゅうぐうあきこ)(天紫 珠李さん)に仕える女官となっています。
その美しさが評判となっていた弁内侍は北朝から拉致されかけますが、そこを救ったのが楠木正行。複数の男たちを一人であっという間に斬り伏せてしまい、2人はそこで恋に落ちます。
後村上天皇のすすめで正行と弁内侍は結婚の向きとなりますが、北朝にいずれ制圧される(=いずれ自分も死ぬ)であろうと覚悟していた正行は、婚儀を辞退。その覚悟の通り、正行は弟・正時と共に23歳という若さで戦死してしまいます。
2人は深く想い合っていながらも結ばれなかったという悲しくも美しい純愛物語となっています。
大感動間違いなしの『桜嵐記』に期待大!
「ウエクミ作品=天才的悲恋」という定評の通り、今作『桜嵐記』も珠城りょうさん&美園さくらさんにとって最高のはなむけ作品となることが確信されますね。
2人の美しい悲恋の結末に涙しながらも、珠城さんと美園さん2人の最後のタカラジェンヌとしての姿にも大号泣間違いなしの予感です。
また、この作品を最後に、紫門ゆりや(しもん ゆりや)さん、輝月ゆうまさんが専科へ異動となってしまいますので、今の月組メンバーでしか見られない大変貴重な作品です。
ぜひ何度でも劇場に通いたいですね。