東京宝塚劇場での2021年最終公演は星組「柳生忍法帖」と「モアー・ダンディズム!」の2本でした。
2021年は新型コロナウイルスの影響を受け、公演が中止になったり、無観客での配信のみという事態に見舞われましたが、この星組公演は掉尾を飾るべく、中止にならずに幕を下ろせました。
礼真琴さん、舞空瞳さんのトップコンビとしては3作品目で真価を問われる公演でしたが、お2人の魅力が発揮されたのではないかと思います。
柳生忍法帖
「柳生忍法帖」は、従来の宝塚作品の構造とは違い、主人公が娘役たちの復讐を助けるべく一緒に旅をし、指導し、最後は目的を果たす、といった内容です。
主人公が自分の目的のために、という構造はありますが、虐げられた女性たちに助太刀をするというのは、まず見ないですよね。
また、主人公たちに立ちはだかるのが2番手以下の男役たちというのも興味深かったです。
礼真琴
主人公・柳生十兵衛役の礼真琴さんは剣の名手で強さが前面に出ながらも、女性に優しく、でも扱いにはあまり慣れてなさそうな人物像を感じさせました。
助太刀しながら、敵と戦うその身体能力の高さに驚かされるばかりで、動きにキレがあり、歌の上手さもさらに増していました。
人間味があり、非常に強い主人公を作り上げ、魅力的に演じ、すごいトップスターだと改めて思いました。
舞空瞳
ヒロイン・ゆら役の舞空瞳さんは、十兵衛とはそれほど絡まず。
十兵衛たちと対峙する芦名銅伯の娘なのですが、父親の悲願を果たすべく、恋人とも別れ、会津藩主の子を、という健気なところもありつつ、どこか本心がわからないような掴みどころのなさも。
しかし、十兵衛と出会い、まっすぐ彼を愛し、突き進む生き方に心を動かされました。
愛月ひかる
芦名銅伯役の愛月ひかるさんはこの公演で退団。
会津騒動から107歳まで芦名一族の復興を企む、その強靭な意思がありました。
「神々の土地」でのラスプーチンや、「エリザベート」でのルキーニを演じてきた経験が生きたのではないでしょうか。
倒そうとしても不死身で、恐ろしい存在の銅伯を見事に演じました。
瀬央ゆりあ
七本槍の一人・漆戸虹七郎役は瀬央ゆりあさん。
ゆらとの過去の恋を滲ませながらも残虐さもあり、悪の美が。
七本槍は場面場面で倒されていくのですが、瀬央さんが最後まで残るのと、同期の司馬一眼房役であるひろ香祐さんも残りますが、何となくの路線順で倒されていきます。
これが、今後の星組の布陣を予想させるものでした。
極美慎
上級生より後まで残る香炉銀四郎役の極美慎さんが、今後上がり続けるのが見えます。
お芝居の感想は、理不尽なことに遭いながらも強敵たちを十兵衛の訓練に応え、娘役たちが始末していく姿にスカッとしました。
モアー・ダンディズム!
ショーの「モアー・ダンディズム!」は1995年花組公演「ダンディズム!」の再再演です。
初演は真矢みきさん(当時は真矢ミキさん)が主演で、20006年に星組で「ネオ・ダンディズム!」として湖月わたるさん主演で上演されました。
初演の色の洪水のような華々しさが今でも印象に残っています。
ロマンチック・レビューシリーズと銘打たれ、いわゆるショースペクタクルのような作品とは違い、どちらかといえばテンポがゆったりとした、昔ながらの優雅な雰囲気です。
「ダンディズム!」の再再演ではありますが、演出の岡田敬二さんの過去作品がオマージュとして取り入れられており、懐かしくもあり、もう少し新しい場面の構成が見たい、と思わされるところも。
それにしても、「キャリオカ」を聞くと、気持ちが昂ります。
初演の真矢さんはパンチの効いた少しクセのある歌い方でしたが、礼さんは歌唱力を発揮し、また違う場面に仕上げました。
そして「ハードボイルド」の場面はこれまた有名で、見入ってしまいました。
欲を言えば初演のように導入部の男役同士のタンゴコンビがもう少しいたらもっと華やかになったかもしれません。
礼さん、舞空さんの良さを堪能出来、娘役の活躍する場面もあり、星組のまた違った面も楽しめるショーです。
愛月さんさんが「おもい出は薄紫のとばりの向う」を歌う場面、白軍服が似合い、これぞ宝塚の男役といったものを強く感じました。
また、銀橋で「ラ・パッション!」を歌う瀬央さんが力強く、礼さんたちとは個性の異なる男役を見せてくれ、これからの星組になくてはならない存在だと思いました。
若手の見せ場もあり、こういったクラッシックなショーも下級生にとっては勉強となったのではないでしょうか。
年末の慌ただしい時期、こういった優雅なショー良いものだと思いながら、いろいろなタイプの作品があるのが宝塚歌劇の魅力の1つだと気づかされました。